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ASOBIJOSの珍道中

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文筆家で尺八見習いの万里一空と、日本舞踊を習っている妻・MARCOによる、ドタバタ自給型ハネムーンの紀行文です。素っ頓狂で向こう見ずなアホ二人がカナダワーホリへ。果たして、無事に…
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#ワーホリ

ASOBIJOSの珍道中⑲:サーカス、手に汗握る!

 さぁ、サーカスを見にいきましょう。お祭り続きの夏を送るモントリオールでは、ジャズフェスティバルが終わると、サーカスフェスティバルが続きます。街道には、巨大な車輪の二輪車を漕ぎながら、ビルの2階ほどの高さから人々を見下ろし、にこやかに手を振っているピエロの姿があったり、広場に設置された巨大な跳躍ロープを使って、ぐるぐると宙返りをしながら青空に舞っている、天使のような格好をしたパフォーマーもいますし、サッカーボールに板を乗せて、その上に逆立ちをして、片手を離してしまい、さらに足

ASOBIJOSの珍道中⑩:給仕補佐に。

 モントリオールのフレンチレストラン『La petite plantation』で、ディッシュウォッシャーとして働き始めてから2ヶ月が経った頃。マグロの料理長がいつも以上に厳しい面持ちで、”一空、ちょっと来て。”と、私を呼び出しました。  ピカピカに磨かれたグラスや金属の食器がズラリと並んだ大きな広間の片隅に案内されながら、”噂に聞く、カナダの首切りか、、、。”と、嫌な予感が頭をよぎりました。  ”どうしたんですか、料理長。どうせ悪い話でしょう。”  ”僕にとって悪い話。でも

ASOBIJOSの珍道中⑨:NY、路上で尺八吹くのは肝試し

 ゴトリ、ゴトリ、と揺れる車窓には、早朝の柔らかな陽にとろけたモントリオールのカラフルなビル群が流れ、ジープとキャンピングカーとロッジが並んだ田舎町も二つ、三つ、と流れてゆき、白樺の樹々の間から覗いた巨大な湖の上で、西陽が燃え、いつしかまた、あのニューヨークへ、無作法に、ぶっきらぼうに立ち並んだ高層ビルの窓が輝きひしめき、三日月もせま苦しそうにかかった、夜の大都会に、列車は突き刺さりました。  前回からひと月が経って、4月の下旬のことです。今度は私ひとりで来たため、節約しよう

ASOBIJOSの珍道中⑧:NY、7年ぶりに。

 ”もう二度と飛行機なんて…”とMARCOさんは相変わらず。  今度はニューヨークに下り立ちました。3月下旬のことです。2泊だけの予定で、今回の目的は、尺八でジャズの作曲や演奏をしているザック・ジンガー氏に会いにいくことでした。空港から地下鉄に乗り、予約していたソーホーエリアのホテルへ向かいます。  ”切符ってこれでいいんだっけ。”  ”なんか、うまくカード決済ができんのやけど〜”  などと、田舎モノのわたしたち。モタモタとやっていますと、  ”Sorry, we are i

ASOBIJOSの珍道中⑦(MARCO執筆):モントリオールで拾った月額7,000円の絆たち

 モントリオールにきてから2ヶ月経つというのに、私はニートだった。近所のカフェは全部落ちたし、送ったメールは返信が来ないし、そもそも求人は全部フランス語必須と書いてある。ずっと避けていた、e-Mapleという在カナダ日本人向けの掲示板サイトを開くと、キラキラした文面で、日本食レストランの求人が並んでいた。私はそこで、やっとの思いでウェイトレスの仕事を見つける。  変なレストランだった。念仏と神棚と浴衣と茶道とJ-popとサムライを雑炊にしたような場所。食事が始まるときは、ま

ASOBIJOSの珍道中①:LAを経由して

 うとうとと、眠れたのか、眠れなかったのだかハッキリとしない時間を過ごして、目を開けると、機内には、辺りの窓から差す、すみれ色の光が充満していました。私は、しばらくぼうっと外を眺めてから、日記帳を取り出し、こう綴りました。  こう書き終えるや否や、飛行機は着陸体勢に入りました。すると、隣のMARCOさんは一層固く目を閉じて、身をこわばらせます。そうです、普段は何事にも勝気で、車の運転も自転車の運転も、怖い物なしでびゅんびゅんとぶっ飛ばす彼女ですが、飛行機は大の苦手なのです。