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音スタダに関するとりとめもない話

あばれぢからと申します。音スタダに参加していました。
他の参加者の方々が編集後記を残されていましたので、微力ながら僕もお力添えをさせていただきたく思いました。参考になる点は少ないかもしれませんが、お読みいただければ幸いです。
この記事では、音MADを作りながら所属しているコミュニティとどうやって折り合いをつけてきたのかを紹介できればと思います。結局できませんでしたけど。
この記事は現時点で4,000文字あるので、長文を読みたくない人は避けて頂いてもかまいません。

※この記事は音MAD Advent Calender 2023に参加しています

来歴と参加経緯

もともとゲームの界隈に居た人間ですが、音MADに興味を持つようになったのは、とあるゲームが発端でした。

TeamFortress2は、ファンメイドの映像作品が非常に多く、公式からSaxxy Awardという映像作品コンテストを行うほど、ファンコミュニティが強力でした。YTPMVなどで彼らの素材を目にすることも少なくありません。
このゲームを通し、複数名の音作者と交流した経験が、僕の音MADに対する憧れを形成したように思います。

しかし、音MADを作りたいという気持ちはあれど、方法も分からないままに作るのは難しいと感じ、その気持ちを一度箱にしまって、また友人たちとゲームをすることにしました。
そこから数年経ち……。

かねてより交流があったピンクの象さんより、このようなツイートが発信され、僕は回答のために、10年前に作ったニコニコのマイリストを見直してみました。
現実に折り合いを付けれられずにずっとパソコンに向かっていた時期の記憶を思い出しつつも、マイリストに含まれる数千本の動画は、間違いなく僕を形作っていて、それらは沢山の人と物語が僕につながっていることを示していて、感慨深くなった覚えがあります。

幼少のころ、箱の中にしまった音MADを作るという願いは、僕を形作る沢山の出会いと思い出と共に、まだ静かに眠っているだけでした。

ですが、事態は思わぬ方向に急変することになります。


※イメージ

アンケートを開催していたピンクの象さんからDMが届きました。
「回答内容に不備でもあったかな?」と思いながら返答を返したところ大まかにの内容を頂きました。

①音MAD見る専アンケートで、「音MADを作りたい」と答えた方に向けて「音MADスタートダッシュ」という企画を用意していること
②参加する場合、1か月間の間経験者のサポートを受けながら制作を行うことができること
③完成した作品は生放送で公開されること

僕は幻覚かと思いました。
僕が好きなものを詰め込んで、眠らせているだけだった箱が、今や宝箱となって、僕を照らしているのです。

さて、この時僕は、所属していたコミュニティにおいて、多くの人が関わるイベントの企画を進めており、他のユーザーさんからの協力も受けていました。
所属していたコミュニティはアクティブなユーザーからの興味を失いかけているという状況で、その状況を一変させるため、多くの人が自分の居場所について考える機会として、大きな企画を複数個進めており、イベントに本腰を入れる予定だった11月を逃すと、その企画は流さざるを得なくなってしまいます。

ここで僕は3つ、回答を考えました。
1、音MADに専念して作りたいものを作る。
2、所属コミュニティに注力する。
3、やりたいことと所属コミュニティの維持の両立を図る。

僕は3番を選び、両者をできるだけ両立することにしました。
理由は、やりたいんだから両方ともやっちまえ、と思ったからです

製作開始

その後、10月の末頃からゆっくりとどのようなものを作るかを考え始めました。
大まかに
・映像素材より手描きの素材をメインにする
(大量の素材を処理するPC性能とストレージがないため)
・音声をミニマルなものにして、音のリッチさより聞きやすさを優先する
(音声のリッチな作品は多くの人が目指すだろうと予想、音声素材の最小単位を把握しやすくすることで、重ねる素材と原曲のレゾナンスを捉えやすくする)
・音MADを出会いとして、界隈でメインストリームとなっていない素材や原曲に触れてもらう。
(音MADから作品を知る場合、作品の良さやニュアンスを切り出して伝えることができ、よりよい選択をした感覚、つまり満足感を与えられる)

ということを決め、作りたい原曲と素材をリストアップし、それを作った場合のコストとバリューがどれだけになるかを脳内でまとめました。コストはそれを作るのにどれだけの要素が必要かで、バリューは上記の素材や原曲に触れてもらう目的がどれだけ達成できるかです。

この際、最もバリューが高く、コストが低く達成できるのかを考えたとき思いついたのが、”ファミレスを享受せよ”というゲームの楽曲です。
マイナーではあるものの、知る人ぞ知るタイプのゲームで、シンプルながら独特な色合いから、一目でこの作品と分かることも強みでした。

ファミレスの楽曲はローファイで、ローテンポ、音の通りがよく、シンセ化した音源との相性がいいように感じました。

問題は、何を合わせるかでしたが、これもすぐに解決しました。
音声素材を合わせる際に意識したのは音のニュアンスを落ち着かせ、ゲームのテーマと合致させることです。ファミレスを享受せよは、永遠のファミレスに迷い込んだ主人公が、同じく迷い込んだ客と雑談をするゲームで、いわゆる文章を読むゲームですが、文章量は少なめで、そして懲らしめたくなるような悪役らしい悪役はいません。プレイリズムはユーザーに依存しており、キャラクターの提示する情報や意味合いをゆっくり噛み砕くことができるゲームでした。
それはある意味推理やパズルに近く、僕は月が関連する推理やパズルをテーマにしたゲームをもう一つ知っていました。

Portalシリーズがなぜ月に関連しているのかは、ぜひプレイして確かめてほしいです。(セールでとっても安くなるし、PC以外でもプレイできるので)
Portalシリーズも、数は少ないですが多彩なキャラクタ―が登場し、彼らから与えられる言葉は物語を進展させていきます。
そしてなにより、このゲームのキャラクターの音声は、シンセ化しなくても楽曲にぴったりでした。(シンセ化の話が懇切丁寧に解説されていたのですが、使わなくても満足しちゃった、すみません)

素材を見つけ、集め、それを終えたころ、自分が元々所属していたコミュニティ上で少し問題がちらほらと浮き上がっていました。

コミュニティがヒリ付き始める

そのころ、所属するコミュニティではオーバーウォッチ2のカスタムイベントが迫っており、僕はその準備を一任されていました。
チームのまとめ上げ、毎日の諸連絡、参加者のスケジュールのすり合わせ、レギュレーションの改定案……。イベントで使用するイラスト……、
それを一人でやりながら、サーバー上の庶務を行いながら…… 別途企画用のゲームサーバーの管理を行いながら……。

所属するコミュニティの作業用チャンネルで画面共有をしながら複数人でゲームをプレイしている方々の悪態や笑い声を聞きながら一人で庶務を行っていたのを覚えています。寂しかったなぁ……。

カスタムイベントに向けて、人間関係がこじれるところがあったり、熱意を失ってしまう人が居たり……。
それらのカバーをしつつ、確保できたわずかな時間で音MADを作っていきました。

この時に大切にしたのは、まとまった時間が出来たら絶対に制作ソフトに触れることでした。
気分や体調の変化で大きく制作意欲や作りたいものが変わってしまう性格なので、まとまった時間が出来たら、自他に言い訳をせず必ずReaperを立ち上げ、一定箇所まで製作を進めることを意識し、製作中のイメージや感覚を出来るだけ失わないように心がけることで、表現したいものへの内圧を落とさないようにしました。
この時できるだけ一括で作業を終わらせること、終わらなかったらその日の進捗をリセットし別日に作り直す勢いでやるような意識をすることで、一貫性や整合性のあるものを目指せるように感じました。

映像のトレードオフ

今回音MADを作るにあたって、映像的な動きは最小限にしたい、という思いがありました。
ファミレスを享受せよには、キャラクターの動きはほとんどなく、簡単なエフェクトのアニメーションで表現しています。

映像表現をある程度充実させるために、アニメーションを付与しようとしていましたが、見られるアニメーションを作る技量がなく、もともと原作にない動きは、ファミレスらしさを著しく失うかもしれないと考え、静止画MADにすることとしました。
アドバイザーさんのアドバイスで、原曲を丸々流していると思われないように、音声波形表現を追加して、映像を完成とすることにしました。

使用したイラスト ガラスパンと好奇心コア

最終的に

完成した音MADは、期間的には余裕をもって提出することができました。
しかし実際は、提出予定日以降は一切制作に使える時間がなさそうだったので提出した、というもので、「ここまでか……」という気持ちで一杯でした。
ですが、ミニマルな映像・音声構成を徹底したことや、イメージの統一性を重視したことで、音MADを作ることの精神的負担は非常に少なく、11月中のよい癒しでした。

本放送で映像が流れたとき、この原作を基にすることに驚かれている方や、ゲームに触れてみたいと思う方がいてくれて、僕の本懐も達成できました。
”なぁ、君、音MADを享受せよ。”

心残りがあるとすれば、音スタダの参加者さんやアドバイザーさんとの交流をあまり深めることができなかったことです。
元々属するコミュニティがあり、そこで主に作業をしていたのですが、作業に適するタイプの通話ではないことが多く、(作業用通話なのにFPSで連携してる人の方が多かった……。ゲームや交流が主なので誰も悪くないのですが)もっとスタダの方にも顔出しておけばよかったなぁ……とか思ってます。
決して音スタダに関係した人たちとのつながりが失われるわけではないので、これから深めていければいいですね。

音MADスタートダッシュに参加した方々、作品制作を助けてくれたアドバイザーの方々、わずか4名でこの規模の企画を回してくれた運営の方々に、改めて感謝を述べたいと思います。
1か月間の長くも短い間、お付き合いいただき本当にありがとうございました!

お祝いのケーキです