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この恋はもう大きくなれないけど

僕は作詞家としての指原莉乃の大ファンです。
彼女はたった4〜5分の曲の中で1つの物語を丁寧に作り上げる。「桜の咲く音がした」「ズルいよ ズルいね」「夏祭り恋慕う」「君はこの夏、恋をする」
これらは特にそれが分かりやすく受け取ることが出来る(と思っている)。

その中でも僕は≠MEの「まほろばアスタリスク」はどうしても外せない。何もかもの歯車が噛み合って、この曲は神曲って呼んでもなんの違和感もない曲だと思う。

まず歌詞について。
僕はこの曲の「恋」を「星」に例える世界観が本当に大好き。
最初の1行。ビッグバンが起きて星が生まれる様に、これまで感じたことのないときめきとぶつかり、主人公の恋が始まる。かと思えばすぐにその恋は叶わないものだと知る。

「星座になれない孤独な星」
片想いの恋をこのワードで表現されたら好きに決まってる。片想いの恋は消えたわけではなくて、ずっとそこにあるのに、ただ、星座にはなれない。たった数秒で切なさが溢れ出るこの歌詞。聞いた瞬間にこの曲は良い曲だと確信しました。

叶わないと分かっている恋なのにどんどん輝きを強くしていく主人公の恋。きっとこの主人公は好きになっても叶わないことは分かっていて、それでもどんどん好きは増していって。
その心情を「感情は秋を急ぐ」の一言でズバッと伝えてくるのもめっちゃ好きです。
星は夏よりも秋の方が綺麗に見えて。この子は頭では輝きを増しても意味無いと分かっていながら、恋心だけは秋を急いでどんどん大きくなっていて。この子の中でどうしようもない二律背反が起きているんだろうな。

手のひらサイズの小さな恋が大きさは変えぬまま、輝きだけ増した1番。
2番に入った途端にこれまでと全く違うアングルで心を動かされた。


「好きって言ってたマンガを読んでもそれすら言えない弱気な星」

「「「「「わかる」」」」」

ここまではワードのチョイスや切なさで物語として受け取っていたのに、急に共感をぶち込まれた。マンガに限らず、好きな人の好きなものが気になるっていう経験は恋をしたことある人は誰しもあると思う。
2番のサビの最後とも繋がるんだが、きっとこの子はこういう話題を作らないと好きな「君」と話せない。でも、話題があっても話したいことがあっても、この子は話せなくて、また毎晩何を話すか考えてしまっているんだろうな。

そして話せない理由は、単なる自分の弱さだけじゃなくて、
「君の幸せは近くにある私じゃない」
のを知っているから。1番ではただの片想いと思っていたけど、ここでこの恋は切なさを増した。ここら辺から聞いてるこっちは苦しくなってくる。

「そうだ分かった 君は星合の空」
無知なもので言葉の意味を知らなかったのですぐに調べた。七夕の空という意味らしい。君は七夕の空くらい眩しくて、この子にとっては目を細めてしまうほど。
なぜなら君も恋をしているから。私という星とは交わらない恋をして、君という星は輝きを増している。

切なすぎない???聞く人によっては涙出てきちゃいそうな歌です。

そして気づけば急いでいた秋=11月に時は進み、さらに星が輝く冬に向けてきらめきは強くなっている。Cメロからはこの子の心情が2番までとは違う。説明が難しいんだけど、「叶わない恋をしている」のではなくて、「叶わない恋を勝手にさせてもらいます」みたいな。

いずれ輝きを失ってしまう恋をせめてもの間、と大切にするこの子。
好きだよなんて言えないこの子が口にした最初で最後の「好き」が、
「あの子を好きな君が好きだ」

「君」から見たこの子は星屑に混ざって、すぐには見つけられないのだろうけど、きっといつか星屑の中からこの子と星座になる星が現れると信じています。


ずいぶん長くなってしまいました。
2つ目は歌い手によって変わる曲の印象について。
≠MEと佐々木舞香さん&野口衣織さんがライブでしたカバーについて少しだけ…。

まずは≠ME。全体としての歌詞を見ると切ないのにノイミーちゃんの歌声で聞くとあまり切なさは強くありません。これは貶しているのではなくて、彼女たちの歌声は『恋を大切にする健気な女の子』が目に浮かびました。きっと人前では、叶わなくてもこの恋に感謝して笑顔で過ごしている印象。その中で冨田さんの歌声が切なさをアクセントで加えて、曲の全体の印象がギュッと締まったイメージです。

次に佐々木舞香さん&野口衣織さん。≠MEとは真反対。切なさで塗り固められた歌声でした。特に落ちサビ。佐々木さんは叶わない恋を強がってる実は1番弱い女の子、野口さんは叶わない恋に苦しくなっている女の子。見ているこっちが切なさで涙が溢れました。
最後の歌詞を歌い終わる瞬間、佐々木さんは真っ直ぐ遠くを見つめて、でもきっとその目には何も映っていなくて、野口さんは感情をすべてぶつけて下を向いていた。2人の対照的な表現も素晴らしかったです。


結論:全人類聞いてください。

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