タイの小さな島のこと。

縁があって辿り着いたタイの小さな島のバンガロー&レストラン。
港から途中までは、車でいけるけれど、
そこから先は徒歩でしか無理。
(島民や、よほど自信のあるひとはバイクもあり。)
くねくねと、道なき道を登ったり、降りたり、
また登ったりして、やっとたどりついたその場所は、島の端。どんづまりにある。

真っ青なバンガローに、一面に花々。
夜には天の川がみえた。

電気はなく、水は雨水をためる。
もちろんでんわもない。
電気がないから、冷蔵庫もない。
都会暮らしだった私には、
なにもかもが、ワクワクの連続だった。
と同時に、水の有難さをとても感じたものだった。

例えば、パスタを茹でるときに
あんなに大量の水を使うとか、ありえない!

洗濯も慎重に。

夜の数時間だけ、発電機を使った。
バンガローに泊まっているひとたちが、レストランにごはんを食べにきたり、
憩いに来たりするから。
料理長はおかあさん。
私はオーダーをとったり、運んだり、下ごしらえしたりのお手伝い。

電気をつけると、
電球のまわりに虫が集まる。

虫が集まると、
やもりがやってくる。

夜、羽虫が大量に現れたら、
天気が大きく変わる知らせ。

色んな自然の知らせをおぼえた。

水シャワーを浴びると、
たまに、小魚が出てきた。

夜。
宿泊客の食事のピークがすぎて、
レストランが静かになったら、
私たちの時間。

おとうさんはタイの演歌にラジオのチャンネルをあわせ、マラゴー(パパイヤ)をとってきて剥いてくれるのが決まりだった。

お母さんはあたたかいジャスミン茶をいれてくれる。
そのほかに、クッキーやらなんやら持ってきて、
みんなでトランプゲームの時間。

目の前は海。
遠くにイカ釣り船。
空には天の川。
BGMはタイ演歌。

最高の時間だったな。
22時くらいになると、
おとうさんが、
ランタンに灯りをともして渡してくれるから、
そこで島での1日が終わり。
転ばないように、夜道に気をつけながら、
バンガローに帰る。

イカ釣り船を眺めながら、歯磨き。
蚊帳に守られたベッドに潜り込んで、就寝。
(蚊帳はしっかり閉じておかないと、危険。
信じられないくらい大きなやもりや、ナナフシ、ときにムカデ、噛まれると腫れ上がる蟻など、たくさんのいきものがいたからです。)

東京生まれで田舎がなく、
早くに両親と離別した私にはとって、ここはまさに里帰りの場所でした。

最近ちょっと、この電気も電話もない暮らしを良く思い出します。
もちろん常にその生活は無理だけど、
夏休みとか、そんな暮らしできたらいいなあ、なんて、タイの島暮らしに思いを馳せた2019年の夏でした。

写真は毎日目の前にあった海。

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