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うちよそ(リブラの場合)

「こんにちはー!早速だけどイワっち貰いに来ましたー!」
急に現れたテオと瓜二つの子、リブラが喫茶店に来た。
「え…?!」
「お帰り願おうかしら!」
すかさず私が前へ出る。どいつもこいつも男の子を狙って楽しいかしら!
シチュエーション的には良いけど、それは妄想での話よ。
「え~…マスターがちゃんと交渉しなさいって…」
「やかましいわよ。テオの弟なら下がりなさい」
私は構える。全くどいつもこいつも総受け扱いして!
「やだよ!トムさん今、魔力空っぽなんだって!」
「だったらお店で魔力を与えるアイテムでも買いなさいよ!」
「あ、あのー…」
イワタさんが指を示せば、先輩の姿が。
しかもリブラの真後ろ…やるわね先輩。
「うちの従業員に何か?」
現れた先輩に驚いちゃってるじゃない。笑顔が第一のタシトコ喫茶店。でもその店主が完全に笑ってない。むしろ威圧がすごいわ。
「いや~~!なんでもないでーす!」
引き攣った笑顔で返すリブラだけど、先輩の手がリブラの肩を鷲掴みにしていたわ。もう逃げれないわね。ご愁傷さまだわ。
「何でもないならどうして用もなくウチに来るのでしょう?どうせファントムの命令でしょう。サッサと出て行きなさい♪」
その後先輩はリブラを強制的に外へ出し、帰らせていった。
うーん…ここまで来ると、いつ誘拐とか挙句の果てに喫茶店を破壊とかされるか分からないわね。
でも自分の身は自分で守って欲しいけど…相手がだいたい強いのばっかりよね。
そこが厄介ではあるのだけれど。

「ふう…全く。二人とも大丈夫ですか?」
私とイワタさんを交互に見ながら言った。
「俺は大丈夫です。ベルさんは?」
イワタさんが私を見る。
「私はヘーキよ。それにしてもテオの紛い者が敵だと厄介ね。はーあ…次はヴァンスさんかしら?」
「ああ。あの人ってそういう名前だったんですね…」
あはは、と苦笑いを浮かべて名前を知ったみたい。悪魔なのにどうして狙うのか不明すぎるわ。妄想には最適なのに、リアルにされるとダメね。
「とにかくこれは移転を考えてもいいかもしれませんね」
「えぇ!?そんな!悪いですよ!わざわざそこまでしなくても…」
「私は構わないわ。だって大事なスタッフを辞めさせていくなんて無理よ」
「流石はベルですね!俺の大事な姫であるユウを手放してまで、喫茶店を運営していく気はありませんから」
自信満々に言ってるけど姫じゃなくて王子ではないの?まあ先輩って性別不問の考えたを持ってるからおかしいワケじゃないのよね。
「ユウさん…懐かしいわね。ってもしかしてイワタさんのこと?」
「ああ、恥ずかしながら…。名前を聞かれたので、そこからあだ名をつけられたんです」
「そうなのね。でも私もテオもみんな愛称で呼ばれてるし大丈夫ね」
イワタさんはうん、とうなずいた。

話し合った結果、郊外なのは変わらず、別の街で運営していくことにした。
後でクシマさんとテオにも言っておかなきゃね。
移転の原因となったリブラと全く同じ顔なのが皮肉だけれど、仕方ないと思ったわ。

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