見出し画像

まいにちグライム/230619

まえがき

本日は完全なおふざけ回です。

『グライム国家、日本』 著・TRK

2140年、日本は突如として現れた、グライムを愛してやまないエスキモー星人に侵略され、完全な統治国家となっていた。

エスキモー星人は日本の根幹からシステムを覆し、国民だけでなくその生活基盤までもグライムに塗り替えたのであった。

例えば通貨。もうかれこれ150年以上使用されていた『円』は廃止され、『リディム』を発行開始。
1,000リディム紙幣はKano、5,000リディム紙幣はDizzee Rascal、10,000リディム紙幣はWileyの肖像が印刷され、さらに140リディムとしてD Double Eの紙幣も発行されている。

通貨だけでなくインフラも変えられた。
蛇口を捻れば本当に処理されているのか怪しいやや茶色がかった『グライムウォーター』が出る。
発電環境は従来の火力・風力・原子力はすべて稼働を止め、MCたちが狭い小部屋に集められ、マイクに向かってスピットする熱量で電力が生まれる。

住環境はまさに改悪、既存の戸建て住宅や分譲マンションはすべて取り壊され、同じ形の団地が無数に建てられ、住民はそこへの移住を余儀なくされた。

支配されてからは娯楽などまるでない。
24時間365日、テレビをつければその週のグライム週間チャートとグライムアーティストのドキュメンタリーが延々と放送されている。
メディアの中でもラジオは特に酷く、放送権を取得しなくてもラジオ放送を個人法人問わず行える『パイレーツラジオ法』が可決され、視聴しているとほぼ必ずジャミングが入りDJセットの放送が割り込みに次ぐ割り込みで流れまさに混沌の状態。

「『パイレーツラジオ法』が可決された」と言ったが、政治体制も大きく変わった。
国会議員の中から内閣総理大臣が指名される仕組自体は変わっていないが、議員の選出方法がグライム式になっている。
『ジャッジメント・クラッシュ』と呼ばれており、トーナメント形式で、2人1組で1人=1インストでお互いを罵り合い、点数の高い方が勝利、結果的にトーナメントを制した者が順に議席を埋めていく。
もちろんこの議席は据え置きではなく、1ヶ月に1度この『ジャッジメント・クラッシュ』が国会で開かれ、その都度議員が変わる。

国の大きな枠組みを変えただけではエスキモー星人は満足しなかった。
我々国民1人1人の意識も強制的に変えつつあるのだ。
まず、歩く速度はBPM換算で140ちょうどを超えてはならないし、逆に下回ってもいけない。
また、屋外に出る時は病気等の特別な理由がない限りはストレートキャップの着用が義務付けられている。
他にも生活レベルの法律が色々制定されているが、違反が見つかった場合は『T』と呼ばれる治安部隊が家に押し入り、家財を蹴ったり投げたりして荒らされる。

ところで、
なぜ、エスキモー星人は日本に現れたのか。
なぜ、グライムをこのような形で根付かせようとするのか。

話は2023に遡る___。
エスキモー星人に侵略される前の日本では、
これまた別の惑星から来たダッピー星人によってドリルという音楽の視聴が強制されていた。
犯罪を匂わせるヴァイオレンスな歌詞。
蔓延するドラッグ。
そして鼓膜を潰すような重い低音。
国民たちは訳も分からずこの音楽と、攻撃性の高い文化に感化され、日本はほとんど壊滅的な状態まで成り下がっていた。
それを、遥か何億光年離れた惑星から観察して憂いていたのがエスキモー星人だったのだ。

エスキモー星人は恍惚の表情を浮かべている。
日本という本当に多種多様な文化が根ざすこの土地の人間が全員、愛するグライムを行っているこの環境。
侵略して数年ですべてを変えた。
すべてがグライムに変わった___。


そして今、日本を侵略して笑みを浮かべているエスキモー星人を、別の惑星から、怒りの眼差しで観察している者がいる。




ダブ星人だ_____。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?