雨が降っても僕が濡れればいい

「青春」
この聞きなじみはあるけど漠然とした言葉について、僕が大好きな7人組アイドルのセンターが無観客配信ライブでこんな感じのことを言っていた。

「青春ってどうしても若い子の特権っていうか。歳取って青春っていうのは恥ずかしいみたいになってて。でも俺にとっての青春はジャニーズWESTやし、俺は今が1番青春してる。見てくれてるみんなも俺らと一緒に青春しようや(笑)」

最後の言葉を言い終わった彼ははにかんだ顔をしながらピアノを弾き始めた。当時彼は28歳になる少し前。僕は20歳になる5ヶ月前。
まだまだ若いけど青春なんて終わったと思っていた僕の青春がそこからまた動き出して、その言葉が凄く好きだった。


高校生活はものすごく楽しかった。
学校には女子もいるけど、工業科だったからクラスは男子だけの40人弱のクラス。

バスケ部は1人もいないのに毎日昼休みにバスケをして、昼休み明けの小テストの点数平均がどのクラスよりも低かった。そのくせに定期考査になると勉強するから他のクラスよりも平均点は高かった。
国語の宿題を全然みんなしてこなくて、頭が良いクラスメイトがしてきたのをみんなで写していたら、「20字以内で今の気持ちを述べよ」的な問題なのに、20人くらい答えが一緒で国語の先生にバレて怒られた。担任の先生は「次からはもっと上手くやれ」と笑いながら言っていた。
頭が悪い友達が「数学のテストめっちゃ自信ある!」と言っていたから「50点無かったらジュース奢ってもらう」約束を個人的にしたら、そいつに2点の答案用紙が返ってきてクラス中爆笑した。

3年間クラス替えも無く同じメンバーだから、3年生の頃なんて本当に楽しかった。今も楽しいから戻りたいとは思わないけれど、卒業式の日なんかは柄にも無く寂しくなった。
今でも連絡を自分から取ろうと思う友達は5,6人程度だけど、多分みんなで集まったらあの頃と変わらずみんなでワイワイ言ってる気がする。



今思うと、僕は彼女たちの青春に勝手に混ぜてもらっていたんだなと思う。

ここ最近、前ほど彼女たちに対して熱が出なかった。理由はたくさん考えた。時間がない?イコノイにハマったから?単純に彼女たちへの興味が失せた?どれも違った。

彼女たちのことは前と変わらずに好きだ。番組も毎週見てるし、情報も気付けば追っているし、何か動きがないかと気になる。
ただ僕が勝手に青春の終わりを感じていただけだった。

誰がなんと言おうと彼女たちが今過ごしている時間は青春だと思う。単独シングルデビューした時、彼女たち本人も想像がつかなかったくらい大きな世界が動き出した。
あの時の彼女たちなら、2019年の世界がずっと続いているなら、2020年の東京ドームは通過点になって、またどんどん大きくなっていくんだろうなと思っていた。
でも、世界は急激に変わって、生活も何もかもが変わった。彼女たちを取り巻く環境も変わって、口では通過点と言うけど心の奥底でどう思っているのか見えなくなってしまった。
前に女性アイドルを花火に例えたことがあるのだけど、彼女たちは花開くまで長い長い時間をかけて、大きな花を咲かせ夜空を照らした。
ただ、ずっと照らし続けているのだけどいつ散ってもおかしくないところまで時間が過ぎてしまった。

僕自身も個人的な事情が重なっていて、あれほど絶対に行くと思っていた東京ドームも申し込みが始まった時申し込むか悩んだ。そんな時、あるメンバーのブログを読んで申し込むことを決めた。外れたら外れたでそういう運命だったんだろうなと思うことにした。当たっても状況を見ながら行かない選択肢も考えた。今の時代、きっとどの選択肢も間違っていない。

結果は当たった。そしてあの人の復帰も決まった。少し無理してでも行く理由ができた。このまま体調が悪くならなければ僕は東京に行く。


結論、僕が抱いていたモヤモヤは「青春が終わること」だった。
きっと3月31日が終わると彼女たちの青春に混ぜてもらっていた僕の青春が終わる。それが怖かった。それがずっと心に靄をかけていた。


でもやっと分かった。それで良いんだ。
間違いなく3月31日に彼女たちの青春は1つ終わる。でもその青春は消えるものじゃないし、ずっと輝くものだ。
時間とお金が大部分を占めるこの世界で、彼女たちに使った時間とお金が無駄だったと思うことはこの先無いと断言できるほどに彼女たちが好きだ。


「好きということは…」の主人公は夕立が降る中君を抱きしめ、自分が濡れることが好きということだと表現した。
こんな自己犠牲は僕にはできない。でも22人はこれができちゃう人達だから。
そんな彼女たちを好きになった。
好きの大きさに差はあれど、22人全員を好きになるなんて奇跡だと思う。

勝手ながら一緒に青春させてもらった。
そして青春は終わらないとあの人が教えてくれたから。
きっと4月1日から彼女たちの新しい青春が始まるんだ。その青春に僕がいるのかどうかはその時になってみなけりゃ分からない。
僕らがバスケをしている中、小テストの勉強をしてた人もいる。
テストの点が低くてみんなで笑っている中、99点を取って悔しがっていた人もいるだろうし。
そのどれもが一人一人の青春で、良くも悪くも思い出になる。

これからの彼女たちの青春に入ることが出来なくても、僕の思い出の中に残る今までの青春はずっと綺麗な思い出として残る。それで良いんだ。


東京で出来上がった青春を見た僕が何を思うのか、貴女たちは次の日からどんな青春を作るのか、誰も分からないけど今はもう靄なんか全くなくて楽しみで仕方ない。どんな答えになっても僕は綺麗な思い出を抱きしめて生きていく。

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