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王様はいない

画像はアングル《ユピテルとティティス》
載せる写真探すの時間かかるからパブリックドメインの好きな絵を飾っていくことにしました。(私が勉強中)

あと、noteを名付けてみることにしました。
「バランス帳」 ハア???
バランスって私がPS4ゲームの時に入れるユーザーネーム(オンラインで見つけたら声かけてください)なんだけど、むかし一度だけ、私のあだ名を「バランス」ってした人がいて、いやそれあだ名なの?ってくだらなすぎておかしかったので以来ゲームで使っちゃう。
常にゆらゆらぐらぐらなんかどっかに比重かかってる人生なので、バランス良く行きたいよね、の意も込めて。

「閃光ばなし」の稽古の話かな?と思って観に来てくださる方にはほんとすいません。稽古の話じゃありませんし、今後も余裕がなくてほぼしないかもしれませんから期待しないでくださいませね、ほんとにここは趣味嗜好が偏った雑なつぶやきのため池公園なので・・・
というか今日は明るい話でもないので嫌な人はスルーしてください。

この頃、眼精疲労がひどくて片っぽのまぶたがヒクヒクして来ちゃったので、稽古がたまたま早く終わった日に近所の健康ランドへ行った。
脳内セラピーなるヘッドマッサージを予約してまずはお風呂へ!

秋風吹く爽やかな夜の露天風呂は最高。
露天の岩に貼り付けた巨大液晶テレビは風情ないけど、黙浴がマナーのこのご時世、静かに湯に浸かりながら見るテレビもまたよし。
ってか鳥人間コンテストやってるじゃん!イエーイ!
……と、すっかり上機嫌でテレビを見ていたら、CMにあの男性俳優が。つい最近、過去の性加害が取り沙汰されて謝罪した人が、ひょうきんな顔でパフォーマンスしていた。
スッと湯の温度が下がるような気がした。前方で湯に浸かっていた女性が、離れて座っていた別の女性の方をチラリと見た。
私も含め、多分全員一人客。誰も知り合いじゃないから、気のせい、ほんとうに気のせいなんだけど、その目配せの一瞬になんとなく女たちの心の声が聞こえたような気がした。
「この人、出ていいの?」

私は近ごろのキャンセル・カルチャーには問題が多いなと思う。
過去に問題を起こした人、失敗した人に「テレビに出すな!」といったり不買運動を起こしたり、薬物問題を抱えていた人とか闇営業とか脱税とか、突き詰めればまるで種類の違う様々な社会問題を十把一絡げに社会悪としてやたらと断罪する思考にも辟易だし、排斥する姿勢にはこころから反対。
だから「出ていいの?」なんて感想を抱く自分にも意外な気がした。
けれど確かに風呂の中で上機嫌だった私の体はあの瞬間に少し冷えたし、女たちで裸でいたからなおさらモヤモヤして鳥人間コンテストのつづきを見ぬまま風呂を出てしまった。
だってあれは……性加害だから……。

夜の店の女性に性的な加害行為を行ったとして謝罪した人に対し、世間には擁護的な声も多い。既に訴状が取り下げられている過去のことを今取り沙汰すのはどうなの、という声にも一部では同意。
ただ、「そういうお店なんだから仕方ないでしょ、働くならリスクを覚悟すべし」というような声、これは違うと思う。
そういうお店じゃないですよ。クラブとかキャバクラって。

20代の時、短い期間キャバクラでバイトした。
余談だけどコスプレキャバだと入店してから知った。単に「制服支給」とあったから洋服持ってなくても行ける店なんだなと思った次第。ミニスカポリス(懐かしい)とか男物のYシャツ一枚(きわどいけど支度が楽なのね)とかそんな衣裳だった。
私はだいたい、誰かの着古したロングチャイナドレス。

制服はともあれ、とてもクリーンなお店だった。
お酒は飲まなくて良いし、飲ませたいお客さんに応えるならファジーネーブルを頼んでオーダーの紙に(○)を書けば良い。ただのオレンジジュースを出してくれるから。無理に飲ませる、絡みたがる客がいたらすぐにボーイに目配せすれば「お客様」と声をかけて止めてくれた。

いつだったか、少々ねちっこいお客さんのお相手をした時のこと。スーツにサスペンダーで心は舘ひろし、顔はフナっぽい(魚の。ごめんなさい)お客さんで、私はずっと「ワルの俺」を演出した男のひとり語りを聴いていた。
これは即興エチュードだ!相手は舘ひろしばりのジゴロ。なんならきっとスパイ。演技の勉強だと思えばバイトも楽しいと、さほどストレスも感じず2時間くらいスパイの女風に接客してお客さんを見送ったあと、ボーイの男の子に、
「お疲れ様。よく我慢したね」といわれた。
でもそれは褒めているのではなく、労いつつもやや呆れた声だった。
「あんなの無理しなくていいよ、嫌だったらちゃんと俺らに合図しなよ」
へ。なんかやなことあったかな?と考え、ああ、そういやフナ夫(失礼)はずっと私の太ももに手を置いていたことを思い出した。
まあ太ももだけだし~エチュードならそのくらい屁のカッパッすよとわたしは気にも留めていなかったけど、そんなところもボーイの子は目を配ってくれていたのだと驚いた。そもそも嫌がっていいんですか。
「当たり前でしょ、そういう店じゃないって客にも教えないと」
ほお~っと私はこれまでの認識を新たにした。そうなのか。

そ う い う 店 で は な い 。

胸や尻ではなく、たとえ太ももだろうと腰だろうと髪の毛だろうと、おさわりしに来るお店ではなく、おしゃべりしに来るお店なのですよと。
少なくとも私の働いてたお店ではそうだった。短期で辞めてしまったからそこまでわかっていないのかもしれない。けど、いくつか他の店も体験入店して、おさわり容認してねという店はどこにもなかった。

だけど私がフナ夫を許したように、そうして許している限りボーイが「おいっ」と叱りに来られないように、たとえなしくずしに逸脱行為に及ばれても、いきなり機嫌の良い客相手に叱りつけることは難しいだろう。
それが芸能人とか政治家とか大金持ちとか権力者相手ならなおさら、自分が拒否したりぶち切れたりしたら店や他の女の子にも悪い影響が及ぶだろうと想像はつく。だから叫んだり逃げたりせず我慢するしかなく……悪いのはそんな店で勤めた女性じゃないのは当然。
もちろん、止めなかった、守れなかった店側の人間の問題は多いにある。
だがなにより、その権力性に任せて常識を逸した加害行為を行った者が当然、あたりきに、悪いでしょうよ。

くり返すけれどキャンセルカルチャーは嫌いです。
だから「社会のルールを侵した者はテレビに出るべきではない」ということで私は「出ていいの」と思ったわけじゃない。
ただ、鳥人間を愉しみにニコニコと画面を見ていた自分の顔から笑みが消えたのは、「この人はスケベ」なんて優しいことではなく、女性の尊厳を踏みにじる行為を自分(の地位)ならば許されると勘違いし、レジャーとして愉しんだのかという醜悪さを想像し、それが出来る人を率直に「怖い」と感じてしまったから。
相手が嫌がっていることに気づかなかったの?喜んでると本気で思って勘違いしたの?それはないと私は思うよ。
だって良い俳優でしょ。相手の子細な表情に気づけるくらいの訓練してきたでしょ。相手がいやがること、柔らかく拒む行為、それを従わせることも含めて楽しんだでしょ。
同じ湯に浸かる女性たちが、不安にならなきゃ良いなと思った。
それが「出ていいの?」という心の声の正体だと思う。

テレビに出るなとか、活動休止だとか、そんなことは求めてない。そういう促進活動に思われたくもない。
ただ「不快な思いをさせてしまい」レベルのことではないし、夜の店は女性が傷つき、身をすくませることを覚悟して働く場所でもないということは言いたいし、この日本にそんなことが許される王様は、どこにもいない。

『ゲーム・オブ・スローンズ』じゃねえんだから!
(『ハウス・オブ・ドラゴン』放送始まったね)

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