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電化ジャズとは何だったのか

私がジャズを聴き始めたのは、71年。マイルスが電化しウェザーリポートがデビューした時代だった。時代は大きくうねっていた。

ジャズ楽器で初めて電化したのはギターだろう。管楽器やドラムに比べて遥かに出音が小さいギターが、最も早く増幅化されたのは当然だった。

続いてオルガン。ただ、オルガンは純粋に電気楽器ではあるが、音楽的に電気楽器であるかというと、難しい問題がある。中でもハモンドオルガンは、歯形が付いた円盤を回転させて正弦波を生むが、狂信的なファンの中にはアンプを通さずとも(つまり、電化されていなくても)、歯車がモーターで廻ってさえすれば「微かに音が出る」などと言う、猛者がいる(このオルガン問題については、別項で詳しく述べたいと思う)。

そしてベース。こちらもギター同様に出音が小さい。スウィングジャズ時代ならばドラムもブラシなどで小さく叩いていたものの、60年代にも入ると暴れるドラムが続出し、ベース奏者は圧倒的に不利となった。そこでピックアップを装着した。

この電化されたギター、アップライトベースに関しては、決してエレキギター、エレキベースとは呼ばない。これらは全く違う楽器であると言って良い。

そしてついにマイルスがトランペットを電化する。ちなみにアルバムこそ遺していないが、末期のジョン・コルトレーンはサックスにピックアップを付ける試みをマイルスよりも早く行っていたとする証言もある。

ここへ来て「電化ジャズ」の態勢が整った。

電化されることによる大きな変化は、その演奏方法だろう。まず前述した通り、ドラムが変わった。ベース、ギターのリズムセクションが変わった。リード楽器も当然そのスタイルを変えた。

さらに、当時の勢いであったロックのリズムや要素(ファッションも含めて)を採り入れた。小さなジャズクラブから大きなホールやスタジアムへ活動拠点を移した。

かつて、フランク・シナトラに代表される「ささやき唱法」は、マイクの普及が原因であると言われているが、電化ジャズも電気楽器を用いたことで、その奏法を劇的に変えたのである。

90年代頃から、センサーを主体とする「アコースティックな」ピックアップが登場し始めた。現代に於いてはあらゆるアコースティック楽器に用いられ、よりアコースティックライクな演奏を行えるピックアップが登場している。ここで「音量」という問題は解決され、既に電化というジャンルは消滅したと考えて良いだろう。

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