第03話カシスオレンジ
カランカランッ…
「いらっしゃいませ」
「1人なんですけど、いいですか?」
「カウンターにどうぞ」
女性が1人、カウンターに通された。
バーに慣れていないのか、緊張しているようだ。
「どうぞ」
おしぼりを渡される。まだまだ暑い日が続くので、冷たいおしぼりなのが嬉しい。
「ありがとうございます。メニューってありますか?」
不安そうに尋ねる女性
「こちらです。メニューないものもお作りしますので、好みをおっしゃってください。」
メニューを渡しながら微笑むのは、つい最近23歳になった若きバーテンダーのユウキくんだ。
メニューを見ると、ジントニックやカシスオレンジなど、見慣れた名前のカクテル名が書かれており、知っているものを選ぶか、知らないものを選ぶが、悩んでいるようだった。
「あの…カシスオレンジ、お願いできますか」
「かしこまりました」
女性は、違うのにすればよかったかな。と頼んだ後も少し後悔するような顔をしていた。
ユウキくんがオレンジを絞っている。
ジャンゴはフレッシュオレンジを使っている。搾りたてのオレンジジュースで作るカシスオレンジは、別格だ。
カシスリキュールのオレンジジュース割
シンプルだが、結局「こういうのでいいんだよ」という美味しさがある。
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
女性はカシスオレンジオレンジを一口飲んで驚いた。
「美味しい!」
「良かったです。カシスオレンジ美味しいですよね」
「ホントに!いつも飲むのと全然違いますね」
カシスオレンジを頼んでよかったと女性は思ったようで、ニコニコと嬉しそうだった。
女性はその後、もう1杯カクテルを飲んで帰っていった。
「また来ます。今日はありがとうございました」
「またお越しください」
また一人、バーの魅力に惹き込まれた客が、常連となるのであった。
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