ドリキンさんの「7万円台PC」に触発されてファイルサーバを作ってみた話 第3回 要件検討編 前編|@shingo1228
この記事はbackspace.fmリスナーのシンゴさんによる寄稿記事です。
シンゴです。
「ドリキンさんの「7万円台PC」に触発されてファイルサーバを作ってみた話」の第3回目です。
第2回目では、増え続ける写真のデータを保管するためにメジャーなNAS製品の比較検討を行ってみました。ですが、なかなかコレといったモデルを見つけることが出来ず、調査しては保留、暫くしてから再調査・検討、という状況でした。
そんな中、ドリキンさんの7万円台PCのYouTubeライブを見て、PCを自作してファイルサーバを作れば良いんじゃないか?と。。。
今回は、具体的に自作PCでファイルサーバを作るための構成を検討してみました。
「第2回 NAS比較・検討編」はこちら
自作PCでファイルサーバを作ろうとした場合の要件は何だろう?
まずは、NASではなく自作PCでファイルサーバを作って保存しようとした場合要件を整理しました。
・24時間起動、消費電力、静穏性
結局、アクセスするのは自分ひとり。且つPC以外のデバイスから写真のデータにアクセスする要件は、今まで殆ど発生したことが無い
⇒よって使う時に電源を入れればよい
・HDDのホットスワップ
24時間起動の無停止システムではないため、故障などによるHDD交換は電源を落とせばよい
第2回目の「ファイルの保存場所を担う環境に求めた要件」に、これらの要件(妥協点)を加味して、いよいよ具体的にハードウェア・ソフトウェア構成を考えてみました。
要件「外形寸法」を満たすには
結果的に、今回のファイルサーバを作る上で選定が一番難しかった要件が、この「外形寸法」となりました。
当然なのですが3.5インチのHDDを搭載するためのシャドウベイ数が多くなれば、ケースのサイズは大きく、また逆にケースのサイズを小さくさせようとすると3.5インチシャドウベイの数は減るわけです。
ですが、今回作りたいのはファイルサーバ。ある程度3.5インチのシャドウベイ数を確保しつつ、外形寸法は小さく抑えたい。そのような条件を満たせるケースを探したのですが、これが中々見つからない。。。
結果として、何台のケース仕様(外形寸法とシャドウベイの数)をチェックしたことか。。。
何台もチェックした結果、最終的にFractal Designの「Node 804」に辿り着きました。
Fractal Design Node 804
Fractal DesignのPCケースは、既に私自身メインPC用として同社のDefine R5を使っていて、その作りの良さには信頼を置いていました。
このケースの仕様としては、幅:344mm、奥行:389 mm、高さ:307 mmであり、外形寸法の要件である「短辺:350mm 長辺:420mm 高さ:340mmに納まるケースサイズであること。」を十分に満たしています。
また3.5インチのシャドウベイの数も8台分と、このサイズのケースとしては十分以上の数を備えています。
もう完璧!このケースで決定!と思ったのですが。。。
在庫が無い!
もともとNode 804が発売されたのは2014年ごろ。ベストセラーになりそうな定番のスペックではない(寧ろ尖ったスペックの)Node 804の在庫を持っているショップは殆どなく、どこも取り寄せ、入荷日未定という状態でした。
このケースを半ば諦め、次の候補となるケースを選び始めたところで、ビックカメラ.comで遂に在庫を発見し、オーダーすることが出来ました。
※本記事の執筆時点では、ビックカメラ.comでは商品ステータスは「お取り寄せ」になっています。
要件「ストレージ構成」を満たすには
ケースが決まったところで、次はPCの主要コンポーネントであるマザーボード及びCPU。これらに関しては西川善司さんの5万円台PC、ドリキンさんの7万円台PCのお作法に則り、今回はAMD系で行くことにしました。
マザーボード選びに関しては、ケースをマイクロATXケースとしたことで必然的にフォームファクタはマイクロATX。チップセットは7万円台PCを真似してB450として各社の製品を比較し、SATAポートの数が多いもの、且つ入手性が良いものをチェックした結果、ASUSの「B-450M-A/CSM」に決定しました。
B-450M-A/CSM
こちらのマザーボードで特にチェックした点が内蔵SATAポートの数。こちらはキッチリ 6ポートがマザーボード上に完備されており、今後、ハードディスクを増設したいと思った場合にも対応できます。
余談ですが、最近のCPU/チップセットはSATAといった、SATAのコントローラもCPU側に内蔵するようになっていたのですね。
旧来のノースブリッジ/サウスブリッジ構成から、メインメモリコントローラといった高速なI/Oコントローラが、どんどんCPU側に吸収されていった、という所まではトレンドを追いかけていたつもりだったのですが、いつの間にかSATAといった今まで比較的低速とされていたI/OコントローラまでCPU側に内蔵され始めていて、アーキテクチャのトレンドから置いて行かれているなぁ、と感じた次第です。
さて、十分吟味してマザーボードは選んだつもりだったのですが、購入してから「ここはミスだったかな」と思う点もあります。
それはPCIeスロットの構成。この製品ではPCIe 3.0 x16スロットが1つと、PCIe 2.0 x1スロットが2つという構成になっています。今回のファイルサーバでは後述の要件である10GbE NIC(Network Interface Card)を載せるつもりだったのですが、10GbE NICはPCIe 2.0 x4のスロットが必要になり、このマザーボードですと、通常はグラフィックスカード用に使うPCIe 3.0 x16スロットを10GbE NIC用に使うことになります。
取り急ぎ、それでも問題は無いのですが、将来追加のGPUを挿したいなと思った時に10GbE NICが使えなくなるので、将来を見越した選択が出来ていなかったかもしれません。
※そのような意味ではドリキンさんが7万円台PCで選択した「B450GT3」の方が要件に合っていたかもしれません。
マザーボードが決まったところで、今度はストレージの冗長構成について検討していきます。
ここでポイントとなるのが「ストレージ仮想化ソフトウェア」について。
ストレージ仮想化というと、暫く前(2010年ごろでしょうか)からサーバ用途などで話題となって、今では当たり前のように使われている考え方です。
まず、そもそもコンピューティングシステムにおける「仮想化」とは、リソースの抽象化を意味していて、リソースの物理構造を利用する側から隠蔽、より使いやすい形で提供することと言えます。
ここで言うストレージの仮想化は、複数の物理ディスクの存在を隠蔽して論理ディスクをシステムに見せることになります。これにより複数のディスクを単一の大容量ディスクに見せられる、柔軟に設定変更出来る、内部的に冗長性を持たせられる、といったメリットを享受することが出来ます。
今回はWindows 10で利用できるストレージ仮想化ソフトウェアの中から、私が知っている、使ったことがあるソフトウェアとして、Windows 10の標準機能である「記憶域スペース」。そして、ストレージ仮想化ソフトウェアである「VVAULT」を候補として挙げました。
記憶域スペースは、Windows 10の標準機能であり、ユーザインタフェースも馴染みがあるものなのですが、あまり細かい設定は出来ず、また以前に記憶域スペースを構成するハードディスクが壊れた時にデータの復旧に非常に時間がかかったことがあり、あまり良い記憶がありません。(個人の感想です!)
よって今回は2012年ごろに一度、ユーザ登録を行い実運用を開始、あるきっかけでOS再インストール以降は使っていなかったVVAULTを改めてストレージ仮想化ソフトウェアとして選びました。
当時は処理速度も今一つであったり、それなりに処理負荷がかかることからメインPC用としては使いづらかったのですが、今回はファイルサーバとしてリソースを独立させるため、その影響も少ないと思われます。
また当時は高額で使えなかったSSDを仮想ストレージ構成に組み込み、ファイルの使用頻度に応じた高速ティア、中速ティア運用も実験的に試してみたいと思います。
【参考】VVAULT ティアリング
余談ですが、このティアリング機能は5万円台PC、7万円台PCでも採用された「FuzeDrive」でも実現できます。
【参考】FuzeDrive what is fuzedrive
FuzeDriveも高速ティア(SSD)と低速ティア(HDD)の物理ディスク構成を隠蔽し、単一の論理ディスクとして見せかけるという意味ではストレージ仮想化ソフトウェアの一種となります。
ですがFuzeDriveはストレージの冗長構成を実現するものではないので、今回のストレージ仮想化ソフトの選考からは外れました。
※なおファイルサーバとは別に、メインPCのディスク構成の見直し、写真データの管理とレタッチ用の高速アクセスを実現するため、メインPC側にはFuzeDriveを導入しました。
次は、要件「運用」及び要件「ネットワーク構成」を満たすための検討。
第4回目に続く
プロフィール
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