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2020年公開 北欧映画① 1/17 『オリ・マキの人生で最も幸せな日』フィンランド・スウェーデン他映画

60年代のフィンランドで行われたボクシングの世界戦(フェザー級)世界戦の挑戦者、オリ・マキを主人公にした作品です。モノクロの、どこか懐かしい映像。たんたんと進む物語。万人向きではないように思えて、ぴあのガイドでは書くのを見送ったのですが。好きな映画です。

1962年の夏、彼が挑戦した世界チャンピオンはアメリカのデイヴィー・ムーア。実は彼、60年に来日し、後楽園球場で高山一夫と世界戦を行っているのですね。さらに61年にも再来日し、高山と再戦し、タイトルを防衛しています。この映画が描いているのはその翌年の話です。同じ62年10月、日本ではファイティング原田がフライ級の世界チャンピオンになっています。あの頃の人気ぶり、かすかに覚えています。日本全体が熱かったです。そんな時代の空気をこの映画にも感じます。

フィンランド中部、コッコラのパン屋の息子、オリ・マキ。純朴な青年です。フィンランド初の世界タイトルマッチの挑戦者は結構忙しいのです。トレーニングとスパーリング、フェザー級には少し体重が多く、減量しなければいけません。世界戦をこの国に持ってきた興行主(マネジャー)に協力し、スポンサーとの食事やパーティ、タイアップ広告にも協力しなければなりません。ところが、彼の最大関心事は、恋、だったのです。恋人ライヤを連れてヘルシンキまで来たのですが、なかなかふたりの時間がつくれません。不満なライヤは腹を立てて、故郷に帰ってしまいます。それを追いかけていくオリですが…。

すったもんだあって、なんとか試合の当日。会場は3万人収容の野外競技場です。ヘルシンキで戦後初の夏季五輪が行われたのが55年。たぶんその会場でしょう。ゴングがなり、試合はあっけなく、一方的にチャンピオンの優勢で2ラウンドで決します。が、オリはその敗北にそれほどめげた様子はありません。実はこの日、彼にはすばらしいことがあったのです…。

オリ・マキ役はヤルコ・ラハティ。『アン・ノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』のTVシリーズにでていたそうです。ライヤはオーナ・アイロラ。この人はよく見かけます。年末に公開された『ブレスレス』にも出ていました。このふたりは、この年のフィンランド・アカデミー賞(Jussi Awards)主演男優賞、助演女優賞をそれぞれ受賞しています。オリを支援するマネジャー役は、なんと『ボーダー 二つの世界』で怪物のような旅行者を演じたエーロ・ミロノフです。オリとライヤは、その後、ハッピーな人生を歩んだそうです。ラストシーンで、ちらっと姿をみせます。

監督・脚本 ユホ・クオスマネンはこれが長編デビュー作。第69回カンヌ国際映画祭(2016年5月開催)ある視点部門でグランプリを受賞しています。同じ部門には深田晃司監督の『淵に立つ』、是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』もエントリーされていました。フィンランド・アカデミー賞では男女優賞のほかに、作品賞、監督賞など8部門で受賞。2016年のフィンランド映画を代表する1本です。

2020.1.17日本公開
原題 Hymyileva mies/The Happiest Day in the Life of Olli Maki
製作年 2016年
製作国 フィンランド/ドイツ/スウェーデン
配給 ブロードウェイ
上映時間 92分

監督・脚本 ユホ・クオスマネン
脚本 ミッコ・ミュッルラヒウチ
撮影 J=P・パッシ
キャスト
ヤルコ・ラハティ
オーナ・アイロラ
エーロ・ミロノフ
https://olli-maki.net-broadway.com/

映画とは関係ないですが。
デイヴィー・ムーアは63年にドジャー・スタジアムでシュガー・ラモスと対戦、TKO負けで王座から降ります。そのダメージで2日後に死亡、ウィキでは「その死亡の状況は後に漫画『あしたのジョー』でも登場人物の力石徹が死亡するシーンで引用されている」と書かれています。21歳のボブ・ディランが彼の死を『Who Killed Davey Moore?』という歌にしています。

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