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くらげさんのお話


ある日


犬は旅をしていました。


道をあるいていると



ぷかぷかと浮かぶくらげさんを見つけました。



「とってもキレイ!」




犬はしっぽをふりながら

近づいてみることにしました。



くらげさんは歌を口ずさんでいます。


「~♪~♪」


とてもすてきな唄声でした。




「もっと聴きたいなあ」



それから犬は

毎日ここへ来ることにしました。




くらげさんは


おんがくにのせて




時に歌を唄い


時に己を詠い


時に世を憂い


ぷかぷかと浮かびながら


せかいを見つめながら過ごしていました。




「ぼくと一緒だ」





そう想った犬は

くらげさんに近づいてみました。










「くらげさんはなんで浮いているの?」


「浮いていると、何も考えなくていいの」









「くらげさんはなんで唄っているの?」


「私はこのせかいを謡うためにうまれたの」










「そうなんだ、キレイだね」








こう呟くとくらげさんは




「ありがとう」だけを残し

どこかへきえてしまいました。








犬は歩きました

くらげさんを見つけるために






犬はさがしました

くらげさんの唄声を聴くために





犬はおもいうかべます





こころの中の水槽へ



ぷかぷか


ぷかぷか



くらげさんを想い浮かべるように。





そうしてあるいていると


犬は聴き覚えのあるうたごえに出逢います。





「君はくらげさんじゃなかったんだね」




そしてまた

せかいへ旅に出る




くらげさんの物語は


はじまったばかりです。






この世界に、哀福を。

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