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プロジェクト・アキザキ

インターネット上で「人」は曖昧な存在になるという話。

虚像人間

 最近では小学校ですでにインターネットリテラシーについて学ぶそうだ。ネット上でのいじめや誹謗中傷のほかに「なりすまし」をする悪い人に気を付けましょう、といったことを教えられるそうである。
 今回は「なりすまし」をテーマとする。

匿名性
 SNSや掲示板で知り合った相手が同学年の女の子だと思っていたら実際は大人の男性だった、というのが「なりすまし」の典型として語られるところであろう。(ジェンダーバイアスの問題は置いておいて。)
 本人とは別の性別や属性を持つ人格として振舞うことができるのがインターネットの匿名性という特性で(あり、危険性でも)ある。

虚像人間
 多くの人は、一人の生身の人間がネット上で別の一人の人間として振舞う、現実とネットで一対一の関係をとる状態を考えている。しかし実際には一対多、多対一、多対多、さらにはAI(ロボット)がネット上で活動する無対Nも存在している。

 「画面の向こうにも自分と同じように生身の人間がいる」とよく言われるが、はたして我々はこれらのアカウント群を正しく見極められているだろうか。
 2つのアカウントを見たとき、画面の向こうには2人の人間がいると考えるだろう。1人の人間がアカウントを2つ持っているだけかもしれないし、2人以上の人間が共用のアカウントを利用しているのかもしれない。あるいはアカウントが2つともBOTなのかもしれない。書き込み・活動をするアカウントが画面の向こうのたった一人の生身の人間に対応しているという保証はない。
 だからといって、すべてを疑うのはコストが膨大であるし、様々な不都合を生むことだろう。
 便宜上我々は、一つのアカウントに生身の人間が一人いると考えていくしかなく、そこにこそプロジェクト・アキザキを進める余地が生まれるのだ。

プロジェクト・アキザキ

――プロジェクト・アキザキ
 なんということはなく、ただインターネット上に別のアカウントができるだけのことである。
 ただし、いわゆる「別垢」「複垢」と呼ばれるものとは違うのが、全くの別人として振舞う人格を作るということだ。現実世界に新たなアカウントの持ち主となる架空の人間をも作り出すのだ。

 ネット上で「アキザキ」と名乗る「ネットユーザー」を作る。

 前述の通り、こうして生まれたアカウントを周囲のインターネットユーザーたちは一人の独立した存在としてみなすほかなく、「なりすまし」を疑う場合すべてのアカウントが疑いの対象となる。「本物」も「偽物」も同列に偽物ではないかと疑われたとき、アキザキは一方で「本物」としても存在するようになるのだ。
 そうでなくとも、アキザキが「本物」として振舞えば関わるネットユーザー達もアキザキを「本物」とみなして接することになる。

 物事が信憑性を獲得するにはいくつもの「証言」が必要であろう。
 もし、この記事を読んで興味を抱いたネットユーザーがいればぜひともアキザキと交流をしていただきたい。その場にアキザキがいたテイでオフ会の感想を語ってもいいし、アキザキを騙って活動してもよい。こうした積み上げによってアキザキはより「本物」として認められるようになっていく。

 現実世界の私は私でありアキザキでもある。
 最終的には「本物」の私の匿名性の補強が叶うのである。

アキザキの紹介

 さいごに、今回プロジェクト・アキザキと題して作成したものを紹介する。

アキザキ
・植物・園芸に関心を持つTwitterとGreenSnapのネットアカウントであり、関東在住のネットユーザーの女性である。
・催事やオフ会など比較的遠方のイベントにも参加することがあるが、積極的に発言をするほうではなく、他の参加者が感想を振り返った際にたまに名前が上がる程度である。いわゆる「レポ漫画」では似顔絵が使用される。


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