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リレー日記(2024年1月29日〜2月4日)文・ウラモト

バナナ倶楽部のメンバー4人が、1週間ずつ交代で日記を投稿します。今週の担当はウラモトです。

1月29日(月)晴れ

9時頃起床。出社して粛々と作業。12月末頃からどうも集中力に欠けている。25時頃まで作業してすみやかに帰宅。26時頃就寝。

1月30日(火)曇り

5時頃起床。沖縄に一泊二日の出張へ。旅行に不慣れなので、航空券やレンタカー、宿の手配だけで一苦労だ。

羽田空港に向かう電車の中で、mei ehara『Sway』を聴く。人生のベスト10枚に入るくらい好きなアルバム。夜明けの東京湾によくあった。

空港で一緒に出張に行くスタッフ2名と合流。3まわりくらい年上の男性と女性。出張上手、旅行上手の2人。一応出張の責任者は私なので、気が抜けない。

飛行機内ではぐっすり眠り、3時間ほどで那覇空港に到着。曇っていた。レンタカーを借りて、目的地に向けて北上する。南の島のはじめての道を運転するのは楽しい。BGMはサザンの『バラッド '77~'82』にした。沖縄に来るのは8歳の頃の家族旅行以来、20年ぶりだ。沖縄ビギナーの私は、沖縄マスターである同行者2人の沖縄話に耳を傾ける。馴染みの店の噂話。途中、同行者に導かれるまま、ソーキそばの名店「きしもと食堂」に寄って昼食。美味しかった。車に乗り込み、今度は山下達郎の『OPUS』をディスク1から。一応、全員何となく知っている曲を選びたい。

14時頃、仕事先に到着。18時半頃まで仕事。成果は十分。

再び同行者に導かれるまま、名護市の焼肉の名店「漫味」へ。道中のBGMはPearl & The Oysters『Coast 2 Coast』。焼肉はとても美味しかった。業界の噂話と子育て論。楽しく夜が更ける。

10分ほど車に乗ってホテルへ。下戸の自分が役に立てるタイミングだ。BGMはmei eharaの『Sway』。満腹時にも聴けるアルバム。22時頃ホテルにチェックインし、解散。明日は7時30分にホテルのロビーに集合。

気の抜けない一日が終わり、まだまだパソコンでやらなければならない作業はあるが、動けない。息抜きに、ピチカート・ファイヴの「マジック・カーペット・ライド」を聴きながら、ホテルの隣にあったA&Wバーガーへ。沖縄ローカルのチェーン店とのことだが、知らなかった。ルートビアだけ頼んで席に座り、ぼーっと過ごす。20年前の夏の沖縄で、35歳の母親が考えていたことを想像する。朝からmei eharaの『Sway』が聴きたかったのは、あのアルバムが、10代までの家族との幸せな記憶をなぜか想起させるからだったのだと気づく。私は旅行をしないが、音楽や映画や文学に潜り込んだ先で、宇宙を見ているつもりだ。市川沙央の『ハンチバック』や、今村夏子の『こちらあみ子』、映画『ザ・ホエール』、様々なイメージが浮かぶ。小西康陽がライブで「マジック・カーペット・ライド」をピアノの弾き語りで歌ったとき、「2000光年をペルシャ絨毯で もう一度ひとっ飛びしましょう」というフレーズで声が詰まってどうしても歌えなかったことを、自分は忘れないだろう。A&Wバーガーは24時間営業で、大学生くらいの若者たちで賑わっている。ルートビアはドクターペッパー以上に湿布の味がした。

24時前にホテルに戻り、大浴場に入る。25時頃就寝。

1月31日(水)晴れ

6時半頃起床。ホテルのバイキングで朝食を済ませ、時間通りにスタッフと集合し、仕事先へ出発。

前日と違って晴れていた。車内のBGMはNed Doheny『Separate Oceans』。島の朝のさわやかな空気と相性は抜群で、海岸沿いを気持ちよく走る。このアルバムの「Whatcha Gonna Do for Me」という曲が、2週間前くらいからずっと自分の気分だ。心地よく洗練されているがブルースがある。こういう曲だけかかっているクラブへ行きたい。途中、スタバに寄って、ドライブスルーで注文。自分はチャイティーラテ。

8時半前に仕事先に到着。11時頃まで仕事。今日も成果は十分。

昼食のため、また、同行者に導かれるまま、ソーキそばの名店「山屋そば」へ。とても美味しかった。道中のBGMはMelodiansとMighty Sparrow。あからさまに南米系の音楽にするのは恥ずかしかったが、この日は気温も高く、日差しも強かったので、どうしても、ラヴァーズロックとカリプソ。

13時に仕事再開。今回の出張で一番の成果が出た。大満足で16時頃に仕事を終える。

アイスが食べたくなり、帰り道にあるブルーシールへ。沖縄ビギナーの通り一遍をおさえる一泊二日。

帰り道はしっくりくるBGMが決まらず、達郎の『OPUS』を「SPARKLE」から順番に。自分にとっては、沖縄のドライブに1980年前後の達郎の曲はどうも合わない。夕陽が綺麗な頃にちょうど「YOUR EYES」が流れてきて、さすがにこれは違うなと思い、Corneliusの『First Question Award』に変えた。しかし、同行者たちの反応は今ひとつ。高速から下りた後でYMOのファーストに変え、さらに細野晴臣つながりで、シャッポとCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINを聴いた。

レンタカーを返却し、空港へ。那覇空港のゲートで解散となった。出張上手の段取りだ。飛行機の中はWi-Fiが弱く、スマホとノートで作業。羽田空港に着いてから、24時までにやらなければならない月末作業を終えた後、電車に乗り、24時半頃に帰宅。25時半就寝。

2月1日(木)晴れ

10時頃起床。よく寝た。出社の途中にスタバでチャイティーラテを買う。

会社で粛々と作業。いろいろなことが遅れているが、一泊二日でも東京を離れると、判断力が上がる気がする。ゆらゆら帝国『3×3×3』『ミーのカー』、YMOのファースト。快調に作業が進んでいるときの定番のBGM。途中、なぜか急に桑田佳祐の『孤独の太陽』収録曲「太陽が消えた街」が聴きたくなり、数年ぶりに聴いてみる。変わった音像だと思うが、その理由はよく分からない。26時頃まで作業してすみやかに帰宅。27時頃就寝。

2月2日(金)曇り、晴れ

6時半頃起床。日帰りで静岡へ。

東京駅でスタッフと合流し、新幹線で三島駅まで。10時頃、仕事先に到着。12時過ぎまで仕事。大満足。昼食は海鮮丼。

14時、二つ目の仕事先に到着。16時頃まで仕事。こちらも大満足。東京に戻る。

18時半頃、会社に到着。体が動かず、その日中にやらなければならないことだけをやって帰ろうと思うが、結局23時半まで作業。すみやかに帰宅。

帰り道、仕事中にたまたま話題に挙がって思い出したRadiohead『The Bends』を聴く。切実でヒリヒリするが、細部までよく作られている。すばらしい。何となく流れでMy Bloody Valentine『Loveless』も聴く。美しすぎる轟音の塊にため息。

24時半頃帰宅。素麺を茹でて食べる。録画していた『映像の世紀バタフライエフェクト』の「石油 世界を動かした“血”の百年」を観る。端的でなかなか面白いが、どうしても眠く、15分ほど残して諦めて寝る。26時頃就寝。

2月3日(土)晴れ

9時頃に一度起き、布団の中でColin Blunstone『One Year』を聴きながら二度寝。再び起きて、急に聴きたくなった小沢健二の「彗星」を聴く。号泣。「真実はだんだんと勝利する 時間ちょっとかかってもね」というフレーズに弱いのだ。これほど前向きな歌を私は知らない。

12時頃にようやく起床。会社へ。家を出て、小沢健二の「天使たちのシーン」を聴きながら一駅分歩く。途中、銀座で明日彼女の父親に渡す予定のプレゼントを探す。入念に。

13時半頃、出社。一人で粛々と作業、仕事がはかどる。はずが、途中で先輩が現れ、強制的に雑談。一回休み。16時半頃、会社を出る。

17時から、飯田橋で父親の高校の同級生5人との飲み会。父親の命日近くに毎年行われており、今年で17年目。私は8年ほど前から参加している。有難い。昔は感慨もあったが、今や私を含め全員、父親が若くして亡くなった実感はなく、今回はついにこの中で誰が最初に死ぬか?という話で盛り上がっていた。そして必ず、高校時代に神津島に旅行に行った話と、『ビー・バップ・ハイスクール』と黒沢清の『乱』を観た日にポルノ映画を観に行った話。私にとっては遠い親戚のような感覚だ。

22時頃解散し、帰宅。恵方巻きを食べる。百貨店で並んで買った昨年より、サミットで買った今年の方が美味しい。彼女に感謝。彼女に任せておけば何事も間違いない。26時頃就寝。

2月4日(日)晴れ

9時頃起床。会社へ。途中、銀座で彼女の父親への誕生日プレゼントを買う。会社に着き、粛々と作業。

15時前に作業を切り上げて、彼女の父親の誕生日会へ。16時頃到着。出席者は彼女の父親、母親、兄、兄の彼女、妹に、我々二人。私は妹を除く全員が初対面だ。とにかく目立たないことを心がけた。父親がずっと話しており、皆に尊敬されている。世間の常識とは別の規範を家族が共有している。私の家族にはなかったことだ。21時頃解散。

帰宅して、一人でこの日記を書き進める。20年前の沖縄。17年間続く父親不在の同窓会。『こちらあみ子』の終盤、もうあみ子がすべてを忘れてしまっているところがたまらなく好きだ。悲しいことも喜びも、すべてを忘れることの残酷さ。『PERFECT DAYS』の平山の日常にも、そんな残酷さがある。すべてを忘れることも、トイレの清掃員にもなれない我々は、喜怒哀楽とともに生きていくしかない。天国と地獄が隣り合わせのこの世に、明日も日が昇るだろう。それはどうしようもないことなのだ。24時半頃就寝。

文・ウラモト(28歳/かに座/出版社勤務)

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