淡い記憶と環世界
いつだったか、どこかの風俗嬢に薦められた、小説を読み終えた。
赤目四十八瀧心中未遂。
僕は、それを風俗嬢から教えてもらったと記憶しているが、実際のところそれすらも怪しい。
一体どんな気持ちで、この癖の強い私小説、恋愛小説、純文学を薦めてきたのかは僕には知る由もないが、「すごく暗いけど」と何度か念押ししていたような気はする。
お風呂に入ってた時にそんな話をした気もするのだが、スマートフォンもいじれない状況下でどうやって僕はこの本を買ったのか。
そもそも、僕はその子の顔も思い出せない。
あれは夢の中だったのだろうか。
なぜ、こんなことをあえて文章にしたのだろう。
現実と夢の間で融解するこの記憶らしきものを手に取ってみたくなっただけのような気はする。
僕の勝手な思い出がこの頭にあって、それは誰の記憶にもないもので、どんなに言葉を重ねたとしても、僕の外に出られるものではない。
ただ、形を変えて消え行き、僕の終わりと共に消滅するのだろう。
見ていただけたことが、何よりも嬉しいです!