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最初で最後のチャンス、優勝狙う〜安江勇斗選手インタビュー〜

JB・TOP50で活躍する安江勇斗選手。年齢の関係でU-30ドリームトーナメントは最初で最後の参戦となる。バス釣りへの思いや将来の夢、ドリームトーナメントの印象などを聞いた。

――バス釣りを始められたきっかけは、何でしょうか。
 「僕は3人兄弟の一番下なのですが、兄たち2人の影響ですね。初めてルアーを投げたのは、7歳頃だったと思います。初バスは愛知の野池で中学3年の時に釣りました。ルアーはトラウト用の小さいミノーですね」

 ――バスプロを目指すようになった経緯をお聞かせください。
 「高校生の頃、入鹿池のレンタルボートでローカル大会に出ていました。その頃、仲良くしていたマーモ(加木屋守プロ)は、ずっと『プロになりたい』と繰り返していましたが、僕はそんなに思わなくて、普通に一般人として釣りを続ける人生かなあ、と思っていました。そうした日々を過ごす中で、高校2年生の冬に、釣り仲間が突然バイク事故で亡くなりました。そこから、かなり病みましたが、一緒に頑張ってきた釣りを頑張ろう、有名になって天国のあいつにも見てもらおう、という気持ちが強くなりました。プロの世界を目指すきっかけは、その出来事です」

今でも交流が深い加木屋守プロと入鹿池での思い出(安江氏 当時19歳)

――その後、霞ヶ浦のトーナメント団体WBSに所属しましたが、何がきっかけですか。
 「最初はノンボーターとして試合に出るため、愛知から茨城に通っていました。18歳~19歳頃ですかね。マーモと、メガバスの〝かつぅ〟さんに誘われたのがきっかけです。ただ、いずれは自分もボーターとして出たいという思いがあって、夢への第一歩として茨城に移住することを決めました。移住したのは、2013年4月ですね。最初は住所もなくて、約半年間、車中泊生活でした。その後、収入を得るために、霞ヶ浦で漁師のアルバイトを始めました」

W.B.S.ノンボーター参戦をきっかけに霞ヶ浦に心を奪われる

――なぜ、漁師のアルバイトを選んだのですか。
 「知り合いのつながりで出会った漁師さんが、たまたまバスアングラーで、寝泊まりのための作業場も貸して頂けました。そこに1年くらい転がり込みましたね。結局そのアルバイトは、7年半続きました。今もその漁師さんとは交流があります」

2013年頃から7年ほど漁師のアルバイトを経験

――その後、目標がTOP50に変わったのですか。
 「結局、WBSに参戦したのは22歳までの3シーズンです。WBSに参戦しているうちに、気持ちが徐々に変化しました。H1グランプリ参戦もきっかけになり、TOP50に出たいという夢ができましたね。全国のフィールドをトレイルできるのが大きな理由です。霞ヶ浦だけでなく、全国で釣りしたいとの思いが根底にありました。また、なんといっても、TOP50は日本で一番大きい大会だと思います」

 ――今年はTOP50初参戦で、見事優勝(第3戦の霞ヶ浦戦)されましたが、あらためて感想をお聞かせください。
 「いまだに現実感がありません。自分にはまだ届くとは思っていなかったので。そもそもTOP50で戦っていること自体、まだ現実感がありません(笑)。初参戦を振り返ると、僕は、まだまだ実力不足だと感じます。練習量とか装備では、それほど違いはありませんが、釣りの平均レベルがやはり高いです。霞ヶ浦ばかりやってきたアングラーですので、類似したフィールドや、シチュエーションだったりすると、ある程度戦えるのですが、やっぱりクリアレイクやライブスコープを使った釣りは他の選手に劣ります。練習して、もう1回勝ちたいですね。現実感が出てきて、今度はもっと喜べると思います。もちろん年間優勝も取りたいです」
 
 ――バスフィッシングの魅力を教えてください。
 「一言で言うと〝格好良い〟ですね。ブラックバス自体の見た目も格好良いし、バスフィッシングを取り巻く道具も格好良い。ボート、リール、ロッド、ルアー全てです、すごく格好良いと思いませんか。ゲーム性という観点からも素晴らしいですね。例えば海の船釣りだと、船長の指定したポイントでひたすら釣りをするだけですが、バス釣りはボートを使うと何もかも自由ですので、アングラーの力量が試されますね」
 
 ――今までの釣り人生で心に残る魚を教えてください。
 「19歳の頃、入鹿池のローカル大会で、獲った魚です。3月の終わりから4月だったと思いますが、当時の入鹿池は全く釣れなくて、当然ライブスコープもなければ、魚探も高性能ではありませんでした。必死に練習してわずかに可能性を感じたエリアで粘って、ジグヘッドワッキーで釣ったことを覚えています。その試合でウェイインした選手は、僕しかいませんでした。その時期って、みんな練習をサボるのですが、試合に勝つため、必死で練習して獲った魚だったので、今も心に残っています」

20歳の時に入鹿池で開催されたローカルトーナメントで釣った1本。

――ドリームトーナメント参戦の理由をお聞かせください。
 「トーナメントが大好きっていうのはもちろんですが、普段のJBの舞台では戦えない選手が多くいます。釣りが上手くても、資金力の問題などでJBに参戦しない若手選手もいますし、全国各地には凄腕の若手ロコアングラーがいます。そういった普段戦えない選手たちと競い合って交流したいと思い、参戦を決めました」

――第二戦はクリアレイクの津風呂湖ですが、印象はいかがでしょうか。          「最悪ですね(笑)。得意な釣りは、カバーフィッシングなのですが、津風呂湖に関しては、難しいですね。過去に参戦したJBマスターズの津風呂湖戦では2日間、ゼロでした…。ただ、いつかリベンジしたいと思っていたので、今回は燃えています。湖の地形、全体像は既に把握しています。他の未経験アングラーに比べると、アドバンテージはあります」

――やはり当日は、ライブスコープ合戦になると予想されます。
「ライブスコープがないと、戦えないというわけではありませんが、かなり厳しいと思います。津風呂湖に限らず、クリアレイクのトーナメントを戦う上で、ライブスコープ導入はスタート地点だと思いますね。もちろん僕もライブスコープを使って戦います。全国各地にいるクリアレイクロコには、ライブスコープの腕前で劣るかもしれません。ただ、TOP50選手としての引き出しの多さで、出し抜きたいと思っています。TOP50参戦に当たって、ライブスコープ関連の装備にもかなり投資しました。この津風呂湖戦で、今年の集大成を見せたいです」

 ――今回、安江選手にライブカメラが同船します。率直にどう感じましたか。
 「正直怖いです。でも同船が決まったことは嬉しいし、楽しみです。ライブ放送に向けて、しっかり練習して恥ずかしくない釣りを皆さんにお見せしたいと思います。僕はどちらかというと、気持ちが弱い人間です。だから率直に怖いと感じました。でも、トーナメンターとして、弱いところもさらけ出したいと思っています。一般のアングラーの方にとって、TOP50の選手はメンタルが強くて雲の上の存在に思われているかもしれませんが、僕は違います。一般アングラーと変わらないメンタルで戦っているTOP50選手がいることを知って欲しいです」

 ――ドリームトーナメントで注目している選手はいますか。
 「まずは、先日のJBクラシックで優勝した宇佐見素明選手ですね。誰もが認めるクリアレイクの達人で、日本有数のライブスコープ使いだと思います。クラシック優勝も必然でしたね。次に吉川永遠選手。津風呂湖は、彼のほぼ地元です。加えて、吉川選手も日本有数のライブスコープ使いなので、釣ってくると思います。また、ドリームトーナメントの公式記事を読んで、新利根川戦で優勝した鈴木寛人選手のトーナメントにかける熱い思いを知りました。挨拶したことはあるのですが、もっと仲良くなりたいですね」

 ――あこがれのアングラーはいますか。
 「最近デプスの奥村社長と一緒に釣りをする機会が増えてきたのですが、人間性、考え方にすごく惹かれて、こういう人になりたいと強く感じます。釣りの面では、とにかくデカバスを獲る嗅覚が並外れています。普通のアングラーが考える方法では到底釣れない魚を、ロケで獲ってくるのがすごい。奥村社長の感覚は、かけ離れたものがあって、すごく尊敬してあこがれています」

 ――ドリームトーナメント出場は、年齢的に今回が最初で最後と伺いました。意気込みを聞かせてください。
 「ラストイヤーだからこそ、今回ライブ同船選手として選んで頂けたと思っています。新利根川戦は思い通りの釣りができず、かなり悔しい結果となりましたが、強い意志を持ち、練習をしっかりして、津風呂湖戦優勝を目指します!」

 BASS FISHING LIVE
記者 近藤