2021年 US HIPHOPベストアルバム

2021年は早々にMF DOOM死去のニュースが流れた悲しい幕開けだった。トランプは敗れて、過去最高得票でバイデンに大統領は代わった。ぼんやりとアメリカは少し良くなる、しいては世界も少し良くなると思ったが、これはあまりにも呑気で楽観的だった。サウスパークが新エピソードで"I guess 2021 is gonna be just like 2020"と予言した通りの1年とも言える。そんな鬱屈した中にあっても、心を癒してくれた素晴らしいUS HIPHOPのアルバムを僅かばかりではあるけども紹介したい。


IDK "USEE4YOURSELF"

ラッパーとしてはもちろん、ボーカルも、プロデューサーとしてもBlue Rondo共に全曲に参加したIDKの2ndアルバム。ハーバード大学で音楽ビジネスの講座を開くなど、そのマルチプレイヤーの振る舞いと曲やリリックへのアプローチはこのアルバムにも参加している故MF DOOMを彷彿させ、今作の作り込みに彼も紛れもなくDOOMチルドレンであることを実感させてくれる。幼少期のトラウマや性的被害の告白、有害な男性らしさへの葛藤をラップで吐き出せるIDKはまさに今の時代のスターと言える。(もちろんOffsetとの"SHOOT MY SHOT"みたいな曲もあるのがご愛嬌ではある…)

アルバムのハイライトはWestside Gunn、Jay Electronica、前述の故MF Doomが一堂に会した"Red"で他にも良曲は目白押し。Lucky Dayeが繰り出すオートチューンのボーカルが甘くムーディな"Puerto Rico"、本家オートチューン先生のT-PAINがブチかます”10 Feet”、チョップ&フリップでStylisticsの名曲"Pay back is dog"を料理し、男らしさと葛藤する"Peloton"、Sevyn Streeterを客演に招き、故DMXが司教のように語りかける"Cry in Church (featuring Sevyn Streeter)"など美しいボーカルの入った曲も超オススメ。The Neptunes、Young Thug、Offset他凄まじい超豪華客演が参加していても、どの曲でも喰われることなく主役はあくまでもIDK本人になっているコントロールが絶妙。曲から曲への移行がDJ MIXのように心地良くて、心からアルバム全体の設計の良さに唸る。まずは44分の通常版を通して聴いて頂きたい。


JPEGMafia "LP!"

元アメリカ空軍出身、イラクだけでなく日本にも軍務で滞在していた異色の経歴と異能のアーティスト、JPEGMafia。昨年の"EP!"(2020)の勢いのまま、"EP2!"(2021)、"LP!”"(2021)は強烈な個性と狂気の間をすり抜けるJPEGMAFIAワールドな作品に仕上がっている。全曲セルフプロデュースどころかピアノも弾くし、ミックスもマスタリングも自身で手掛けているためか、一枚の分厚い鉄板のような統一感があるアルバムだ。コラージュ絵のように混沌としたビートが多く、ようやく作品を掴めたかなと思ったら煙にまかれて指の中から消えている。繰り返すうちにアルバムが水のように身体へ馴染んでいく不思議な感覚を味わうことになるだろう。"WHAT KIND OF RAPPIN' IS THIS?"、"OG!"、"SICK, NERVOUS & BROKE!"、"BALD! REMIX"など注目曲はあるものの、上記の通りアルバム全体としての設計が大変良いので、まずは18曲49分に身を委ねて欲しい。オフライン版は5曲追加され、3曲除外、サンプルのクリアランスの関係(?)で一部別にトラックになっているなどの違いがあり、こちらも大変オススメなのでチャンスがあれば是非。


J. Cole "The Off-Season"

2021年はトーンポリシングふっかけが問題になったり、ルワンダのプロバスケチームと選手契約してバスケに挑戦したりと話題に事欠かないかったJ .Cole兄さん。悪名高き全曲全角タイトルが今でも慣れなくて気持ち悪いけど、オフシーズンどころか現役バリバリな内容で本当に素晴らしい近距離パワー系アルバムになっている。突然クランクが始まるLil'Jon兄貴よろしくな"9 5 . s o u t h"での"Put Your Hood Up"(2001)引用でテンションのぶち上がる幕開け。Morrayにフックを歌わせて、21 Savageとの"a lot"的な共演作で捲し立てるオラオラのラッシュのようなスキルフルなラップをお見舞いする"m y . l i f e"、その更に上をいくパワフルなラップをT-Minusのビート共に畳みかける"1 0 0 . m i l ‘"はシーンの頂点を誇示するような王者の風格と飽くなきハングリーさがリリックとフロウからほとばしっている2021年ベストソング。後半は静といった感じの曲でまとめ、日本語ラップのファンならお馴染み、Fullmemberの大クラシックと同じネタ使いの”h u n g e r . o n . h i l l s i d e”で締めくくる。多くの曲で叩きつけるように巧みなラップをする勇ましさに惚れ惚れしてしまう。ラッパーとして、アーティストとして、またはアスリートとして脂の乗り切ったスターの姿を堪能できる傑作で間違いない。今年1番元気を貰ったアルバムだった。

※全曲解説ならこちらの記事が大変オススメ。リスペクト。
https://www.udiscovermusic.jp/columns/jcole-new-album-the-off-season


Boldy James & The Alchemist "Bo Jackson"

生まれはアトランタ、出身もデトロイドで、所属するGriseldaの拠点バッファロー出身ではない。それでも途絶えてしまったキャリア、抜け出せないストリートライフ、アラフォーで再々起の要素がGriseldaそのものと言っていい苦労人Boldy James。デビューから複数に渡る音の錬金術師こと大師父Alchemistとのコラボは名盤"The Price of Tea in China"(2020)を経て、いよいよ極まった仕上がりとなっている。同郷J Dilla先生の"Detroit Game"への参加や、NasのMass Appeal Recordsの所属第一弾アーティストだった経歴、ビッグネームも認めた実力がどの曲でも発揮されている。特徴的なのは声、フロウ、リリックの三本柱で特にリリックのハードさには聴く心に来るものがある。"E.P.M.D"や"Drug Zone"ではハードフルなストリートでの生活が描かれている。そんな彼とラップの手綱を締めて自在に操る(?)Alchemistのビートは解像度が高くなっても魅力が落ちるどころかうまい酒のように沁みるAlchemist流BoomBap。"Photographic Memories" Feat. Earl Sweatshirt & Roc Marciano、"Diamond Dallas"、"Illegal Search & Seizure"、"3rd Person"での大先生プロデュースワークは痺れるほど絶品。亡きProdigyのバトンを完全に受け継いだBoldy JamesとThe Alchemistのコラボは年末にも"SUPER TECMO BO"というアルバムを出していて、これもまた良い。更にGriselda勢ならBenny the Butcher & Harry Fraud "The Plugs I Met 2"、AlchemistならArmand Hammer & The Alchemist "Haram"も素晴らしいアルバムなので是非聴いて頂きたい。


Nas ”Magic”

この記事を書いている年末年始、下記の"King's Disease II"をリストから外そうかなと思っていた矢先、サプライズリリースされた"Magic"は、グラミー賞のベストアルバム受賞作でNasの復権と謳われた"King's Disease"(2020)よりもビートが強く、同様にストロングスタイルなラップ、捨て曲の無しのタイトな曲構成で"llmatic"(1994)が強く香る傑作だ。 暴力、健康問題、ODと2021年も何かと悲しい訃報の多いHIPHOP界で、27 Clubから脱して21年間健全であることをアピールする"Speechless"で開幕。"Meet Joe Black"、"40-16 Building"でのパワフルなラップがその健全さを証明する。A$AP Rockyとプリモ御大が参加した唯一の客演参加でリード曲の”Wave Gods”は文句なしの曲だが、その前曲"Wu for the Children"までの流れも大変良く、流れで聴いて更にテンションを上げてくれる。スタープロデューサーHit-Boyとのジョイントが最もクリティカルに機能したコラボ第3弾ではないだろうか。作中で"King's Disease"の更なる続編も示唆されており本当に目が離せない。折角なので"King's Disease II"について。

Nas "King's Disease II"

前述の通り鳴り物入りでリリースされた"King's Disease II"は予想通りいい意味でも悪い意味でも前作のB面感にあふれた作品になっている。没曲集でまとめたのかなと勘繰ってしまう部分もあるが、そこはNasとHit-Boyの最強タッグ、全体としてのクオリティは間違いなく担保されている。年長者としての自覚を強く感じる内容の歌詞が多く、Don Toliverをボーカルで起用した"The Pressure"、Let's talk about itで自身の視点から2Pacの死について語る“Death ow East"の2曲からアルバムが始まる辺りKing's Diseaseっぷりがうかがえる。強烈なナツカシベリー要素としてEPMDと初コラボのEminemさんを迎えた"EPMD 2"、Lauryn Hillとの再共演の"Nobody"があるが、特に"EPMD 2"に関してはEminemのバースが長く、かつ印象的過ぎて主役が分からず懐かしさも中途半端になっている。youtubeのMVはEMINEMさんバースなしのショートバージョンで、やはりちょうど良い。光る曲としては三連符のフローを叩きつけるリードシングル"Rare"、またアルバムで1番お気に入りで、毎週日曜日のプレイリスト入り間違い無しな"Brunch on Sundays"などがちゃんと組み込まれており、Nasの作品を無視することなど出来ないと再認識した。


D Smoke "War & Wonders"

"Inglewood High"(2019)や、グラミーにノミネートされた"Black Habits"(2020)と比べると衝撃度は大分薄まってしまったものの、その分どっしり構えた横綱相撲のアルバムという印象。UCLA卒のバイリンガル元高校教師という超インテリの側面と、あの柔らかい物腰からは想像できないゴリゴリのイングルウッド出身(ギャング)という暴力に満ちた側面が同居するD Smoke。ただの優等生ではない彼のコンシャスなリリックは人生の濃さに裏打ちされた説得力があり、Kendrick Lamarに近い存在であること今回も感じ取れた。反面、コンセプトの縛りが強いせいか、しっとりしたビートに聴かせるラップが後半に偏ってしまい、D Smokeのもう一つの持ち味であるスペイン語交じりでスキルフルなパワー系ラップを聴きたいという需要には応えきれておらず、前半の"Dirty Mercedes"、"Shame On You"、"Road Rage"のような曲が後半にも欲しかった。そんな中でもTy Dolla $ignとの共演曲"Good Thing"はアルバムのベストソングで間違いない。日曜日昼のような心地よいビートにバイオレンスなリリックが馴染む"Crossover" feat. WESTSIDE BOOGIE、1バース目に哀悼を込め、浮遊感あるシンセサイザーの音色とフックのボーカルが印象的な"Why Run"なども良曲。また常連で実弟のシンガーSiR(ちなみにD Smokeの家は音楽一家)とのコラボ曲、"Common Sense"はコンシャスな内容もさることながら、終盤に黙祷のような長く美しい間奏があり3分以内の曲ばかりの今には珍しい曲。真面目な印象を更に強くした作品。


Don Toliver "Life of a Don"

2017年にキャリアをスタートさせて即Atlanticと契約。翌年地元ヒューストンの現王者Travis ScottにフックされてTravisのCactus Jack Records入りしたシンデレラボーイで、良くも悪くもTravis Scottのフォロワーな感じも否めなかったDon Toliver。前作のソロアルバム"Heaven or Hell"(2020)で自身のカラーを確立し、いよいよ今作で成った感がある。

ハイピッチなファルセットとオートチューンのスタイルはどこで客演していてもDon Toliverと分かるほどアイコン化。とかくリフレインが多く抽象的なリリックには好みが分かれそうだが、その分メロディアスな面が強調され、まどろむような心地良さでリピートすることが出来る。Hit-Boyがプロデュースした"What You Need"、他Mike Dean、Metro Boomin、DJ Mustardなどの新旧スーパープロデューサーの手腕も随所に光る。コロンビアのディーバーことKali Uchis(Don Toliverの恋人?)をフューチャーしたドラッグと地獄と愛のメロディこと"Drugs N Hella Melodies"は2021年のベストソング候補なのは間違いない。もう一皮むけたらT-PainやTy Dolla $ignみたいな更なるアイコン化も夢ではないのでは(?)


XL Middleton & Delmar Xavier VII "XL Middleton & Delmar Xavier VII"

90年代のウエストコーストHIPHOP、Gファンクなギター&ベース、ヴェイパーなシンセサイザー、そして和物サンプリングの複合的作品。普段は安易なシティポップムーブを懐疑的に見ていても、このぐらいクオリティの高い作品に出くわすとあっという間に懐柔されるし、聴覚は心地良さには抗うことは出来ないと思い知った。XL Middleton自身が日系人で、元ネタとHIPHOPでいわば両方のルーツに足を突っ込んでいる構図となっている。和物サンプルの使い方に違和感や、無理がない、とびきり心地良いのが現行の海外発シティポップとの違いだろうか。コロナ禍での在宅勤務、または通勤のお供として最高な作品だが、本当は車で海岸沿いを流しながら聴くべき。結局、謎のプロデューサーDelmar Xavier VII(デルマーザビエル7)はXL Middletonの変名というかアナグラムで確定だろうか…


Little Simz "Sometimes I Might Be Introvert"

Netflixドラマ『Top Boy』、映画なら『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』に出演するなど役者としても大活躍のLittle Simz。本人の口からもLauryn Hillを意識していることなど、カーディやドージャのような昨今のスターラッパーとは一線を画し、BLM、アフロアメリカン女性としての生き様をラップに乗せる今作のスタイルはかつてのコンシャスなラッパーやシンガーを彷彿させる。 今では珍しい3バース3フックを多くの曲でソロでこなし、Infloがプロデュースするもはやソウルの再現に近い豊かな中音域のバンドサウンドがその無頼な印象を加速させていく。
"Woman" feat. Cleo Solにおける

"Brooklyn ladies, know you hustle on the daily
Innovative just like Donna Summer in the eighties
Your time, they seein' you glow now
Intelligence and elegance, show 'em how
Miss Jamaica understand food for the soul
She get up in the kitchen know she throw down"

のラインはLittle Simzの今後のキャリアを含めて全てを物語る雄弁さがある。ハードなストリートでの経験を語る"Little Q, Pt. 2"、ハングリーな精神を力強く歌上がる"Standing Ovation"、ネオソウルなフレイバーの"I See You"などなど、どの曲も素晴らしいものの、3バース構成と同じ調子のトラックが続くのが割と難点。"Rollin Stone"や"Protect My Energy"などの変わり種な曲が終盤に待ち構えているので、じっくり聴いて味わう前提の作品。

同名の収録曲と同じタイトルの短編映画"I Love You, I Hate You"ではLittle Simzの役者としての表現力の高さを確認出来るので大変オススメ。


slowthai "TYRON"

パンクロッカー的で、いわゆる怒れるイギリスの若者そのもののような風貌とスタイルのアーティスト、UKラッパーのslowthai。配信が当たり前の昨今では分かりにくいが、このアルバムは2枚構成になっており、特にディスク2以降はコロナ禍のロックダウンを思わせる内省的な姿を披露している。荒々しさのあるディスク1との対比がトラック面でもリリック面でもアルバムの多様性をグッと拡張した。前半のASAP Rockyを招いた”MAZZA”はディスク1のハイライトだが、アルバム全体のハイライトは
"I was in my head, feelin' dead, feelin' microwaved
I was on the strip with the kids playin' Simon Says
Tyron jumped a bridge, would you do the same?"
と歌い、slowthaiの新たな面を見せた後半の"nhs"だ。国民健康保険サービスNational Health Serviceの略称がタイトルになっているのも気が利いている。"push"や James BlakeとMount Kimbieが参加した "Feel Away"(Mariah Careyの"Dreamlover"をJames Blakeが弾き直しならぬ歌い直ししている)もその系譜と言える。ちなみにホラー映画のファンなら思わずニッコリの"Cancelled"のMVもチェックして欲しい。



Nyck Caution "Anywhere But Here"

2010年代から瞬く間に広まり今も活躍するProEraメンバーNyck Caution、意外にもソロとしてはデビューアルバムになるらしい。Dreamlife BeatsやFlatbush ZombiesのErick the ArchitectがプロデュースしたNeo BoomBapが軸にありがながら、色々なカラーが入り混じったビートをNyck Cautionが上手に乗りこなしている。序盤のシャウトでProEraファン達を興奮させるアルバムタイトル曲"Anywhere But Here"、スムーズに耳に入って思わず千鳥足でステップしたくなる"Motion Sickness"、Denzel Curryとのスキルフルな掛け合いが楽しいトラップサウンドの"Bad Guy"、Pro Eraの盟友CJ Flyとの共演でCJ Flyのラガなラップが絡み、サンプリングのメロディとJake Luttrellのフックが抜群に良いハイライト"Things Could Be Worse"(feat. CJ Fly & Jake Luttrell)など良曲揃い踏み。控えめながらPro Era関連作品特有のラーメン二郎の新店開店時の全店長大集合的な熱さは本作にも健在。Pro Eraの盟友でかつて共に傑作ジョイントアルバムを出したKirk KnightのR&Bなアルバム"After Dark"(2021)も同じくオススメ。

Pink Siifu & Fly Anakin "$mokebreak"

お互いがソロでも、他のジョイント作でもハイクオリティの作品を量産するPink SiifuとFly Anakinのジョイント作品。いわゆるFlySiifu's record store勢のメンバーで製作され、ジャケからも香ばしく薫るBoomBapなサンプリングビートで構成されたアルバム。部屋中煙もくもくなGriselda勢と比べるとスムースで聴きやすいが、Fly Anakinの甲高いラップ、仕掛けの多さなど一筋縄でいかない良さを感じられる。ドラムレスで印象的なループの上にラップを畳みかける"3 dope boys"、煙たいビートの"Good Word" (feat. YUNGMORPHEUS)、ZelooperZのヘタウマなフックから印象的に始まる至極のポッセカット"Tha Divide"が良曲。BGM的に流していても全然良い。ちなみにプロデューサーとして参加している​iiyeはPink Siifuの別名義だ。


その他、よく聴いていたのは…

Evidence "Unlearning Vol. 1"
Drake "Certified Lover Boy"
Abstract Mindstate "Dreams Still Inspire"
 (DONDAのカニエよりこっちのカニエの方が好きだった)
AJ Tracey "Flu Game"
Morray "Mistakes"
Doja Cat "Planet Her"
AG Club "Fuck Your Expectations PT. 2"
MIKE "Disco!"
Dave East  Harry Fraud "HOFFA"
French Montana "They Got Amnesia"
Curren$y & Harry "Fraud Regatta"
(Curren$yは今年も多作だった)

…などなど。

日本語RAPも色々聴いた中だとMONJUが13年ぶりの待望の新EP"Proof Of Magnetic Field"が印象深い。

"CONCRETE GREEN"シリーズでMONJUを知り、"103LAB.EP"(2006)を即買い、池袋BEDで前作"Black de.ep"(2008)のリリースパーティーにも行って熱気に当てられたなど相当な思い入れがあるため、MONJU名義でまとまった作品が出て、それが変わらずバリバリにカッコ良いことは3人のソロでの動きを追っていれば当然であり、それがある種自分のことのように誇らしくもあり、心を様々な角度から掴まれた。


2021年 長すぎる後書き

あえて挙げるならベストソングは年末に出たJJJ - "Cyberpunk" feat. Benjazzy (Prod by JJJ)だろうか。MVにも魅せられたため今もヘビロテ。

我々がコロナ禍に悪い意味で慣れてしまったせいか、2019年から2020年ほどの大きなムーブメントを感じない2021年だった。音楽や作品の流行がそのまま続いていて、まるで2020年が2年あったような錯覚すらある。なし崩し的に五輪を開催したとて、音楽フェスのようなデカい興業は軒並み中止になるか、フジロックのように激しい批判を浴びながらの開催になった。映画もビッグバシェット系は公開延期、公開しても以前のような興収は見込めず、そもそも撮影に多くの制限がある状態が2年続いている。見方によっては2020年よりも窮屈な1年だったのではないだろうか。デカいイベントが行われない状態続くことが今後の作品にどう影響するかは引き続き注視する必要がある。

そして、今回もUSのHIPHOPの訃報に触れなればならない。Young Dolph、Drakeo The Ruler、Slim 400とこれからの活躍を期待していたラッパー達がPop Smoke同様、暴力によって亡くなってしまった。またDMX、Biz Markie、Black Rob、Shock G、Gift of Gab、KangolKid、50代のレジェンドアーティストが、理由はそれぞれだが、大まかに健康被害によって亡くなってしまった。著名なラッパーが寿命を全うするほどまだHIPHOPの歴史は長くないにしても、コミュニティでの根の深い問題である暴力、教育、貧困、依存症、医療アクセスを2021年も突きつけられた。これは格差広がる世界中で起きていることの縮図ともいえる。

日本に目を向ければ、職務遂行能力を失った安倍政権から首相”だけ”すげ替えた菅政権は突きつけられた課題を処理出来ず、重要な2択をことごとく外した。橋下、吉村、松井が率いる大阪維新と共に対応を大きく誤った第4波の医療崩壊、五輪強行開催と共に到来した第5波の医療崩壊はその最たる例で、今の第6波でも引き続き現在進行形で起こっている。自宅療養中に多くの命が失われたが、一切の責任を取らず、選挙で民に問われることもなく、首相”だけ”が変わったことで記憶からも消えて、また似たような岸田政権が誕生し、現在進行形でバッドなループを繰り返している。自民党、公明党、大阪維新、小池百合子東京都知事は政治のミスにより多数の死者を出した責任を取る気配もない。

日本で言えば2021 is gonna be just like 2020ですらなかったのかもしれない。政治的失策とラッパーの早すぎる死は全く違うようで、それほど遠くはない。これらの問題にコミット出来る共通の手段は現状政治参加しかない。町議選だろうが、区議選だろうが、都議選だろうが、どんな選挙にも行くべき。同じ輩が同じ椅子に座り続けていても何も変わらないことばかりか悪くなることがよく分かった2年だと思う。これまでの2020年と何も変わらない閉塞感に包まれたのが2021年だったとしたら、KMC先輩が言うところの「次に会うまで死ぬなよ!」で締めくくりたいが、2022年はそこまで厄介なことにならないことを祈るのみである。個人的にはサウナはもちろん、そろそろクラブの爆音で心のインフラを整えたいところ。

終わり。


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