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かばん持ちという仕事

学生時代、様々なバイトを経験した。通っていた高校の先生がたまたま客として来、数日で辞めさせられたビアホールの店員というのもあったが、総じて楽しかったし楽(ラク)だった。電報配達などは「簡単で楽だから、職員になれ」とまで言われた(従わなくて良かったが)。人間関係で苦労したことも皆無だった。

デパートの催事では期間中、設営と進行管理を手伝う。だいたい、正社員など立ち会っていない。それぞれ流しの「間道(かんどう)」の方々で、暇な時間帯に私の似顔絵を描いてくれたり「蝦蟇の油売り」の仕掛けを教えてくれたりした。

中でもユニークなのは「かばん持ち」だろう。事務所を持たず、自宅の電話だけで営業をしていた男性。何らかの教育事業だった気がする。私は学生だけど、正社員のフリをして名刺も持たされていた。そして、その男性が取引先に行く時に同行する。私は、相手先の応接室に通されるも一言も発言をせず、ただ黙って隣に座っているだけ。たまに「書類を」と言われ、カバンから書類を取り出すだけだった。

しかしまあ、世の中には不思議な仕事があるものだ。

後年、あるフリーランスの人が打ち合わせに行ったら先方の取引先がモヌケの殻で、それはその人が打ち合わせ期日を間違えたからなのだが、改めて同じ場所に打ち合わせに行くと、社員で一杯だったらしい。その後その会社は夜逃げした様だが、もしかしてあの時の社員は「仕込み」だったのでは無いか?と、思ったそうだ。

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