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ASOBIJOSの珍道中

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文筆家で尺八見習いの万里一空と、日本舞踊を習っている妻・MARCOによる、ドタバタ自給型ハネムーンの紀行文です。素っ頓狂で向こう見ずなアホ二人がカナダワーホリへ。果たして、無事に…
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#珍道中開始のお知らせ

ASOBIJOSの珍道中⑤:スカンクに追われ

 3月初旬、凍りついた街の闇夜を歩いていると、背後からガサゴソと、氷を引っ掻くような音がしました。嫌な予感。ダッと、全力でダッシュをしてみましたが、すぐに追いつかれました。獣。黒い毛にフサフサの白い毛、猫のような鼻。そうです。スカンクです。  両手に食べ物がパンパンに入った買い物袋を持ってゼーハーゼーハーと息を切らす私から、いつでも飛びかかれるほど近い、1メートルくらいのところから、じっと私を睨みつけています。ひとまず、りんごを一つ取り出して、そっと相手の方に転がしてみました

ASOBIJOSの珍道中④:アソビジョーズ、遊びすぎーる。

 さて、2月の下旬、モントリオールに到着したばかり。生活を始めるにあたって、まずは家と仕事を探さなければなりません。しかし、そんなもん、なんとかなるやろ、とジャズバーに出かけるのが、愚か者夫婦の私たち、ASOBIJOS(アソビジョーズ)でございます。  モントリオールは夏に大きなジャズフェスティバルが開催されるほど、ジャズが盛んな土地で、毎日ジャズのライブがあるバーも何軒かあります。そのうちの一軒、『Diese Onze』というお店へ出かけました。この日は、『Alex Bel

ASOBIJOSの珍道中③:いよいよモントリオールに

”もう二度と飛行機なんて乗らねぇ”と、MARCOさんは相変わらず。  いよいよモントリオールに到着しました。2月の17日のことです。一つ驚いたことがありました。それは、既にコロナが終わっていたことです。アメリカの入国にはワクチン接種の証明書の提出を求められましたが、カナダの入国には何一つコロナに関連した手続きなどありませんでした。街中を歩いたって、マスクをつけている人なんてめったに見かけません。  到着した翌日に、この国の寒さを凌ぐためのコートやブーツなどを探しに中心街をぶら

ASOBIJOSの珍道中②:1束のセージ@LA

 ”君は英語もよく話せるし、海外には慣れているね?ベニスビーチは前と比べたら随分綺麗で安全になったよ。だけど、観光客まる出しじゃダメだよ。iPhoneを見ながら歩いたり、カバンを置いてトイレに行ったりしない。わかるね?あと、タダであげるって言われても、何も受け取らないんだよ、いいね?”  と、初老の黒人タクシードライバーが忠告をくれました。2月の半ばだというのに、LAでは、常夏のように陽光が燦々(さんさん)と輝いています。ベージュのハンチング帽に白髪が覗くこのドライバーにはど

ASOBIJOSの珍道中①:LAを経由して

 うとうとと、眠れたのか、眠れなかったのだかハッキリとしない時間を過ごして、目を開けると、機内には、辺りの窓から差す、すみれ色の光が充満していました。私は、しばらくぼうっと外を眺めてから、日記帳を取り出し、こう綴りました。  こう書き終えるや否や、飛行機は着陸体勢に入りました。すると、隣のMARCOさんは一層固く目を閉じて、身をこわばらせます。そうです、普段は何事にも勝気で、車の運転も自転車の運転も、怖い物なしでびゅんびゅんとぶっ飛ばす彼女ですが、飛行機は大の苦手なのです。