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リレー日記(2024年3月25日〜3月31日)文・ウラモト

バナナ倶楽部のメンバー4人が、1週間ずつ交代で日記を投稿します。今週の担当はウラモトです。ところでこの日記、ぼくは他の人のものを読むときに、自分はこの日なにをしていたかなと、カレンダーを一緒に振り返るのが好きです。

3月25日(月)曇り時々雨

10時半頃起床。最近の関心事は花見とフィリー・ソウル。花見は夜の上野公園に行きたい。フィリー・ソウルは、60年代後半から80年代前半頃に米フィラデルフィアを中心に盛り上がった黒人音楽のこと。きらびやかなストリングスやホーンに、洗練された雰囲気が特徴だ。『山下達郎のサンデー・ソングブック』で2週間前から特集されており、自分の中でもブームに。昨日が3週目で、昨夜一度聴いたが、通勤電車でもう一回聴いた。春はブラックミュージックの季節だ。Stylistics、Double Exposure、The Modulations。この歳になっても新たな感動を与えてくれて有難い。まだ28だが、自分が1歳の頃の母親と父親と同い年と思うと、そうか、と思う。

また、番組でかかった曲を自分のスマホで聴いていて気づいたが、たしかに達郎のラジオはApple Musicより音がいい。中音の魅力がある。達郎が最近、ビートルズの初期はモノラルが本道、と話していたのも思い出す。どれどれと、Apple Musicでモノラルとステレオを聴き比べようとしたが、ステレオしかなかった。勢いで、ビートルズのモノラル音源についてネットで調べる。1987年の初CD化では初期の4枚はモノラルが採用されたが、2009年のリマスターではすべてステレオが採用された。今Apple Musicで聴けるのもそのリマスターという訳。しかもモノラルとステレオではテイクが違うことがある。なるほど。2009年のリマスター時、桑田佳祐がラジオで聴き比べをして「Help!」や「I Should Have Known Better」のこれまでの音源との違いを話していたのを覚えている。なぜリマスターで(リミックスではないのに)テイクが変わることがあるんだろう、自分の勘違いだったのかなと長年ぼんやり思っていたが、そういうことだったのだ。こんな基本的なことも分からないまま、28歳になってしまった。

13時頃会社に着き、少し作業をして、社食へ。まだフィリー・ソウルのことを考えている。達郎のラジオのマスタリングの魅力は、リヴァーブをよく聴かせる点にもある。自分はこれまで特に音楽にリヴァーブを求めてこなかったが、6年くらいは『サンデー・ソングブック』を聴き続けてきて、毎日のように『OPUS』を聴いてきて、リヴァーブ耳が育ってきたのかもしれない。それから、達郎の美学とは全く異なるとはいえ、Men I Trustにもリヴァーブの美学があり、近年流行りのアンビエントなポップスにもリヴァーブの美学がある。リヴァーブで古今東西の音楽を聴く、反響音楽論というのは何か可能性があるのかも。と思ったところで、社食を食べ終わり、デスクに戻る。

16時から社内で打ち合わせ。手土産に文明堂のカステラを買う。打ち合わせの成果は十分。

18時頃に会社を出て、阿佐ヶ谷へ。知人が出るトークイベント。漫画の話。漫画をほとんど読んだことがないので、紹介される本のほとんどを読みたくなる。中でも気になった豊田徹也『アンダーカレント』をAmazonで購入。

22時半頃に店を出る。23時半頃帰宅。近所の公園で、先週はじめたなわとびダイエット。実はまだ2日目だが。跳んでいたら警官に職質された。未成年に見られたらしい。恥ずかしかったので、警官に逆質問。24歳。男性。警官は剣道か柔道を必ずやらなければならず、彼は剣道をやっている。なわとびがダイエットに効くかどうかは、わからないそうだ。26時頃就寝。

3月26日(火)雨

10時頃起床。近所のコメダ珈琲店で作業した後、リサーチで南町田へ。成果は十分。夕方、大雨の中、次の現場の柴崎へ。こちらも成果は十分。

夜、会社に戻って作業。途中、近所のラーメン屋で坦々麺。終電近くに会社を出る。作業中も帰り道もフィリー・ソウルを聴きながら。途中、ゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズ「Everybody Loves a Clown」「Count Me In」も聴く。やはりモノラルっぽい音の分厚い重なりが好きな曲。なわとびを跳んでから、26時頃就寝。

3月27日(水)晴れ

9時頃起床。近所のコメダ珈琲店で小倉トーストを食べながらぼんやり。11時頃に会社に着く。オンラインで少し大事な打ち合わせ。

13時から初めて話す社内の人と打ち合わせ。成果は十分。

15時頃、デニーズで昼食。シャカシャカポテト、和風おろしハンバーグ、ライス。かなりおいしい。

17時頃、電話で打ち合わせ。その後、粛々と作業。Amazonから『アンダーカレント』が届き、読みながら帰宅。かなり面白い。全部読んでしまいたいところを我慢して26時頃就寝。寝る前になわとび。

3月28日(木)曇りのち雨

10時頃起床。近所のコメダ珈琲店で、結局『アンダーカレント』の続きを読み、読了。★4.7。孤独と嘘がテーマの好きな話だった。母親にも読ませたい。漫画のモチーフとなったビル・エヴァンスとジム・ホールのアルバム『アンダーカレント』を聴いて余韻に浸りながら電車に乗る。

12時頃出社。社食で昼食。行こうと思っていた試写も諦めて作業。考えがうまくまとまらず、思いつきでららぽーと豊洲へ行き散歩。大した成果はない。17時頃会社に戻る。18時頃、一件打ち合わせ。今取り組んでいる仕事はもう時間がないのでみんな焦っている。

20時頃、一度会社を出て、会社の学生バイトの卒業飲み会へ。近所の中華料理屋。隣にいた女子がまだ20歳だというので、「20歳に戻りたい」と何度もぼやいた。21時半頃に終わり、会社に戻って作業。『爆笑問題カーボーイ』を聴きながら月末の精算。

日付が変わる頃、バイトリーダーの男子に呼ばれ、三次会に合流。やきとん屋。メガハイボール片手の学生6人に囲まれて、28歳ひとり、ジンジャーエール。皆垢抜けていて、落ち着いている。自分もこういう学生時代を過ごしたかった。会社の噂話、成人式の思い出、バンドマンと芸人がモテるのが気に入らない云々。ハツユッケ、さがりユッケが美味しい。

26時頃に切り上げて、カラオケへ。遠慮なく、「いとしのエリー」「SAY YES」。20歳の女子に誘われて、「三年目の浮気」をデュエット。勝手に入れた「丸の内サディスティック」を人に歌わせる。浮かれていて恥ずかしい春の夜。29時半頃帰宅。眠りにつく前、高校を卒業してからちょうど10年が経つことに気づいた。30時頃就寝。

3月29日(金)晴れ

正午頃起床。出社して、粛々と作業。社食で昼食。19時半頃に会社を出る。駅でサザンオールスターズ「この青い空、みどり」を何気なく聴いて泣きそうになる。春も夜明けも新しい時代も、誰にも平等に訪れる。

20時過ぎから、代々木上原で友人と夕食。ベトナム料理。近い業界の人が集まる会かと思っていたら、初対面だが全員大学の同期、男女半々で4人という穏やかな会だった。場が温まるに連れて、抽象的な話が多くなる。普段周囲に同じ大学出身の人が少ないので、久しぶりの感覚が嬉しい。集中力を鍛えたい、意思決定者を一人にしぼりたい、作業は身体性がある方が楽云々。オリ合宿に行きたい。人と自然にLINEを交換したい。つい遅くなり、タクシーで帰宅する春の夜。28時頃就寝。

3月30日(土)晴れ

12時頃起床。13時から、TOHOシネマズ日比谷で『オッペンハイマー』を観る。時系列が前後するので話がよく分からない。ノーランの映画を観る前に覚悟しておけという話だが。オッペンハイマーが大統領に会ったとき「私の手は血塗られているように感じます」と伝えるシーン。教科書で見たことのある台詞だった。たしかに大統領からしたら、ボタンを押したのは自分なのに、作っただけの科学者が何を言うか、生意気だ、と感じるだろう。

映画を観た後、日比谷公園を散歩。春の陽気がとにかく気持ちいい。中華料理屋で麻婆豆腐を食べて、会社へ。YouTubeで『【怪談つめあわせ18話】電話怪談~電話やメールにまつわる怪異【人気怪談師11人】』を聴きながら月末の精算。先月の日記と全く同じことをしていることに気づき苦笑。

22時頃会社を出て帰宅。『チャイルド・プレイ3』を観る。最近1作目も見直したが、やはり名作だ。27時頃就寝。

3月31日(日)晴れ

正午頃起床。会社へ。セブンイレブンでバターチキンカレーを買ってデスクで食べる。週末のうちに黙々と作業。

19時頃会社を出る。近所の焼き鳥屋で夕食。21時半頃、店を出る。ピチカート・ファイブを聴きながら電車の中でこの日記を書く。「春なのにデートもしないの」「今年の4月はまだ寒くて春が来てない」。最近『BOSSA NOVA 2001』というアルバムもよく聴く。勢いで小沢健二の「流れ星ビバップ」も聴いてしまう。「薫る風を切って公園を通る 汗をかき春の土を踏む」。この曲を聴いて渋谷を歩きながら大学入学を心待ちにし、小沢健二がテレフォンショッキングに出演し、いいともの最終回で爆笑問題とダウンタウンが共演した春から10年が経った。

24時半頃帰宅。なわとびをして、楽しみにしていた『山下達郎のサンデー・ソングブック』を聴きながら、日記を投稿。フィリー・ソウル特集も今日で最後だ。27時頃就寝予定。

文・ウラモト(28歳/かに座/出版社勤務)

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