キレてないんです。
やはり歳を重ねると色々なことに対して寛容になってしまうようで、そうそう何かに憤ることがありません。一時期は「俺は人間が腐ってるから」などと自らの狭量さを周囲にアピールしていましたが、そんなものは偽りの自分であり、世界に対して穿った見方をしている自分に酔っているだけでした。本当はめちゃくちゃ心が広いです。
この文章を書いていて思い出したのですが、つい最近怒りを感じることがありました。
社会人になると同僚から旅行のお土産でお菓子を貰うことがあるかと思います。弊社では一人一人に配って周るということはせず、タイムカードの横に広げておき社員が一つずつ各自で取っていく、という形をとっています。僕はタイムカードの前を通った際「お、あるな」と思いながらも素通りし、真面目に仕事に取り組んでいました。終業後に落ち着いてから食べようと思っていたのです。
さて、終業後。タイムカードを押しにいくと、なんと、お菓子が一つもないのです。

「な、なんで」

なんで無いのでしょうか？

お土産は社員全員分は確実にありました。加えて「一人お一つどうぞ」という付箋まで貼ってあったはずです。ここまで言えば勘のいい方ならもうお気づきでしょう。そう、誰かが絶対に二つ以上食っているのです。「なんて意地の汚い奴なんだ」そう思ったとてお菓子は既にそいつの腹の中。時既に遅し。僕は涙を呑み、冷たい夜風を自転車で切り裂きながら帰路を辿るのでした。

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