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黒鉛電極のこれまでとこれから

2017年、2018年に注目を浴びた黒鉛電極について、自分の中での整理という意味も込めてまとめてみたいと思います。

先ず、黒鉛電極とは何に使われているものでしょうか。

現在の鉄鋼の作り方には大きく分けて「電炉法」と「高炉法」の2つの方法があります。その中で「電炉法」に黒鉛電極は使われます。

「電炉法」とはその名の通り電気の熱を利用して鋼を製造する炉のことです。以下、一般的なアーク式電気炉についての説明をします。

電気炉の形は蓋のついた大きな鍋のようなもので、その蓋に黒鉛電極が差し込まれています。これに電流を流すことで鍋の中の鉄スクラップと電極の間にアークが発生し、このアーク熱で鉄スクラップを溶融させます。

そして中国の環境規制強化に伴う政策の一環で、地上鋼(品質が悪く、製造工程で汚染物質を大気中に放出する)の撲滅が進みました。これにより既存の電気炉の稼働率が上昇し、黒鉛電極の需要が増加しました。

そして黒鉛電極の大事なところは消耗品であるということです。鋼材1トンを製造するのに3キログラムが必要と言われています。消耗品のため、定期的に購入する必要があります。つまり売り手からすると定期的に売るチャンスであるということです。

こういった背景があり、関連企業である昭和電工、東海カーボン、日本カーボン、SECカーボンは大きく成長していきました。東海カーボンは2018年12月期の連結営業利益が前期比の7倍となりました。

しかしながら、前述のように黒鉛電極というものは良くも悪くも中国景気に大きく左右されます。従って中国の動向は常に見逃せないものとなります。

「2019年から世界の黒鉛電極の需給は悪化に転じる」と野村証券はレポートで指摘しています。「中国景気の減速が国内の鉄鋼需要を減らしていく。またその一方で、供給も増加の一途をたどる。中国の黒鉛電極メーカーの生産性改善による生産増が在庫をダブつかせる。新設工場の稼働も見込まれ、結果として19年7月以降の黒鉛電極の価格や採算は下落に転じる」としました。

野村証券では3日付で、昭和電工の投資判断を「Buy」(買い)から「ニュートラル」(中立)に、目標株価を6700円から4700円にそれぞれ引き下げています。適用する18年12月期予想基準PERを従来は12倍と判断していましたが、中期成長率予想の引き下げにより、同平均を下回る7倍程度が妥当と判断したとしていています。

また最近では、中国の黒鉛電極輸出増により黒鉛電極価格が圧迫されるとの見方から、シティグループ証券がグラフテックを格下げし、日本の黒鉛電極関連が軒並み下落するといったことが起こりました。

一方でゴールドマンサックスやジェフリーズは前向きな見解を示しています。

ゴールドマンサックスは「黒鉛電極は19年も17〜18年同様、タイトな需給バランスが続くと見ている。先進国では電炉鋼の生産は好調を維持しており、主要メーカーの契約価格も19年上期にかけて一段と上昇している。グラフテックの増産や昭和電工の米国工場の稼働率上昇による供給増は、中国以外の電炉鋼生産の伸びでカバーでき、需給が軟化する可能性は低い」とし、

ジェフリーズは「黒鉛電極の原料であるニードルコークスは、フィリップ66による能力増強計画の取りやめやEV向けリチウムイオンバッテリーの需要拡大などにより価格が上昇する可能性が高い。ニードルコークスの供給が増えないならば黒鉛電極の逼迫は暫く続くだろう。中国政府の環境政策が方向転換しない限り、需要の長期成長率は1桁前半を維持する」としています。

このように、各証券会社でも意見が分かれる黒鉛電極ではありますが、やはり要となるのは中国であるということに変わりはないのではないのでしょうか。黒鉛電極関連をトレードする際は、中国のこれからの動向に良く注目して損はないと思います。

ダラダラと長くなってしまいましたが、以上で「黒鉛電極のこれからとこれまで」を終わります。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


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