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掌編「地球の意外な使い方」@爪毛の挑戦状

まず、8,000万キロメートル程度のワイヤーを用意します。

「八千…ワイヤー?」

このワイヤーの端を玉結び。通した地球が抜けないようにね。

「通した…地球…?」

次に、地球を複製。

「えっ」

この複製に、ワイヤーを通します。

「え?」

はい、こっち側も玉結び。そして係留。もうちょっと距離あけても大丈夫ですよ、ワイヤー通してありますから。

「凧上げみたいですね」

もう少し離したいですねぇ。最低でも17.5万キロメートルは離したい。そうすれば複製は100個程度で済みます。

「地球を100個も複製するんですか?!」

再び、複製。

「ぉ…」

同じようにワイヤーに通します。あとはひたすら繰り返し…、玉結びで挟むのを忘れずにね。

「凧上げっていうか、ビーズアクセサリー?」



よし、できた。けっこう時間掛かりましたねえ。さ、行きましょう。

「どこへ」

隣の地球ですよ。

「隣の…?」

隣の地球までおよそ17.5万キロメートルの間隔で作りましたから、全速力で半日も飛べば着くでしょう。途中の地球で補給しても、船を修理しても、まず100日後には、火星は射程距離に入るでしょう。その頃にはだいぶん火星の軌道も近づくはずです。

「それって…」

補給地が多ければ安心でしょう?飛び石みたいなものですよ。

惑星軌道になかった地球を増やしたことにより、幾つかの複製は消滅していたが、博士と僕はなんとか火星に辿り着いた。

ある少年の「宇宙日記」より

(585文字)



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