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サイコロって面白いよ

認知度はあっても深くは知らない

 誰もが知っているサイコロ。
 お正月にすごろく遊びで使ったり、ギャンブルゲームで使ったり、あるいは確率の問題に出てきたり。誰もが一度はサイコロを見たり使ったりしたことがあって、容易に脳内でその形を思い浮かべることができるだろう。

 ――立方体のフォルムで。
 ――それぞれの面に点が打ってあって。
 ――1つだけ打ってある点は赤い。

 思い浮かべるサイコロといえばこんなものだろう(見出しの画像にもあるのに別のサイコロを思い浮かべたなんて言うやつはかなり捻くれてる)。
 しかし、皆さんの思い浮かべたサイコロはオーソドックスであっても全てではない。ということを本記事で語っていきたい。

 「知ってた」って思った人は今すぐ鏡を見てごらんなさい。きっと嫌な笑顔を浮かべてるはず。

ボドゲブームの中でも日陰者……?

 近年、遊戯スペースを開放して家族や友人、たまたま同席した人とボードゲーム(アナログゲーム、テーブルゲーム)が楽しめる「ボドゲカフェ」が日本全国で増えていて、今やボドゲブームはとどまるところを知らない。
 インターネット上では動画投稿サイトにTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)を扱った動画が多数投稿されており、人気コンテンツとなっている。
 さて、そんなボードゲームで欠かせないアイテムのひとつがサイコロ(ダイス)なのだが、「ボドゲ」が一般化しつつあるにも関わらずサイコロを掘り下げたり見直そうとする流れがまったくないのが現状なのだ。
 普段からよくボドゲを遊ぶ人にこそ、使うアイテムにこだわってより一層楽しいボドゲライフを送ってもらいたい。

面数が様々なサイコロ

 まず初めに、サイコロは六面体以外にもあるということを知ってもらいたい。

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 4面、8面、10面、12面、20面のサイコロ。どれもTRPGを嗜むプレイヤーにはおなじみのサイコロだ。
 なぜ、何種類ものサイコロがあるのか――それは面数分の一の確率を求めるために必要だったからだ。
 6面のサイコロでは1/6の確率しか求めることはできないので、他の確率で数値を求めたければ対応した面数のサイコロが必要になる。
 また、12面のサイコロを例にすれば、12通りの数字を出すことができる。この数字をもとに12通りの指示や効果を出すことができるので、約数だからといって4面サイコロで必ずしも代用が効くわけではない。

 先ほどの画像でサイコロの面数が変わると形状も大きく変化することに気付く。
 サイコロは乱数発生装置である。ランダムなはずの確立に偏りがあってはいけない。そのため、サイコロの各面はできるだけ同じ形状で構成されているのが望ましい。事実、画像の4面、6面、8面、12面、20面のサイコロはすべてが同一の正多角形でできている正多面体である。
 これまでにない数値(確率、面数)のサイコロを作るにはまず数学的あるいは結晶学的なアプローチから設計をして、量産のために複雑怪奇な形状の型を作らなくてはならない。
 ここで面白いのが答えがひとつではないこと。
 新たにN面体の立体を作ってもいいし、元ある多面体をベースにして作ることもできるのだ。

 ここに24面体のサイコロが2つある。
 右側は凧型二十四面体(trapezohedron)と呼ばれる凧型の面だけで構成される多面体。左側は立方体をベースに、面の中心を持ち上げて4分割したような形状をしていて、四方六面体という。

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 もう一つ、統計用乱数賽と呼ばれるサイコロを紹介する。
 これは正二十面体に1から10(0から9)の数字を2つずつ割り振ったサイコロで、10面のサイコロと同じ使い方をする。
 曰く、正多面体で作ったほうが出目の偏りが抑えられると考えられているそうだ。

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 同じ「面数」のサイコロであっても、面の形や見た目の違う何通りもの辿り付き方があるのだ。
 多面体のサイコロを見る際には、それぞれのサイコロをわざわざかたちにする工夫や努力を想像して楽しんでもらいたい。

絵柄・デザインを楽しむ

 先ほどの項で紹介したサイコロのうち、6面サイコロを除くサイコロの出目の数字が点(ピップ/スポット/ドット)ではなく算用数字が刻印されていたことにお気づきだろうか。
 これは単純に面数が増えた際の読みにくさとピプスを打ち込むスペースが足りないことから算用数字に取って代わられているのだが、出目の表現に決まりはないのだという気付きも与えてくれる。

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(各国のことばや文字で表記されたものでは上下が逆転すると読みづらかったり、そもそも馴染みのない文字では正位置でも理解できない等の問題もあるため、直感的に理解できるピプスにも利点はある。)

 サイコロには数字や文字だけではなく、絵が描かれたものも存在する。
 特定のゲーム専用のサイコロでは、ゲームで使用する特殊な指示や絵柄が出目の代わりに描かれていることもあるが、通常のサイコロとして使用できるデザイン性や鑑賞性を求めたサイコロを「デザインダイス」と呼ぶ

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 画像は「1」の面に対応する場所に絵柄が入った「1面カスタム」と呼ばれる種類のサイコロで、同人サイコロ(商業ではない個人やサークルで創作しているサイコロ)の主流だ。
 キャラクターや動植物など絵柄が実に多様で、自分の好きなものをゲームアイテムとして使うことができる。

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 画像のサイコロはすべての面に絵柄の入った「フルカスタム」と呼ばれるサイコロで、より自由度の高いデザインが特徴だ。
 桜の花の数がピプスと対応していたり、葉の数が出目を表していて最後には薔薇が咲くストーリー性のあるものだったり、出目の×印が宝のありかを示す地図になっていたり……。
 デザイナーの描きたいものや発想がより反映されやすいサイコロになっている。
 特に一番右側のサイコロはイラストをそのままプリントする製法が使われていて、正方形のキャンバスに見立てて描いたものがカラフルにサイコロを作れるようになっている。

 サイコロには出目の表し方やデザインに相当なバリエーションがあり、これらを見比べて眺めたり、気分やゲームの雰囲気に合わせて使い分けたりして楽しめるほど鑑賞性、コレクション性が非常に高い。

サイコロの奥深さ

 サイコロは紀元前から存在していた。初めは動物の骨や石を削って占いの道具として使われていたものがプラスティック製の遊戯用に素材や使途が変わっても、その形状や乱数発生装置としての役目は現在に至るまでほとんど変化していない。

 これ以上なく単純な機能と構造のままでいるのがサイコロなのだ。
 そして様々なアイディアや技術力を注ぎ込めるのもまたサイコロなのだ。

 先述の通り、動物の骨から樹脂製品に技術の発展によってサイコロは素材を作られるようになったし、さらに技術が発達すれば、より精度の高いサイコロを作ったり、加工の難しい素材を材料にしたり、緻密なデザインを施すことができるようになる。
 近年、3Dプリンターの登場によって今まで作ることのできなかった形状のサイコロを生み出すことができるようになる革命のような事件が起きている。
 技術、素材、発想、デザイン……あらゆるものをサイコロという数cm足らずの物体にいくらでも詰め込むことができる。これが私の考えるサイコロの面白さだ。

紹介したサイコロ

・サイコロ専門店ドラタコ/葉っぱダイス
・サイコロ専門店ドラタコ/桜ダイス
・珠工房/桜モチーフ
・裏庭きゅーぶ/薔薇
・ぽて工房/宝の地図ダイス

動画紹介


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