明日はどっちだ!/山本小鉄子先生

生まれて初めて読んだボーイズラブ。

突如としてTwitterに現れたコミックシーモアの広告にその試し読みはあった。記憶にある人もいるだろう。
ツイ廃なので、冗談抜きで50ターンぐらいしたと思うが徐々に続きが気になり始め購入に至った。
その後1ヶ月ほどで4〜5巻まで大人買い。
この世に1人腐女子が誕生したわけだ。

なぜ試し読み広告の誘惑に負けてしまったのか?


noteというのは考察の深い人たちの集まりだと聞いているので、一応それっぽく書いてみる。

それまで、広告バナーから購入に至った経験は一度も無い。

ではなぜ「明日はどっちだ!」の広告内容が気になったのか。実は、よく覚えていない。しかし、

・顕がかっこいい
・話の進みが遅い
・コマ割りがちょうどいい感じ

後々読み進めていくうちに、このことが理由ではないかという気がしてきた。

顕は幼なじみである主人公「星」に小学生の頃から片想いし、高校生の5巻目でようやくカップルとなる。
いや、5巻て!!長い!
セックスシーンから始まる作品も多いBLというジャンルの中で、牛歩の如くじわじわと2人の距離が縮まっていくことは異例だ。学生時代に読んだ恋愛系少女漫画のカップルが、両片思いから気持ちを確かめ合いお付き合いに突入するまでのモダモダにキュンキュンする感覚に似ている。これが初心者の導入としては刺激が強すぎず読みやすかった。そして話が進むにつれほんのりエロあり。わたしが学生の頃にはティーンズコミックというワードが存在しなかったはずなので、これは新感覚だ。

山本先生の作品は全体的にコマ割りが小さすぎず大きすぎないので読みやすい。

最近の漫画は全体的にコマ割りが大きい。電子を意識してのことかも知れないが見開き使ってセリフなしのキスシーンひとつということもわりとある。
BLは660円〜900円弱(税込み)のものが主流だ。少年・少女漫画に比べると割高なので、1年待ってようやく出た最新刊がトータル1ページ3、4コマでセリフ少なめにサラサラっと終わってしまうといくら絵が上手くても損したような気持ちになることがある。
ちょうど目に優しい絵の大きさかつ得した気になるセリフの多さというのは、未だにわたしが試し読みから好みの作者に出会うための指標となっている。

そして、最も重要なのは「顕」をかっこよく見せる描き方だ。

顕は長身で喧嘩が強く、寡黙なのに女子にモテる。いくら生まれ持ったルックスが良くても、喧嘩っ早くて寡黙な同級生は現実世界では「ややこしい奴」として敬遠されるはずではないか?しかし顕はクラスメイトたちから恐れられつつも一目置かれているようだ。
実は顕は、読書好きで成績もそこそこ良い。文庫本を持ち歩き図書館に通う。不良のイメージと普段の姿にギャップがある。文武両道(?)ってやつだ。
キャラの描き方にもこだわりが見られる。
顕の髪には一切ツヤが描き込まれてないので硬毛に見える。おおよそ若者が行かなそうな老人が営む床屋に小学生の頃から通う描写がある。
制服の着こなしにもこだわりがある。まわりが全員半袖を着てる時期にひとり長袖を腕まくりしている。意図は分からない。とにかくファッションに自分なりのこだわりを持ち一途だがやりすぎてない、そこが硬派というか大人びて見える。

一巻目の学ランの描き方も気に入っている。
学ランが登場する漫画は今でもそこそこあるが、作家さんにより違いがあり面白い。
ただ、実際描くには難しそうなディテールだ。
印影のつけ方や胸囲の厚みなどの些細な違いで生地がペラペラに見えたり体型が貧相に見えたりする。
また、ボタンをどの程度開けてるかとか中にカッターシャツを着てるか、Tシャツだけなのかとかの描き分けがキャラの性格を左右させるようだ。
顕は胸囲にしっかり厚みがあり丈にダボ付きがなく、学校指定のダサバッグを持ち歩いている。喧嘩する時も上以外のボタンはきっちり閉めている。漂う「決してイキってるわけではなく、星を守るためなら喧嘩するのは致し方ない」感。

次男らしい要領の良さをみせつつも、だらしない親父に翻弄されて素行不良になったり、次々と面倒ごとに首を突っ込む星の尻に引かれてたりと色々と愛おしいキャラである。



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