ラブやで

タイトル:インフォーカスVol. 13
日時:2022年10月22日(土)
会場:mona records
登場人物:the Tiger、The Memphis Bell、‪THE HillAndon‬、Johhny Yoshi Hiro

 ケイコちゃん主催のインフォーカスはコロナ禍においてもコンスタントに開催されていて、今回で13回を数える。東京開催が多いためしょっちゅう行けるわけではないけど、Vol. 13は決まったときから心待ちにしていた。
 はっきり言って出演者のラインナップだけで優勝であり、これが盛り上がらなかったら何が盛り上がんねんて感じである。
 会場選びにも定評のあるインフォーカスがライブハウスひしめく下北沢から選んだお店はmona records。私は初めレコード屋さんと勘違いしており、奥のちっちゃいスペースにきゅんと収まって演奏しているバンドを狭い通路から観るのかな?踊ったら絶対肘が当たって棚のCD払い落とすよな…と変に気を揉んでいたが、普通の、いや普通より感じのいいライブハウスだった。

 2年ぶりに会える東京Hill's、ツイッターだけでつながっていたHill's、ずっと‪THE HillAndon‬観たいと言ってくれていた檀家にTDKの皆さま。タイガー、メンフィスベル、ジョニーくんの東京組には強力な地元固定客がついていて、始まる前からその場にいる人たちの期待感が目に見えるようだった。
 何と言ってもタイガーと‪ヒルアンドンの対バンは私が見たかった光景であり、おそらくバンド同士もお互いにそう思っていただろう。

 そのthe Tigerがトップで登場、一曲目からギアマックスで駆け出すような演奏だった。りんさんの声、何回聴いても何が起こってるの?と唖然とする。「和製ナニナニ」とか「日本人離れ」みたいな形容で解説したり規定したくないと思う。
 唯一無二のその声その歌を活かすバンドの演奏も素晴らしく、りんさんが気持ちよさげに歌っているのを見るとこちらも気持ちが乗ってくる。
 どこを切りとってみてもいつかさらなる何かに化けそうなthe Tigerなのだが、今現在はのんべえ集団のイメージが強くてご愛嬌である。「出番トップがよかった、なぜならそのあと呑めるから!」という絶賛酒クズ発言をステージで堂々と披露していた。かっこつけずにでっかくなってほしいなあ。

 2番手・The Memphis Bell。ゆっくりめのテンポでスタート。シブい、シブすぎる(笑) こういう曲が却って演奏の凄まじさを際立たせる気がする。ドラムが馬鹿げたほどに強いのにギターもベースもちゃんと乗ってる。そして、踊れる(重要)。
 「嫌んなった」のアレンジは秀逸だと思う。普通は誰もが木村さんに引きずられるのに古賀さんはアレンジも歌も自分流で、だけどちゃっかり憂歌団を想い出させる。
 毎週ライブハウスに出てるような人たちって社会的につぶしがきかない感がすごいけど、メンフィスベルは誰よりもつぶしがきかないように見える。だから彼らを好きな人はめちゃめちゃめちゃめちゃコアな客なんだろう、「俺たちとズブズブ」と呼ばれたケイコちゃんを筆頭に。
 あと、私はサポートベーシストのまっちゃんこと松本くんが大好きなのでかなり長時間まっちゃんを見ているが、かかと半分くらいしか動いてない。手だけであのノリを生み出せるのカッコいい!

 いよいよ‪THE HillAndon‬。SEが流れただけであんなに盛り上がったことがあるだろうか。今回唯一遠方から来た彼らになんて暖かい出迎えなんだろう。
 バンドにとって2020年以来2年ぶりの東京。一曲目「ラブやで」。この曲はまさにそのときインフォーカスVol.3で初披露された曲なのだ。コロナが今より何倍も恐ろしかったころ、直前にドラマーが辞めても果敢に遠征した‪ヒルアンドン。あれが私の彼らに対するラブやでのトドメだった。そんなことを思い出した。
 達郎のギターはプレイヤーの皆さまからも絶大な支持を集めており、ブルボンズのコジマヨシオとかタイガーのたいがくんとかがHill'sを押しのけて達郎前に張りついてる光景は見ものだった。嗚呼、達郎が遠いぜ〜(後でブッ込みました笑)。
 サポートドラマーはお初の小宮山さん。「Southbound」が久しぶりにノーマルなテンポ感。高速も好きだけど(笑) どの人が来ても苦もなく合わせてるシュンちゃんのたくましさ。
 そしてね、コージローくんの歌には泣かされた。特にラストの「Song for Our…」は圧巻だったなあ。悲しみや怒りが根底に潜んでいるが、それは生きとし生けるもの総てに対する愛おしさがあるから。いろんな感情がないまぜになって溢れ、渦巻き、涙を誘発する。ヒルアンドンの楽しいだけじゃないところもとても好きなんだ。

 トリはJohnny Yoshi Hiro。ソロは聴いたことあるけどバンドセットは初めて。おー、こりゃいいや!南部の風が吹いてくる。音がうねって気持ちよい。メンフィスベル同様、酒をくれ!となる。
 この日出たバンドはみんなどこか泥臭さを感じる音楽をやっているけど、最若手と思しきジョニーくんがいちばん泥臭いニオイがした。
 ティーネイジャーの昔(と言っても、見た目は今も高校生と言われても頷けるかわいさなんだが)に作ったという曲が全然若書きじゃないのビックリした。だからそれはもう彼の個性なんだろう。自分のやりたいことを追求しているのいいなあ。

 ライブハウスのブッカーでもなくプロイベンターでもないケイコちゃんの企画は、ただ自分の好きな人たちを好きな組み合わせで好きなお店でやっているだけのように見えて、いつもその場にいるみんなに魔法がかかる。我々客のみならず演者の皆さまもいつにも増して楽しそうな顔をしている。誰もが歓びと幸せ(と酒)に浸ってたんじゃないかなあ。
 この日客で来ていたジトさんの「ぶっちぎり」もそうやけど、企画自体にファンがついているのが凄い。インフォーカスやったらあの人来るよな、みたいな期待があるし、まんまと私の東京の推し客に会えた(今回その子にはたまたまツーデイズ会えた!)。
 あの土曜の夜は、13回におよぶインフォーカスの中でも最高峰に位置する夜だったのではないだろうか。
 ケイコちゃん、どうもありがとう。ラブやで。

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