パーテーションの向こう側
長年バンギャをやってきたと自負しているが、令和も5年になるところですごい体験をした。
それは2023年3月のことだった。
友人と若手バンドを見にライブへ行こうと約束をし、ライブ会場へ向かった。その日のライブは入場すると好きなメンバーとツーショットチェキが取れるいわゆる「撮影券」がもらえるという内容で、何度かライブ自体は見に行っていたバンドだったが天誅もいい歳だし撮影か〜なんて思っていたのだが物は試し、撮影会へ参加することにした。
ライブが終わり、フロア内で撮影会の準備が進むが、近年主流になりつつあるライブ後の撮影会に参加するのは初めてだったので
昔みたいに並んでるバンギャ達に見られながら撮影するのか〜恥ずかしいよな。
なんて思いながらいたら、フロアにパーテーションが5つ。撮影会は各メンバーごとにパーテーションで区切られるという事を知らずにいた天誅は
なにこれ!半個室じゃん!!
と驚きを隠せずにいた。
撮影券を持ったバンギャ達はお目当てのメンバーの列に並ぶ。撮影会は予めチェキ撮影時のポーズ指定ができないとの記載があったので、普通にピースしたり良くて手でハートを作ったりとかその程度だろうと予想していたのだが、スタッフがチェキのシャッターを切る度に光るフラッシュでパーテーションの向こう側のシルエットが浮かぶと、すごく密着している様子が窺えた。
やっぱり常連とかカワイイ子には密着して撮影するよな〜
なんてタカを括る天誅。天誅の目当てのメンバーは人気があるらしく、多くのバンギャが並んでいた。並ぶこと数十分、天誅の順番が回ってきた。
パーテーションの中に入ると
いつもSNSで見ていた彼が目の前に....!?
えっ、美しい。
想像よりも小柄。
えっ、美しい。
これまで散々バンギャをやってきたので、イベントなどでバンドマンを目の前にするこういったシーンは多々あったものの、何度経験しても、何歳になってもドキドキするものである。
パーテーションの中に入るとすぐに照明を持ったスタッフがチェキ撮影。撮りまーすの声と共に彼は天誅を後ろからハグする形で撮影。
令和の撮影会ってこんな感じなの!?
とその日何度目かの驚きを隠せないままトークタイムに入った。
とにかく近い。物理的に近い。
アレだ。ホストクラブで言うところのイチャ営というやつに近いのかもしれない。
今日日オトナのお店のオネーサンですらしないであろう距離感にドキドキする要素満載なのだが、天誅のようなババアにも優しくしてくれるなんて最近のバンドマンはよく教育されているなと感心すらした。
別のメンバーとの撮影を終えた友人と落ち合うと、終始「やばーい。」しか言えなくなる。
バンドマンはバンギャの語彙力を奪う。
簡単に言うと彼は神対応というやつだったのだ。そこから先、天誅が撮影会の沼にハマったのは記述するまでもないのだが、ここまでして決して安くはないお金を払って応援したいと思わせる存在がいるのは、生活に色彩が生まれる。
推しは推せるうちに推せ!とはよく言うが、彼が彼というバンドマンを演じてくれるならば、どこまででも応援したい。
撮影会の数分。多分1〜2分だろう。本当に幻のような時間だった。
家に帰る頃には魔法が解けて、手元に残ったツーショットチェキはシンデレラのガラスの靴の片割れように、「魔法にかかった証拠」となる。
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