ココアはやっぱり
小さい頃からミルクは苦手で、今も得意ではない。
決して飲まないわけではないけれども、自ら注文することはほとんどなく、コーヒーに牛乳が混ざった飲み物もたまにしか飲まない。
高校を卒業するまで、朝食はほとんどが食パンだった。
いつもはマーガリンにフルーツ系のジャムがたっぷり塗られた食パンとブラックコーヒーなのだが、冬になるとたまに出てくるココアが、密かな楽しみだった。
それもお湯で溶くのではなく、ミルクで溶かされたココア。
私にとって多感な時期に食べた家庭での食事には、「マズい」が所々に散らばっていて、「美味しい」はほとんど食卓に現れることはなかった。
それは美味しいご飯が食卓に並んでいるにもかかわらず、それを発することなく飲み込んでしまい、美味しくないものは「マズい」と発していまう反抗心が原因なのだ。
ミルクココアが出た時も、美味しい上にもっと飲みたいのに、それを言葉にしないことで、たまに出てくる楽しみになってしまった。
ミルクを温めることはガスを余分に使うので、弁当のオカズで作りたいものがあってもできないことがあり、温めた鍋は牛乳の成分が付いてしまうから洗わなければならない。
ミルクココアは手間暇がかかる分、見えない暖かさに包まれている。
ココアはやっぱり、お母さん。
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