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ビルバオ戦:バロンドーラー依存症

相も変わらず機能不全が続く右サイド。なんとか機能させていた10番に見捨てられ、その攻守において完全に窒息した。波及して全体のチームバランスを崩し、1人少ない相手に薄氷の勝利を掴んだ苦戦を振り返ります。

混乱の右サイド

キックオフ直後、ビルバオの猛プレスが襲い掛かります。左の形作りが間に合わず、ラモスがクルトワにパス。前に3枚で当ててきたビルバオは、

①左でラモスに下げさせてクルトワへ2度追い

②アンカーの位置のモドリッチを切ってヴァランに出させてからサイドに2度追い

というふうに戦術的なハードワークで追い詰めます。

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ここでサイドバックのカルバハルが工夫します。バスケスも大外で張っていたのを確認し、クルトワがヴァランに出すのと同時に中盤に走ります。これよって深い位置にで三角形を形成。バスケスに渡ったらカルバハルはハーフスペースで数的優位を作ってパスコースを増やしに行きます。ここですぐにモドリッチかカルバハルを使えばよかったのですが、バスケスは迷って時間を使ってから狙われたモドリッチに出すという最悪の選択をしてしまいます。

迷ったのならなぜクルトワやラモスに大きく振らなかったのかは謎ですし、カルバハルの方にわざわざドリブルしてワンツーをしようとするのも謎でした。バスケスが大外に居ればモドリッチは何とか打開できたでしょう。カルバハルやベンゼマに大外のカバーに入れというのも無茶な話です。

一応セオリーとしては三角形の回転という意味でカルバハルがハーフレーンを前進する手もあります。クルトワへのコースと重なっていますから。

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しかし、モドリッチへのパスコースを走ることになりますし、相手につぶされる危険性、クルトワへのパスを読まれやすくなる危険性を考えるとカルバハルの選択は賢明でしょう。それに、右利きのバスケスが後ろから詰められてもボールを保持できるか・正しい選択をできるかというところであまり信用していなかったのでしょう。

私の見る限り、バスケスはかなり王様気質の選手です。確かに守備は頑張るときもありますが、あまり周りの選手のことは考えずにプレーしますし、周りに強引に合わせてもらおうと考えているように見えます。(自覚があるかはわかりませんが。)

なのでSBで出ていてもWGで出ていても、バスケスは基本的にモドリッチに頼り切りです。モドリッチはその場その場で周りに合わせて最善手を選択できる選手なので、いちいちカバーしていますね。しかし限界はあります。それはバスケスが状況を変化させてからの最善手であって、全体から見ると最善からは程遠い状況になってしまうからです。これは何年も前から続く問題ですね。

続いて3分40秒のシーン。カピタンのパスが少しずれたのもありますが、元々位置が低いですね。張りっぱなしが好きなのは分かったが、内側をカルバハルにカバーさせといてそれかよ!と言いたくなります。案の定詰まってカルバハルに受けてもらいます。

カルバハルはかなり詰められていますが平気でパスしてまたお決まりのワンツー作戦。しかし何故かミスってカウンター。クロスも上げさせまいとする意志が一切感じられませんでしたし、結局シュートまで持っていかれます。何がしたかったのか、、、、厳しい監督ならここで交代ものでしょう。

12分のシーンでもモドリッチ脇の位置に貰いに行ったは良いものの、慣れてない中盤でわざわざ不得意な左足にボールを置いて内側を向き、案の定取られます。これはPKを取られてもおかしくなかったですね。カルバハルがうまぁく妨害して万全にはシュートを打たせませんでした。流石ですね。

若武者達の献身

右サイドの攻撃が機能せず、モドリッチが見切りをつけて左サイドの攻撃に関わり始めます。バランスを取るように毎回律義に右サイドor中央に回ってくるのがバルベルデです。

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しかし右サイドは機能していないので彼は中盤のフィルターとしてそこにいるだけの存在になってしまいました。無理して自分が受けにいっても状況が好転しないのを分かっているので、相手の中盤を監視できる位置を維持する賢明な判断で。しかしその分バルベルデがボールを受ける機会は激減しました。 実際この日のバスケスはロストを繰り返していましたので当たり前かもしれませんが。

そして前半ロスタイム。クロース素晴らしいシュートが決まったシーンですが、ここにも左サイドの好調さの要因が顕れます。

大外でヴィニシウスがボールを持ちますが、相手は縦に2ライン揃えていました。このようなシーンではインナーラップは生きませんので、メンディーは外を回ってボールを受けます。

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預けたヴィニシウスは素晴らしいランニングを見せました。縦に並んで詰まらされていた相手を横に並べさせて、裏にベンゼマとの数的優位を作りに行ける非常に頭脳的な動きです。膨らみながら自分のマーカーの背中を取りに行っており、ハーフスペースのボックスをこじ開けました。理想的なハーフスペース攻略です。

中央に待機していたバルベルデが同時にそのボックスに侵入して、ヴィニシウスへの中継点になります。相手の中盤も押し下げ、そして自陣ゴールに視野を取らせることによってクロースはドフリーとなりました。ちなみにこの時はバスケスも適切な位置取りでしたので、相手のディフェンスラインのスライドを防げていたというのもあります。基本的に得点や決定機が生まれるときには右サイドも正しい位置取りになっているんですね。バスケスはその頻度が低すぎますが。

風穴が空いた右サイド

そして後半、前からプレスに行きますが一人多くても何故か嵌められません。

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49分28秒のシーンです。何故かバスケスだけがマークに行っておらず、サイドレーンで勝手に数的優位を作られてボールを運ばれ、全員無意味に撤退させられます。後半はこのようなシーンが多く見受けられました。

この時はボールが出る前にベンゼマに注意されたのですが、何故か後ろの選手へがっつりマークにつきます。明らかにベンゼマの指は前の選手を指していますが、勘違いしたのでしょうか。この場面で指示されるとしたら前にしっかり来いというの以外無いと思いますが。もしくはベンゼマが行くべきと思ったので行かなかったのでしょうか。(私にはベンゼマがキーパーへの戻しを狙っているように見えましたし、実際普段からそういうシーンは多いです。)中盤からモドリッチとバルベルデが出て行っている時点でステイの指示が出るはずないと思いますし、そもそもベンゼマがバイタルを開けたらクロース・バルベルデがつり出されることになってかなり危険です。

そしてそれが失点シーンにも繋がります。コースも切らずに訳わからないままバスケスが振り回されたので、バルベルデがマークをみつけられずにカルバハル・クロースが出ていかざるを得なくなりました。そしてその裏を使われてカウンター。このシーン最も切り替えが遅いのもバスケスです。逆サイドに展開されたときにしっかりポジションを取り直していれば、カルバハルはヴァランの裏をカバーできてヴァランもラモスのカバーをできたでしょう。

そしてこれは後半ロスタイムのビルバオの決定機にも通ずることですが、クロースがかなり消耗していて集中が切れがちになっていたようにも見れます。日程がきついのもそうですが、即時回収ができずに無駄走りを繰り返しているせいも大きいでしょう。

2点目や3点目はあえて詳しくは掘り下げません。 が、2点目はベンゼマの機転となによりカルバハルの止めてから早いクロス、速くて正確な美しいクロスという最高レベルの技術を褒めるしかないですし、3点目はロドリゴのゴール前へのランニング→開いてベンゼマにスペースを提供する動きが生んだゴールでしょう。一つ言えるのは、前でも後ろでも右サイドのファーストチョイスにバスケスは相応しくないということだけです。

総評

総じて、右サイドが左サイドの足を引っ張って転がしたような試合でした。数的有利を活かせないどころか、負けていても可笑しくない試合でしたね。ヴィニシウスやロドリゴはチームを助ける動きが出来るのにベテランがあのようなプレーで癌になるというのはかなりみっともないと思いますね。

一方VBR3枚はかなりトリデンテとしても成長してきていると思います。中でもヴィニシウスは攻撃面でユニットの一部としての己を高め続けていますね。かなりCL でも期待が持てます。

一方バスケスには現状控え右SBとしての未来しか無さそうです。ブロック内での間受けもプレッシングもウイングの必須スキルがからっきしな現状では、ポジショニング以外は一定水準にあるサイドバックでキープ力を生かしてもらうのが唯一の有効な起用法でしょう。

余談ですが、冒頭の写真はクラブワールドカップで優勝したソラーリ時代の写真です。試合後に自分が欲しいタイミングでパスをもらえなかったバスケスがモドリッチに食って掛かったという話がありました。それ以前にもイスコに球離れが悪いと注意してシュンとさせたという話やバスケスが「俺にばっかうるせえ!」とキレたという話がありましたが、バスケスにはあまり言っても意味がないと思っているのかもしれませんね。

状況によってやるべきことを常に判断できる選手にとってはバスケスやイスコのような選手はあまり頼れる選手と思い辛いのでしょう。カルバハルもモドリッチと二人三脚で右サイドを守り続けてきた状況判断の出来る選手なので、バスケスを信用していないのでしょうね。

ですがバスケスはジダンに愛されているのか、ロッカールームで力があるのか、かなり重用されますね。ベンゼマと仲がいいからでしょうか。このように勝ち続けられていると、ジダンはあまりスタメンを変えたがりません。マネジメントを重視して、戦術面でのことより優先する部分が大きいです。アタランタ戦までこれが続くと暗雲が立ち込めてきますね。

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