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12/11 K's Cinemaで「十九歳の地図」を見た

俺は30分前ほどに映画館についた。新文芸坐とかいろんな映画館に行ってきたけど上映する映画が関係しているのか全体的に観客の年齢層は高めだった。20代は俺と1人。あとは5,60代ばかりだった。

この記事を読む人なら内容は知ってると思うけど感想も記念に書く。
主人公は下宿しながら新聞配達をしている(昔はこういう人多かったのかな)。自分の日ごろの生活に不満がある。配達しているエリアもいわゆるドヤ街で一癖も二癖もある人たちばかり。

冒頭、新聞配達中家に入って新聞を入れようとすると犬が吠えてくる(これはイラつくだろうな)。この家は×3つだそうだ。次の家は新聞を入れたところ窓の格子に手紙があった。中にはお菓子(饅頭?)があって、いつも配達ご苦労様と書いてあった。しかし、この家も×1つ。そのうえ鉢植えの花も踏んだ。
こうして彼は腹が立った家に×をつけていき、公衆電話からイタ電をかけて日ごろの憂さ晴らしをしているというわけだ。
手順は、家に帰るとおもむろにノートと鉛筆を手に取り電話帳から電話番号をメモする。最初の家に電話をかけた時は、お宅の犬を殺して庭先につるしたと言った(実際にやった。現代ならもっと大騒ぎになりそう)。次の家には腹が減ったのでタンメン3つ作れと言っただけだったが本人は満足そうだ(相手を苛立たせることができたので本人的には上出来だ)。

腹が立つ奴に復讐したいという気持ちは誰しもあるかもしれない。ただ主人公の行動はどんどんエスカレートしていっている(怒りの沸点は下がっていくが)。例えば、ある日の新聞配達では、なまりのある猫好きの酒屋の女将さん、アパート暮らしの一家(親がおらず女子高生が対応した)達に配達した。
ここの家にも×をつけた。女将さんのほうは俺も少しイラっとしたけど女子高生のほうはすぐに新聞代払ってくれたし配達を頑張れと言ってくれたのに。

次に配達したシングルマザーの家、裕福そうなケーキをくれた家にも×を付けた。シングルマザーのほうは入って早々なにやら仏壇に向かって何妙法蓮華経とブツブツと言っている(何か宗教にこっているのか?)主人公に悩みがあるなら聞く、自分の話を聞くと幸せになれるとやたらと家に入るように勧めてくる(宗教勧誘でもするのか?)、主人公はさっさと振りほどいて別の家に行った(これは×もやむなしか?)。
裕福そうな家では新聞代もすんなり払ってくれた上にケーキも出してくれた。しかし、その家の子供に忍び笑いされたのが気に食わず偽善者とみなして×をつけた(主人公がティーカップを茶道のような持ち方をしているのがおかしかったのか?)。
俺の目には多少うざいと感じるところもあるけど別に新聞代を滞納してる悪質な客でもないし最低限の礼儀も出来ていると感じるが主人公は不満なようだ。

彼は客に×をつけるだけでなく、その家を忘れないように地図、家ごとの家族構成、備考をノートに書き加えている。最初はノートに四角と線という小学生でも書けるような簡素な地図だった。しかし、終盤になると地図も大型化していく。主人公は画材屋に行き、紙、ペン、定規、コンパスを購入した。どれも本格的な製図に使うやつだ。政治用の紙にこれまでよりも詳細な地図を書いていった。イタ電の内容もグレードアップし東京駅やガスタンクに爆弾を仕掛けたという大層なものになった。

物語を通して主人公は何かしたわけじゃない。予備校でいい点とったとか、大学入試に合格したとか、1人でも周りの人に認められたわけでもない。一緒につるんでいる同居人の紺野からも尊敬を勝ち取ったわけでもなく他愛のない話をしているだけだ。だが彼も自分の人生に不満がありそれを解消したいと思っている。そこで彼の手段は地図を書くことだった。なぜ地図を描いたのかというと、人の情報を知ることで相手よりも優位に立てるという気持ちを味わいたかったからだろう(ドヤ街で親子で争ってる父子を見たときは×をつけなかった。自分が見下される相手ではないからだ。)

主人公はイタ電をしただけなので警察にも逮捕されてないし実生活には何も影響はない。しかし、何となく慕っていた同室の紺野、そしてその恋人のマリアを通して彼も少しは自分の心情に変化はあったという描写がある。終盤イタ電中に彼は泣き始めたのでやはり自分がみじめだという気持ちは芽生えたらしい。


備考: 俺も社会人になって日が浅いけど働き始めたらいちいち自分は何者だとか考える余裕はなくなる。グレたり非行に走ることができるのも若いうちだけだ。どのみち主人公も変わっただろうなと思うのは俺が冷めてるからか?

他に見どころ: 吉岡も若者らしく結構かわいげのあるところもあった。
新聞代を3か月も滞納している家があって同居人の紺野が新聞代を回収に行ってくれることになった。紺野は見るからにうだつの上がらない奴で吉岡も本当にこんな奴ができるのかなと当初は懐疑的だった。
しかし、紺野は集金に成功した。その時の吉岡は子供みたいに、紺野さんすごい!どうやったの?、と騒いでいた。(紺野は刺青を胸に小さく彫っているのでそれを見せた)
他にも、雨の日に皆で歌いながらチラシを折り込むところとかちょいちょい吉岡が可愛いところがある。(ちなみに俺は雨雨降れ降れ母さんがの歌の歌詞を初めて知った)


こう、映画館の入り口っていい。何というか遊園地のアトラクションに来たような高揚感がある。
中は緩やかな段差があり、前の人の頭も気にならなかった

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