無題
――轟く戦火。
目の前には自身が一番知っている悪魔がいた。
――戦争。ダニエルさんのいたフィーラという国には500年前に大規模な戦争があり、神族と魔族が人間にとっては長い間、戦をしたという。
彼――"悪魔クロウ"はその魔族側でも前線で戦っていた…はずだが。
彼は崖にたどり着いた。下では人々…否、ヒトの形をした人外が戦っていた。
「私もこんな争いはしたくないのです」
と俺に言った。いや正確には独り言だと思う。いつもとは違う口調だ。
「争いを始めたのは誰なのでしょう?」
ステッキを地面につけて眺めている。
「もう嫌なんです。何もかも…」
シルクハットを被り直した。斜め後ろから見ているので顔はしっかりわかるわけじゃない。
この人、本当に変態なんだろうかと思ってしまうくらいだ。
『だから私が楽しまなきゃいけないんだよね』
いつものクロウさんだった。
そして誰かに気づいて振り向く。もちろん俺じゃない。
「君か…今更どうしたっていうのさ?」
白髪の誰か。俺より少し低くくて、串間と似た青い瞳の人だ。
何やら気に食わないような顔をしていたようだ。
……そうして夢は途切れた。【熱】を取ってもらった後の話だった。
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