初めての家庭訪問
化猫は身体が弱く、発熱等で受験がままならず小学校は公立に進んだ。
小学校の入学式で、校長先生が毎日予習復習をして宿題をして、と言うのを真に受けてその通りにしていたところ、とにかくトラブルばかりが起きるのである。
化猫が小学生らしくない小学生で、女子らしくない女子だったというところも大きいかもしれない。根っからの小食で食べることには全く楽しみがなく、給食は味が濃くて量が多いばかりで苦痛ばかり、口は達者で疑問があればすぐに質問する。単にルールだからと返されると、理屈がなってないと食い下がる。まぁ、子どもの本分を果たさない生意気な子どもに見えたろうな。
言われた通り、もらって帰った教科書を開いて、その日のうちに予習に取り掛かった……その日のうちに読み終えてしまった。
後日、ドリルをもらって帰った……宿題の範囲だけではすぐに終わるので余分にやっていったら、「宿題とは出されただけをやるものだ」と言われ叱られた。
そんな少しの量でいいなら数分で済むからと、休み時間にしあげたら「宿題は家でやるものだ」と叱られた。
とにかく、訳がわからない。
そんなこんなで、初めての家庭訪問の日が来た。おそらく、5月か。
親には、大人の話なので絶対に聞かないように、と言いつけられた。
しかし、学校で小1なりに苦労している化猫としては、先生がどう思ってるのか気になってしょうがない。こっそり聞いた・・・
結論は、「聞くんじゃなかった」だった。
「家で勉強を教えないでください」
それが担任が親に発した言葉だった。
今思い出しても悔しくて泣けてくる。
入学式に言われた通り、予習復習してただけなのに、家で親に勉強を仕込まれて、学校の授業を乱す存在だと思われていたということだ。
大人ってなんて勝手なんだろう・・・
しかし、
この悲しさや悔しさを親に言うと、盗み聞きしたことがバレてしまう。
だから、親も化猫がこの話を聞いていたことを今も知らない。
で、思った。
「そうか、学校は勉強しにいくところじゃないんだ。子どもっぽくしておくところなんだ。毎日、遊んでる方が先生には喜ばれるんだ」
……んー、なんてかわいくない1年生だ。
そこからは、まじめに勉強しなくなった。勉強しなくても、一部の苦手教科以外はなんの苦もなく点数が取れるからだ。同じく授業が退屈で仕方がない「落ちこぼれ」とウマが合うようになった。いわゆる、落ちこぼれと吹きこぼれのタッグだ。
他の授業を必要としていた同級生には申し訳ないことをしたなとは思う。
しかし、大人の本音と建前を感じながら退屈で膨大な時間を毎日やり過ごすって、とにかく苦痛なんだよ。大人の本音と建前に対する疑問を共有できる仲間もいない。唯一、先生が苦手だったり嫌いだったりする同級生とは、なんとなく通じ合える。
そうは言っても小学生。はじめはまだ1年生。
なかなか頭で理解していることと、現実との折り合いをつけていくのは難しく、衝突も誤解されることも多かった。
周りで見ていた人は化猫のことをどう思っていたのかわからないが、化猫にとってはこんな感じのことが本当のところだ。
幸か不幸か、化猫んちに来た子どもらは、学業に関してどれも吹きこぼれるほどのものは持ち合わせずに生まれてきたようだ。通知表を見てびっくりするばかりである。こんなにも丸印の位置はガタガタするものなのか……化猫の通知表はたまに生活面で「がんばろう」が付くのみで、あとは「よくできます」だった。わが子を見ていて、化猫が小学生の頃に見ていた風景は、他の同級生とはあまりにも違った世界だったのかもしれないと思うようになり始めている。そんなわが子も、化猫ほどではないけれども、世の中の平均値からは少しはみ出ているものばかりのようではあるのだが・・・
化猫もアラフィフになってようやく、こんなことを文章にして公開してみる気になった。
こういうのを自慢と捉える世間の人は沢山いると思うが、そういうつもりで書いているのではない。そういうつもりだったら、もっと若い頃に自慢気に吹聴してブイブイと生きて来れたと思う。
正規分布の端っこで生きることには、その人にしかわからない淋しさや虚しさがあると知っていただけるとありがたい。
そして・・・
小学校生活がこんな形で始まったおかげで、
毎日勉強する、という習慣が身に付かないままに大人になった。
スタートって大切だね。残念。
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