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迷惑にわかキャンパーの方々へ

キャンプブームに思うこと

 コロナ禍の影響か、それともアニメやYouTubeか。
 理由はそれぞれあるのでしょうけど、今やキャンプはブームを超えたムーブメントと言えるかと。
 100均ではキャンプグッズがお手頃価格で売られていて、ワークマンではアウトドアに適した服が安い上に機能的でオシャレ。
 数年前まではマニアしかいないような趣味でしたから、何を買うにも高額で、入手しにくくて。しかも周囲の理解も得られず。そんな頃から考えれば夢のようです。
 ハードルが下がると言うことは悪い事ではありません。利用客が少なくて閉鎖するキャンプ場だって少なくなかったこれまでを思えば、新しいキャンプ場がオープンするなど、良いことも増えました。…その代わり、予約が取りにくくなりましたが。

ブーム故のリスク

 それで何が言いたいかとか言うと、まずはキャンプ場でのマナーを知って、覚えてから来てください。
 アウトドアって自由なイメージがあるのかもだけど、基本的に不自由で、マナーに厳しい場所です。
 なぜかって、見ず知らずの他人と同じ場所で、薄い布を隔てて一夜を過ごすんです。その怖さを知って欲しい。繰り返しますが、周りにいるのは見ず知らずの他人です。どんな性格の人がいるのか、前もって知る術はありません。
 マサイ族に不快をもたらす者はいないと言います。その理由は、マサイに無礼を働けば、次の朝は永遠に来ないから。ライオンのお腹は満たされるかもだけど。
 キャンプ場も周囲にはどこの誰とも知らぬ人が、もれなく刃物や可燃物を持っています。酔って寝入った深夜に燃料撒かれて火をつけられても周囲はすぐには気付きません。
「敵を作らない」為にはマナーを守りましょう。「自由に楽しむ」以前に自分や家族を守りましょう。

セオリーは安全に基づいてる

 スマートに楽しみたいのなら、知識を身につけてからにしましょう。
 テントの設置場所に気を払いましょう。芝のサイトなのに砂が浮いてませんか? 谷のように窪んでたり、いかにも水が流れそうな溝になっていませんか? いずれも雨が降ったら池や川のようになって水没する可能性があります。「トイレや水場に近い好立地なのに空いてた」場合、なんらかのリスクがあると思って確認しましょう。
 基本のロープワーク、自分のテントやタープの設営手順は、目をつぶっても出来ると思えるほどに覚えておきましょう。そしてテントもタープも、ひとりで立てられる様になりましょう。難しい技術を言ってるんじゃないんです。ちょっとしたコツを知っておくだけです。
 例えばタープの設営。地面にタープを伸ばして、ポールの位置を決めます。そのポールを中心に、そこから左右約45度の角度になる様に、ロープを張る方向を決めます。ペグを打つ位置は、そのラインに、立てようとするポールの長さを測った、その位置です。
 ポールの長さより手前過ぎると、ロープが急角度になって踏ん張りが効きません。ポールの長さより離れ過ぎるとロープがたわんで張りきれません。
 ペグ位置が先に決まってしまえば、ひとりでポールが立てられます。相棒にポールを支えさせて、後からペグを打って、手が足りないとイライラする必要が無いんです。

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ペグの打ち方だけで初心者と見抜かれる

 そしてペグはロープに対し90度の角度に打ち込みましょう。要するに水平な地面に対し45度で、ポールの逆側に傾倒した角度です。よく見る間違いで、ロープの延長方向にペグを打つ人がいます。わかりやすく言うと、ペグを打つハンマーを、ロープに沿って振っている人がいますが、そうするとロープのテンションがペグを真っ直ぐ引きますので、ペグが抜けやすくなります。夜中に強い風が吹いて、タープやテントが飛ばされるのは、実はよくあります。
  初心者では勘違いしてる人が多いのですが、ペグのフックはロープの滑り止めです。ペグの上端から外れるのを止めているだけであり、強度だってそれほどありません。フックにロープを引っ掛けて、それでロープを引っ張ってはダメなんです。

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ロープの張り方を覚えよう

 タープのポールはロープ側に僅かに傾けましょう。垂直に立てるのはまだしも、ロープの逆側に傾倒するのは間違いです。構造として安定する最低ポイント数は3点です。ポールとロープが構成する形は底面が三角形の三角錐です。頂点が底面の外に出てたら安定しません。そして安定する形状の角度は、正三角形の60度、そして45度、90度弱の組み合わせです。立てるポールの長さとペグの距離を同じにすれば、角度は約45度です。角度を優先に決めて、ロープの長さは自在金具で調整するんです。
 自在金具も、テンションをかけるだけでは弛みます。理由は簡単、滑るからです。また、風でテントやタープが揺すられた際に、ロープのテンションが緩んだ時に自在が滑ります。対策としては自在金具を一捻りして、自在にロープを巻きつけてやると弛みにくくなります。
 なぜこんな事を言うのかって?
「別にペグをどう打とうが、ポールを立てるのに時間が掛かろうが、あんたに関係ないでしょ!」
 ごもっともです。私には関係ありません。それで皆さんがヘトヘトに疲れ果てたって、知ったこっちゃ無いです。
 ただ問題は、抜けやすいペグと不安定なポールで、ヨレヨレになったタープやテントにあります。雨が降れば弛みに水が溜まり、重さでタープが潰れます。たまに見ますね。雨の中、不安げな顔でタープを見上げ、溜まった水を押し上げて排水してる人。そのうち面倒になって座ったまま余ったポールで突っついて、終いには生地を突き破る人。
 それから、キャンプ場は林間サイトを除けば、大抵は開けた場所のはずです。オートキャンプ場なら車が入りますからなおさらです。
 開けた場所は風を遮る物がありません。そして風は1日のうち、何度か方向を入れ替えて強く吹きます。地域と季節にもよりますが、午後の2時から4時、そして深夜の2時から4時に突風が吹く事が多いです。
 いい加減なペグやポールでくにゃくにゃのタープは簡単に飛びます。そして周りの無関係な人やテントを巻き込むんです。
 本当、勘弁してほしいんです。

常識知らずには資格はない

 キャンプ場での常識も知って覚えてください。夜空の下で焚き火をして、テーブルとチェアを置いて楽しみたいのはわかりますが、就寝時にはタープの下に移動して、火の始末をつけてください。
 昔は「ペグの外に出して置くな」と教わりました。タープやテントのガイロープのペグの内側に片付けろと言う意味です。キャンプ場にはあなた方のテントレイアウトを知らない人も居るんです。フリーサイトで出しっぱなしは危険です。深夜、トイレに行く人がつまずいて怪我したら、それはあなた方の責任です。ライトを点けて歩け? 以前、黒いハンモックフレームを出しっぱなしにして、自分がつまずいて骨折した人がいました。自分でそれを出して、ライトも持ってたのに。
 他にも焚き火のマナー。「直火禁止」と無くたって、焚き火は焚き火台の上でするんです。芝の上で焚き火をすれば根まで焼けます。と言うか、直火で焚き火ができる場所はかなりレアです。普通は出来ません。それはキャンプ場じゃ無くても、例えば砂浜でもダメです。それから燃え残りを埋めたり、川に流したりは絶対にダメです。まず、灰と炭は違います。灰は灰色というよりほぼ白いのです。そこまで完全に燃えて初めて自然で分解されますが、灰はアルカリ性なので土壌を傷めます。土に埋めたらその年は草が生えません。ちなみに「芝」とはゴルフ場で見るような芝生ではなく、短い草の事です。「芝生じゃねーからOKっしょ?」なんて無知な奴はキャンプすんな、って思います。
 そして黒い「炭」は炭素の塊りなんですよ。炭素ってのは元素ですから安定しています。燃え残りの炭を土に埋めたら、1000年先も消えません。あなたの非常識な行動が31世紀になっても残るんです。まあ、そんなこと言ったって気にもしないでしょうし、むしろ自慢に思うんでしょうね。きっと重要文化財に名前を書いちゃうようなヤカラと同族でしょうから。でも、その迷惑行為で人が怪我をすることがあります。砂浜に埋めた、消火してない燃え残りを子供が踏み抜いて、大火傷をした事件(事故とは言えない)もありました。

「ガキ畜生」に居場所は無い

 ペットや子供を連れてくるな、と言う事では無いんです。コントロールが出来ないペット以下の犬や、躾の出来ていない児童、できれば乳幼児は連れてこないで下さい。まず赤ちゃんはかわいそう。不慣れな環境が不安で泣くのを聞くのは、周りだって辛いんです。そしてテントサイト内では遊ぶのも禁止です。走ればロープに足を取られるでしょう。ましてや投げたり蹴ったりする遊具は厳禁です。手元が狂って人にぶつかったり、高価なギアを壊すかもしれません。オートキャンプサイトで車に傷を付けて警察沙汰になったのを見たことがあります。あくまでも子供は脇役であり、「大人の趣味」への仮参加です。それをしっかり言い聞かせましょう。そう言う意味では、自分達が最優先の、自分をコントロール出来ない「精神が大人になれていないガキ」は年齢に関わらず参加してはなりません。
 犬の散歩はリードを短く、テントから離れて歩いてください。これ、散歩トレーニングが出来ていないと案外難しいです。ましてやリードを外すなんてあり得ない。しつけと管理が出来ていないのは「ペット」では無く「畜生」です。他の犬やキャンパーに吠えて襲い掛かったり、テントにマーキングの放尿なんて、殴られても文句言えません。以前の話ですが、それで鉈を投げつけられた犬を見たこともあります。その犬がどうなったのかは言いたくありません。
 音楽は、あなた方がギリギリ楽しめる音量でも、50m以内の他のテントは迷惑です。犬の無駄吠え、度が過ぎた子供のはしゃぎ声、怒るお母さんの金切り声、常識知らない女性のキャンキャン声、常識以前に大人になれてないアニキの調子に乗った大声、酔ったおっさんの延々と続く説教、全部迷惑です。20時まではみんな我慢しますが、それ以降は殺意が湧きます。

光害は公害

 トイレに行くときなど、LEDのビームは足元を照らしてください。よそのテントや人の顔を照らすなんて、無神経にも程があります。オートキャンプサイトでは、車のオートライトはオフにして下さい。車のライトの高さはチェアに座ったキャンパーの顔の高さです。「ちょっと荷物を取るだけ」のつもりでも、その「ちょっと」が迷惑です。
 高光量のランタンはリフレクターで光漏れを抑えてください。夜遅くまで近隣のテントを照らす事は避けてください。テントの生地は磨りガラスのグローブと同じで、照らされたテント内は明るくなって寝られません。基本的にロープのペグを出ていいのは、トイレや水場に行く時と、焚き火の煙だけだと思いましょう。光も出来るだけ外に出さない気遣いが必要です。ましてや暗くなってからの薪割りやバトニングなんて。

もうやりたい放題

 これでもまだまだ一部の事です。
 どうです? 面倒でしょう? 冒頭でも言いましたが、キャンプは自由では無いんです。むしろ不自由で、周囲には気遣いが必要なんです。なんたって大人の趣味ですから。仲間で騒ぎたいだけならキャンプ場じゃなくてもできます。
 最近、本当にこういう迷惑キャンパーが多いんです。
 酔って斧を振って指を切った人をつい先日も見ました。大騒ぎして煩いです。
 花火禁止なのに、持って走る子供もいました。テントに穴が開くかとヒヤヒヤします。
 そんな子供に注意しない、躾すら出来ない親もいます。見ててイライラします。
 ゴミは持ち帰りなのに、水場に生ゴミを放置していったグループもいました。不衛生で不愉快です。
 車のロック解除からのオートリヤゲートの操作、再びロックを深夜まで、何度も繰り返すグループもいました。その度に音が鳴るのが迷惑です。
 コロナ禍でテントは10m以上離すように指示が出てるのに、ピッタリ隣接させてきたファミリーもいました。パンフレットも読めないのかと呆れます。
 フリーサイトの出入口を塞いで設営したグループもいました。出入りする車に踏み潰されろと思ってしまいます。
 こいつら(あえてこいつらと言います)は自分のことしか考えてないんです。

どうせ迷惑キャンパーは読んでない

 でも、こんなことを書いたところで、こう言う迷惑キャンパーには届かないんだと思います。情報を得ようとする人は、きっともうわかってますから。わかろうとしない、知ろうとしない、そんな人が迷惑キャンパーとなり、傍若無人に振る舞うのでしょうから。

 自分勝手な迷惑キャンプを1回や2回したぐらいで、キャンパーを名乗らないで欲しいもんですよね。キャンプ歴だけは無駄に長い私だって、未だ自分をキャンパーだなんて思ってません。あと40年もしたら名乗ってもいいかな? なんて考えます。