ブレイクスルー

昔、葉山に住んでいた時に、
鎌倉に、大好きだったおばんざい屋さんがありました。

カウンターだけのお店で、
おもてには"関西風うどん 今小路"という看板だけ。

お客さんはみんな常連さんで、
みなさんそれぞれ"それなりに"
すてきで、
1冊の小説になりそうなお店でした。

カウンターには、季節の野菜などを使ったおばんざいが並び、定食にすると、つやつやに炊かれたお米、丁寧に出汁をとったお味噌汁、何十年もお店を見守ってきた糠床でつけられた、おいしいぬか漬けが出てくるのです。

お店を仕切る女性の名前は、じゅんこさん
じゅんこさんは、凛としたステキな、それでいてとてもチャーミングな女性です。

定番メニューはどれをとっても、すばらしくおいしい。
豚肉の生姜焼き。焼き鮭。なすのはさみ揚げ。
焼きおにぎり、etc...
夏はゴーヤーチャンプルー。
きんぴらごぼうもピリピリ蒟蒻もなますも
とにかく全てが美味しかったのです。
(なかでも、ピリピリ蒟蒻は大好物でした。)

春にはお豆ごはんが登場したり、
赤紫蘇が出回る時期には、ゆかりごはん。
夏は立派なゴーヤーがカウンターを陣取り、
秋になると艶々の新米。
冬には豚汁。

お店では、いつもかすかな音量で
AMラジオが流れていました。

じゅんこさんは、たぶん70代くらいだったとおもいます。

じゅんこさんの作り出すもののおいしさは、
まさに彼女の歴史そのものでした。
ずっと作り続けてきたからこその、家庭料理だけれど、それをこえた味わい。しかし、決して奇をてらったり、ウケを狙ったりしていない味。
食べ終わったあとには、まるで温泉に浸かったあとみたいに、からだもココロもポカポカになりました。

仕事で疲労困憊しても
じゅんこさんのごはんを食べると、
夜空を見上げて、
ああ、あしたも頑張ろう♡と思えたのでした。

それからというもの、私の最終目標はじゅんこさんになったのでした。
どこかの洒落たカフェではなくて、
鎌倉の小さな路地にあった今小路。
私を支えてくれた味と、お人柄。

で、本題ですが、
マリデリはいま思うところありまして、
週1くらいの営業になっています。
もともと家が大好きな私は、
家でお料理教室をしたり、発送作業をしたりしながら、今という時間を味わっています。

タイトルにブレイクスルーとありますが、
じつは、そろそろブッダボウル以外の事もしたくなって来たんです。
なので、今まで通りブッダボウルを出す週。
そしておばんざいプレートを出す週。
といったかんじで、やってみたいなと思っているんです。

そろそろじゅんこさんへの思いを、カタチにする時がやって来たみたいなんです。

そんなわけで、あらたな試み、
どうぞよろしくお願い致します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?