結局、今年のジャパンカップで外国馬は買えるのか
今年は久々に海外のビッグネームが来日するということで、
「JCで外国馬の取捨に悩む」という懐かしいイベントが発生している。
その思考を回すひとつの材料として、これまで2本のnote記事を投稿してきた。
集大成として、最終的に今年の3頭をどう判断するか、私の意見をまとめてみたい。
(よければ先に投稿した2本も御覧頂けると幸いです)
ゴリアット、ファンタスティックムーン
括ってしまっている時点でお察しかと思うが、この2頭は買わなくていいと私は判断する。
麻雀で言うところの「ノータイムで切っていい牌」だと思う。
理由は、先に投稿し2本の記事に書いたことがすべて。
個体としての評価以前に、大きなトレンドとしてそもそも欧州調教馬が日本の芝GI、特にジャパンカップで好走すること自体が、今後は殆ど期待できない。そのうえこの2頭は、それを覆すための大事な材料である「アジア遠征での好走実績」を持っていない。
ゴリアットの馬主のああいうプロレスじみた発言は個人的にウェルカムで、
今回のJC盛り上げに一役買ってくれていることには敬意を表したいが、
馬券的にはサヨウナラでいいとおもう。
オーギュストロダン
唯一判断に迷ったのがオーギュストロダン。
基本的にはゴリアット、ファンタスティックムーンと同じく
「アジア遠征での好走実績を持たない欧州馬」ということで、
個体評価以前の問題として「切り」だとは思う。
ただちょっとノイズがいくつかあるので、それについて一応考慮・検討しておきたい。
日本馬との比較
「未知の外国馬」ではなく、
なまじ日本馬と直接対決して先着した実績があるからややこしい。
BCターフでそこそこ力を出せたはずのシャフリヤールに0.2差先着。
次走の有馬記念でシャフリヤールの0.2秒前にいたのはスターズオンアース。
愛チャンピオンSでそこそこ力を出せたはずのシンエンペラーに0.2差先着。
ダービーでシンエンペラーの0.2秒前にいたのはジャスティンミラノ。
そう考えるとなんだか今回のJCでも侮れない気がしてくる。
ただ、先般の記事でも述べたように北米はもはや欧州馬のホーム。
地元アイルランドのチャンピオンSも含め、単にホームアドバンテージを
生かしただけの結果とも言える。
ましてオブライエン厩舎にとっては米BCも愛チャンも、もはや鼻をほじりながらでも勝てるレース。
対して藤原英厩舎や矢作厩舎にとっては初挑戦のドキドキ手探り舞台。
そう考えるとむしろ、彼のホームであの程度の差なら、日本で走ったらシャフリヤール、シンエンペラーで逆転可能なのでは。
その2頭と互角or少し下くらいだと考えれば、今回のメンバーではせいぜい「3着あるかどうかの伏兵」でしかない。
「でもディープ産駒だから日本でも走れるのでは?」という方には、
「じゃあソットサス全弟のシンエンペラーや、バゴ産駒のクロノジェネシス
は凱旋門賞でどうでしたか?」
ということを思い出してもらいたい。
ピンパータイプ。いつ「パー」が出るか。
2000ギニー、キングジョージ×2回、そしてドバイシーマクラシック。
これまでこの馬は、2秒~21秒の大敗を4回も喫している。
いわゆるピンパータイプ。
今回の「休み明け」「GI好走後」「前走より頭数増」というシチュエーションは、これまでの大敗4回と似ている。
まして初めての環境でのレース。
「こんな馬ではないはずだ」という大敗があっても驚けない。
引退式について
これが一番厄介。
当日のレース後に、東京競馬場で引退式をするとのこと。
素直に考えれば「勝って大団円」が一番美しい。
まして、
日本で走ったことがなく、引退後に種牡馬入りするのも日本ではない。
いくら「ディープ産駒」「世界的に有名」とはいえ、そんな馬の引退式を
やったところでファンは喜ぶのか。
同様に、
「父の走っていた国」という以外には人馬ともに何のゆかりもない地で
セレモニーを開催されて、関係者は嬉しいのだろうか。
これはいったい、誰のほうを向いた、何のための企画なのか。
少なくとも「勝って大団円」以外のシチュエーションでこの馬の引退式を
やる意味がわからないし、もし負けて引退式の場合、どんな空気になるのかちょっと塑像してもなにか気まずくないだろうか。
JRAが提案したのか、馬主・調教師が要望したのか。
そこはわからないが、少なくとも、
企画した側は勝つ可能性が高いと思うから企画し、
受理した側もそう思ったから受理したと考えるのが自然。
日本馬ならともかく、外国馬についてこうした取り扱いは、
主催者側が半ば予想行為を行ってしまっているようなもの。
・・・というわけで、こういうことをされると
せっかくの「ジャパンカップの馬券検討」が、
「馬同士の戦いを予想するゲーム」ではなく
「施行側の意図を読むゲーム」に変わってしまうので、
本当にやめてほしかった。
どうせならこんなに何千字もかけた予想記事を何本も書いてしまったところで発表するのではなく、もっと早くから決めて発表してほしかった。
真面目に予想してきたのがばかばかしくなるような、ちょっと冷めた気分。
(私の勝手だけど)
そのうえオブライエン師を接待(?)までして・・・
まして、水曜になって報道されたのは、
エイダン・オブライエン師が初来日し、競馬場やトレセンを見学した、
という内容。
ご丁寧に
オブライエン「初めて来ましたが素晴らしいですね」
案内役の尾関師の「オブライエンが来るなんて緊張した」
というコメントまで添えてある。
他の調教師が来日した時も同じようにしているのを、オブライエンが大物だから記事にしただけなのか、或いはオブライエンに特別扱いでそのような「ご案内」を行ったのか?
それはわからないが、いずれにせよ私はこの報道にムカムカしている。
だって、
・馬・馬主に対しては「引退式」で特別扱い
・調教師に対しては「競馬場、トレセン見学ご案内」で特別扱い
・メディアではそれらをいちいち記事にして特別扱い
その末にレースまで勝たれる(勝たせる)なんてことになったら、
なんという媚び、へつらい、卑屈、醜悪・・・
とにかくひどい興ざめ接待尽くしではないか。
なんなのか。
だいたい、04年を皮切りにこれまで何度もJCに管理馬を送り込んでいるのに、20年経ってようやく今回初来日ってどういうこと?
「そんな」オーギュストロダン「陣営」にだけは勝たせてはいけない。
勝たれたくない。
なんでいまさらJCでそんなへこへこした接待をしなければならないのか。
冗談ではない。
私はそう思っている。
冷静に考えたとき
・・・と口が悪くなってきたところで気を取り直して。
じゃあ、JRAが勝つと見込んだ/或いは勝たせるつもりだから
「引退式まで用意するんだ」「オブライエンを歓待するんだ」
と邪推したとして、
そもそもその前提として、
JRAはオーギュストロダンに勝たせたいのだろうか。
冷静に考えると、私にはそうは思えない。
なぜなら、
「強い外国馬」を呼ばなくても「強い日本馬が強い勝ち方」をすれば、
JCというレースは世界的にちゃんと評価される。
そのことが昨年わかってしまったからだ。
(ロンジンワールドベストレース受賞)
むしろ味を占めたJRAの立場からすれば、
今年もJCの評価を高めたいと考えたら
「大物外国馬に勝っていただく」よりも
「大物外国馬に来ていただいて、力も出し切ってもらって、
でもそのうえで日本馬がそれをフルボッコにしてくれる」
のほうが望ましいはず。
そう考えれば引退式は、
「ガンガン営業した末についに来日した大物ホースに、
たいして賞金も名誉も持ち帰ってもらえないのは可哀想&申し訳ないから
せめて最大限のおもてなしで応えたい」
というような、
「むしろオーギュストロダンは勝てないだろう」と思うからこその開催なのかもしれない。
それすらもまた邪推に過ぎないが、
とはいえJRAのやらせを疑うよりはよほど心のキレイな考え方だ。
同じ邪推なら、そっちの邪推のほうが人の心としては正しい気もしてきた。
とすればやはり、諸々の「思惑」はすべてカット、リセットして純粋に
プロフィールだけでの判断となれば、
「ゴリアット・ファンタスティックムーン同様にオーギュストロダンも馬券的には買えない・買わない」の結論でよさそうだ。