見出し画像

そんな大人、修正してやる!

ああ、愛って体力だ。

なんてパワーワードを頭の中でくり返しながら、疲れた心と体を引きずって帰る日々。ただ今わたくし、豊橋はPLAT主催「市民と創造する演劇」で「甘い丘」という作品を絶賛稽古中であります。

「甘い丘」は私が30歳の時に劇団公演で描いた舞台。

当時の私より上の世代の女たちを描いた作品で、
「愛を乞う女たちの、渇望と再生の物語」
なんつって当時からチラシに書いてますしね、「イヤー私踏み込んじゃったな、ついに大人の階段上がっちまったな・・・」くらいに思ってたもんだけど、今稽古をしながら、頻繁に思うことがある。

いやさ、若いわ。これを描いてた私、ぜんっぜん若い。
なんでかってとにかくね…戯曲のはしばしに感じてしまうんです。

これ(甘い丘)を書いている人(私)ーー!!
愛にたいして、希望と欲望と野望を持ちまくってるウ!!
た、た、体力あるウウウ!!って。もうなんか、痛々しいほどに。

ねえ、30歳のゆうこちゃん。今年45になる裕子さんから言わせてよ。
たかだか15の年の差で先輩面なんてしたくないけど、私思ってしまうのよ。
人を好きになるってあなたが思うよっか、ずうっと大変よ。
体力の要ることなのよ。
マジできついこといっぱいよ。

だって真剣に向き合うのは疲れるでしょ。
わかり合うには単純に時間もかかる。
そしてまあまあの確率でわかり合えません。(経験者は語る)
いや、わかり合うなんてほんとうは存在しないのかもしんない。(哲学的になってみたり)
わかり合えないことから始めようって悟りを開き始めます。(禅の領域へ)
ってか、わかり合いたいと願うことがまず、くたびれる。(単なる怠け根性)

でも好きになると期待してしまうでしょう。
信じて傷つくのってほんと怖いじゃない。

だから新しい出逢いは要らない。手に余るものは抱えたくない!そんな風に思って、出会っても深く立ち入らないことがぐうんと増えます。運良く仲良くなれたら良いけれど、なれなくても全然いいや、とまずは自分に言い聞かせます。そういうもんだからと冷静な自分をいつもどこかに用意しておきます。
うっかり好きになってしまった時、同時に「逃げろ!」とさえ思いますよ。
これから大変だぞ~
時間かかるよ~
愚かなこといっぱい思っちゃうよ~
怖いこと増えるよ~
って、
別に冷笑的になっているわけではなくてね、恋愛とかに限った話でもなくてね。いくつかの手痛い経験から、学んでしまう。
失うものは少ない方が良いと。

でも「甘い丘」の稽古をしていると、これを描いていた私に、出逢いの期待みたいなもんがドチャッと詰まりまくってるのを感じちゃうのよ。
や、明るく脳天気な話ってワケじゃ全然ないんですよ。
むしろストーリーとしてはその逆だと思うんですが、台本を書いているその心の、奥の奥の方に、「俄然わかり合いたいね!!」という気概がダサいほど溢れてるし、どれほど寂しい状況に身を置こうと、突っ張った物言いでも、根っこの部分で人を信じているのを感じる。
殴られてもすぐ起き上がってきそうな勢いが怖いよあんた。
噛みついてでも振り向いてもらおうとする、とことん向き合いましょう!みたいな、マジで暑苦しいのよ。
まだまだ愛を乞う体力に、満ちている。

ああ、愛って体力なんだわ。っと、そこで冒頭の言葉に戻るわけです。
30歳のゆうこちゃん・・・元気ね・・・。
まだまだ青いよ。はんぶん、蒼い。(うるせえ)

だもんで稽古もどうしたってそういうやりとりが増えるんです。
俳優たちとシーン稽古をしたり、役について話し合ったりするときも、なまなかな心持ちではデキンゾってなって、飛沫がマスクに飛びまくってるだろうなーっていきおいでみんなで稽古して、誰かがウッとくる演技なんて繰り出した日にゃあ、心がもまれて乱れて、ウィークリーマンション(出張なのでね、仮滞在)へ車を走らせる運転席で涙ぐんだりしちゃって。もう完全に死語ですけど、ガチンコバトルって感じ?ああやめよう、書くのもダサい。

ともかく、立ち稽古に入り、割と短めな一日のスケジュールなのに毎日へとへとになって肩こりが増すのでわかってきました。
これはこの年で向き合うのは結構きつい舞台なんだと。おおいやだ。と。

だけど。
これを今やるのって、何かの導きじゃないかしら、と思ったりもします。
先述したような、愛ってね裕子ちゃん…って先輩面。
秋吉久美子パイセンや桃井かおり先生みたいな大人の女よろしく、何もかも知った気になってアンニュイなため息つきたい40半ば。さらに55歳や70歳になった私からみると笑われそうな、今の未熟な悟りや達観に、昔の私が殴り込み。

画像3

「そんな大人、修正してやる!©カミーユ・ビダン」

ってことなのかも。(たいして知らないくせに使うな)

そして、PLATの芸術文化アドバイザーになって初めて豊橋で市民の人たち(そしてKAKUTA勢含め東京組も!)とやらせてもらう作品が、この泥くさい、暑苦しい舞台でよかったのかもしれないと思ったりします。
マスク越しでしか向き合えない今だから、なおさら。わかりあいたいっていう、青くさい野望を抱いて臨みたい。

うん、体力つけよう。
この20代から60代までの色とりどりなキャストたちと、やってみよう。
覚悟を決めて、愛を乞う、愛する、という作業を。

画像1

そして願わくばくつがえしたいね!

失うものは少ない方が良いなんて、

新しい出逢いは要らないなんて、

あなたの(わたしの)

思い込みを。

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?