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死にそうになった話

それは7月4日のこと

「今日は定時で帰る」と言う決意を胸に、『定時で帰る』とプリントされたTシャツを着て出社しました。そうは言ってもこのTシャツを着た日は、大抵は残業になると言う呪われたTシャツ。それでも半ば強引にタイムカードをがーがががっと印字して、「今日はやったぜ、やってやったぜ」と帰途に着きました。
 御殿場の手前でマックが食べたくなり、足柄SAに寄ろうかどうしようかと迷いつつ走ります。車線は第2車線。3車線の真ん中。この頃ガソリンも高いので、燃費走行に努めていますので、スピードはおよそ80km/h。やけに空いている道で周囲に伴走する車も無く、のんびりと…と言っても、その日の制限速度で走っていました。

不意に目が後方を見た

 意味も無く、本当になぜかわからないけど、無意識にルームミラーを見ました。その刹那、時間の流れはゆっくりとスローモーションに変わります。
 時間にして2秒あっただろうか。もの凄い速度差で、白いミニバンが第1車線から斜めに、まさに跳びかかるかのように向かって来るのが見えました。

衝撃に備えよ

 状況は理解できなくとも、危険性は瞬時に解ります。咄嗟にハンドルを握りしめ、右足はアクセルから離します。そして思わず口から出たのは「ふざっけんなバカヤロウ!」と言う大声。
 その直後、かつてない衝撃が背後から襲い掛かります。急な加速。続いて左側への横向きの力。斜め方向に追突された慣性力は私の車を左回りに回転させます。
「なめんなぁ!」叫びに意味なんてありません。単なる悪態。それでもここで死ぬわけにいかない。アクセルを離した足でブレーキを思い切り踏み付け、無意識にサイドブレーキを引き、ハンドルを回転の逆に当てて立て直そうとしたのは、技術でも経験でも無く、本能。生きようとする本能。

上下左右がわからん!

 車は左回転で猛烈にスピンをし、何回転したかわからないままにガードレールに衝突し、ピンボールの様に弾き返されました。その勢いで車体はゴロゴロと回転し、路面で削れた火花が視界に溢れます。
 この時点で2軸回転ですから、もう方向感覚は奪われて、自分がどこに向いているのか全くわかりません。
 ようやく車が止まった時、3車線の中央で、逆を向いて停まっていました。

やるべきこと!

 咄嗟にやった事。
1.ハザードランプを点けた
2.移動を試みた(でも動かなかった)
3.動いていたエンジンを切った
4.会社に電話した
5.ドライブレコーダーのSDカードを抜いた
6.スマホとバッグの確保
7.車検証を手元に
8.保険会社に連絡…と思ったがメガネが吹っ飛んでて何も見えない
9.社外に退避…と思ったが、アドレナリンが切れて動けない

たまたま通った車が撮影してくれました

その後

 ドアも開かない。身体も動かない。車から降りれない。そうしたら誰かがドアをこじ開けた。事故の当事者だ。追突したのは18歳の青年だった。
「どこを見てたの」絞り出した問いに、「居眠りしてたみたいです」と。
 その彼に、警察への連絡と、救急車の手配を指示。
「場所はどこだって言ってます」
「そこらに距離ポストがあるから、数値を伝えて」
 彼がもたついているうちに、ハイウェイパトカーが到着し、連絡をしてくれた。
 十数分後に救急車が到着。救急隊に車から救出してもらい、ストレッチャーに。首を固定され、救急車に乗せられるも、搬入先の病院の選定を待つ。その待ち時間に妻に電話をするも、auの通信障害で連絡取れず、LINEを送るのでやっと。
 救急車がようやく走り出す。病院は御殿場市内と決定。足柄SAから出て戻る。
 病院到着も、PCR検査行って、結果が出るまで待機。
 院内で簡易な検査をし、骨に異常が無いのでその場、その時刻で退院を言われる。しかし身体は動かせない。てか、こんな時間に放り出されてどうすりゃあいいんだ?
 救急隊が去り際に「車両横転です」と告げた。すると『高エネルギー傷害』と言う事で事故後の法的規定で即入院となり、病室に。

それからが長い

 翌日、妻が娘の車で来てくれた。しかしコロナ禍で面会できない。LINEでメッセージを交わすが、手続きが終わって帰ることに。しかし妻たちが病院を出てしばらく後に、高エネルギー障害の影響が無いと言うことになり、退院を言われる。そこですぐに妻に連絡。たまたま病院近くのファミレスで昼食を摂っていたので、戻ってきてもらい、入院費12万余を払って退院。
 翌日から自宅近所の整形外科に通院となりました。

 車の状態からも、事故の状況からも、一つ間違えば或いはって感じだった様です。ああ生きてて良かった。マジで。

動かせないはずです。タイヤが無いもの

 ちなみに、この日に着ていた『定時で帰る』Tシャツ、あまりに縁起が悪いので、封印することにしました。残業どころか事故入院だなんて。

 実はこの前日の日曜日、出雲大社の分祠にお詣りし、茅の輪くぐりをして絵馬を納めました。もしかして神様が守ってくれたのかな?