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ASOBIJOSの珍道中

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文筆家で尺八見習いの万里一空と、日本舞踊を習っている妻・MARCOによる、ドタバタ自給型ハネムーンの紀行文です。素っ頓狂で向こう見ずなアホ二人がカナダワーホリへ。果たして、無事に…
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2023年12月の記事一覧

ASOBIJOSの珍道中⑩:給仕補佐に。

 モントリオールのフレンチレストラン『La petite plantation』で、ディッシュウォッシャーとして働き始めてから2ヶ月が経った頃。マグロの料理長がいつも以上に厳しい面持ちで、”一空、ちょっと来て。”と、私を呼び出しました。  ピカピカに磨かれたグラスや金属の食器がズラリと並んだ大きな広間の片隅に案内されながら、”噂に聞く、カナダの首切りか、、、。”と、嫌な予感が頭をよぎりました。  ”どうしたんですか、料理長。どうせ悪い話でしょう。”  ”僕にとって悪い話。でも

ASOBIJOSの珍道中⑨:NY、路上で尺八吹くのは肝試し

 ゴトリ、ゴトリ、と揺れる車窓には、早朝の柔らかな陽にとろけたモントリオールのカラフルなビル群が流れ、ジープとキャンピングカーとロッジが並んだ田舎町も二つ、三つ、と流れてゆき、白樺の樹々の間から覗いた巨大な湖の上で、西陽が燃え、いつしかまた、あのニューヨークへ、無作法に、ぶっきらぼうに立ち並んだ高層ビルの窓が輝きひしめき、三日月もせま苦しそうにかかった、夜の大都会に、列車は突き刺さりました。  前回からひと月が経って、4月の下旬のことです。今度は私ひとりで来たため、節約しよう