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ZETA最年少のSugarZ3roは今日も成長し続ける 世界に挑む麒麟児、鍛錬に余念無し

「同じミスは二度するな」

冷静沈着で駆け引きの巧さが光るSugarZ3ro。彼を彼たらしめたのは、ZETA DIVISION(以下、ZETA)の前に所属していたNortheption時代の掟だった。同じシチュエーションでのミスは繰り返さない。必ず反省して血肉とする。

トライ、エラー、修正。
トライ、エラー、修正。

ひたすらに地力を上げていく日々。困難を極めたが、何よりも楽しい時間だった。

気付けば彼は、国内最強のアストラ使いとなっていた。

ゲームと共に成長した思春期

中学生の頃のSugarZ3roはいたって平凡だった。運動も得意ではないし、勉強も人並み。「ひとりっ子はわがまま」と言われることもあったが、協調性のある子だったと自負している。

多くの中学生がゲームをプレイするように、彼もまたゲームに触れるようになった。最初にプレイしたのは当時流行っていたFPSゲームで、彼自身の性格に合っていたのかすぐに熱中していった。

「ただ、当時は顔の見えない対戦相手が少し怖かったです」

オンラインで出会った「顔の見えない誰か」と会話をすることはなかった。ただ1人でゲームをプレイしていた。

ひたすらにゲームを楽しみ続ける日々。着々と腕前は上達していった。何年か経ったとき、ゲーム内でも友達ができた。1人で遊ぶことは少なくなり、友達と遊ぶ日々が続いた。少しずつ友達の数も増えていった。

友達が増えるにつれ自然とチームで活動するようになり、競技シーンにも興味を持ち始める。周囲に強いプレイヤーも現れ、置いていかれないように練習も重ねた。友達とは、一緒に大会に出ることもあった。

いつの間にか、顔の見えない相手に対する恐れは消えていた。「チームゲーム」の魅力にすっかりハマってしまったのだ。

高校生になってからは学校での過ごし方も変化が訪れた。ゲームと学校生活の両立を考えなくてはならない。

もしゲームに没頭し続けたらどうなるか?

成績を落とせば、高校生活や大学受験で自分の首を絞めることになるだろう。受験のために長期間ゲームをやめてしまう人も珍しくない。だがSugarZ3roにそんな選択はなかった。

ゲームをやめる必要もないくらい、成績を上げればいい。ゲームを本気で続けたいからこそ、高校での勉学にも励むことにした。いつしか同級生からは「大人っぽい」と言われるようにもなった。年上のゲーム仲間に囲まれていたからかもしれない。

趣味と学業の両立を模索する日々。ゲーマーとして強くなるごとに、高校生としても成長していった。

3年間努力し続け、無事大学に入学。そして『VALORANT』に出会った。

彼の才能が大きく開花し、人生も大きく変わることになる。日本最強のアストラ使い、その萌芽である。

同じミスはしない 開花する若き才能

「昔の僕は積極的に前に出ていくタイプで、あえて例えるならDepみたいな感じでした」

SugarZ3roは元々、撃ち合いを積極的に仕掛け、無理を通しながら戦線を押し上げるデュエリストタイプのプレイヤーだった。彼のプレイスタイルが変わったのはNortheption時代だ。旧友で、当時Northeptionのコーチを務めていたVorzに誘われて加入した初めてのプロチームだ。

NortheptionではSugarZ3roはコントローラーを務めた。コントローラーとしての経験は浅かったものの、新しく登場したアストラをいたく気に入り、来る日も来る日も研究と練習を重ね続けた。

その過程で自然と気付くことがあった。確かにデュエリストは積極的な動きが強い。だがコントローラーは違う。アストラにはアストラの最適解がある。

マップの全てを掌握するかのような強力無比なアビリティの数々は、アストラの重要度を物語っている。チーム全体のサポートを行い、最後まで生き残るように立ち回った方が強い。そのことに気付いた。

新しく学ぶべきことは沢山あった。相手との駆け引き、カバーの質、生存率。アストラを突き詰めていく内に、自然とプレイスタイルは変化した。SugarZ3roの戦い方は、前よりもずっと強か(したたか)になっていった。

物怖じしない最年少

それでもNortheptionは、2021年10月国際大会への切符を惜しくも逃した。あまりにも悔しい敗戦。しかし負けが彼を腐らせることはなかった。

「まずはフィジカル(撃ち合いの強さ)。ここを強くしないとダメだと思いました」

撃ち合いには自信があった。しかし更なる強化が課題だ、と感じた。『Aim Lab』や『KovaaK's』を始めとするエイム練習ソフト。チーム練習。反省。研究。ランク戦。起きてから眠るまでひたすらに『VALORANT』に没頭した。毎日これを繰り返した。

同年12月にZETAに加入してからも、このルーティーンは変わらなかった。チーム練習の時間はNortheptionの頃よりも増え、疲労でクタクタになる日も多くなったが、それでも日課は欠かさない。

次こそ世界へ挑戦する。フィジカルの鍛錬に余念は無い。

そうした日々を経て、ついに国内の公式大会「2022 VALORANT Champions Tour(VCT) Challengers JAPAN Stage1」で全勝優勝を達成。念願の国際大会「Masters」への切符も手に入れた。それでもSugarZ3roに慢心は無い。新たな課題もまた発見した。

「次の課題はメンタルです。リスクを減らすだけではなく、的確にリスクを取れるような強心臓を手に入れたいです」

新しい課題が見つかったことを悔しそうに、しかし嬉しそうに語るSugarZ3ro。飽くなき向上心が、19歳とは思えない熟練の立ち回りを生み出すのだろう。同チームのLazも「SugarZ3roはまるでベテランのような風格を持ったプレイヤー」と高く評価している。

「彼がいることで、そのチーム全体が強くなる。そういうタイプのプレイヤーです。ミスが少なく安定した実力を持っていて撃ち合いも強い。敵として戦っていた時は、世界で一番強いアストラだと感じていました」

Lazの言葉に誇張はない。SugarZ3roが誇る確かな実力とチームメンバーからの厚い信頼は、ストイックな練習の賜物だろう。だが彼自身の真価は他の部分にもある。Northeption時代からのチームメイトであるTENNNは語った。

「SugarZ3roが本当の意味で凄いなと思うのは、コミュニケーションの姿勢です。最年少にも関わらず自分の意見を言うし、チームに対する励ましや声掛けも欠かさない。年上に囲まれても物怖じせずに喋れる人って、かなり少ないですから」

チーム最年少という立場は傍から見るよりも肩身が狭い。特に学生時代は、1歳差ですら大きな違いに感じがちだ。意見を言えずに萎縮しそうになる場面も多いだろう。

中学生の頃から年上に囲まれながらゲームをしてきたからこそなせる業だ。「協調性のある子」は周りへの気配りを欠かさない青年に成長した。彼のコミュニケーション力はZETAにおいても貴重な特性だ。

「初めての世界挑戦だから何が起こるかわかりません。世界の壁は高いですから、まずは1勝を目指します。そして課題も必ず見つけてきます」

夢は世界の頂点。SugarZ3roは今日も成長し続ける。

(取材・文 gappo3)

ZETA DIVISIONが日本代表として出場する公式国際大会「2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 - Masters Reykjavík」は、TwitchYouTubeにて配信予定。

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