イラストエッセイ

リシャール・コラス氏という人物をご存知でしょうか? 
この名を聞いてピンときた貴方は相当なセレブかも知れません。 
恥ずかしながら、僕も今日始めてリシャール氏の事をテレビで知った。 
フランス出身の彼は、大の日本びいきらしく、流暢な日本語でインタビュアーの質問に丁寧に答えていた。品格が漂う、その紳士こそ、低迷の続く日本経済界をよそ目に快進撃を続ける「シャネル」の日本法人代表だ。 

正直、僕はシャネルだのジバンシーなどにはあまり関心はなかった。むしろ「つんく」の阿呆なセンスや、シャネラーと呼ばれていたご夫人達の品の無さから、「シャネル=ブランドバカ」という偏見も持っていた。 

しかし、リシャール・コラス氏のインタビューを聞いている5分間の間にその考えは180度変わった。シャネルというブランドは唯の飾りではなく、製品への責任の証明であり、品質管理はもちろんの事、「職人」あってのシャネルであると言うのだ。 

職人を大事にするという姿勢は創業者ガブリエル(ココ)・シャネルの頃からの方針でもあり、そういう体質が今でもシャネルを支えているそうである。 

リシャール氏は銀座の本社ビルを建築時には地下足袋を履き、ヘルメットを被って、現場のとび職人達の元を訪問し、労ったそうだ。また、完成直前には工事関係者全員の名前(交通整理を担当したアルバイトまで含め)2,500人の名前が入った碑をビルの片隅に建立した。 

粋な事をしてくれるものだ。 
モノづくりをする人間にとって、「オレがこれ作ったんだ」と言える事はこの上ない誇りであり、名誉である。 

職人達はこういう人間の元でなら、最高の結果を残そうと努力するだろう。そうした、結果が今のシャネルのブランド力に繋がっているのではないだろうか。 

シャネルは間違いなく品格の備わったブランドであるような気がする。リシャール氏は番組の中で「お客様全てがセレブです。」と語っていたが、不正と裏工作の横行する日本人の何人が、そのような品格を持ち合わせているだろうか。

2006年11月16日記

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