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中国で携帯電話を置き去りにした話

ただただテンパって周りの人間に助けてもらった話です。オチはありません。
西安市

私は日本企業勤めの中国駐在員で、そろそろこっちにきて1年半に近づいたところである。昨年12月に中国大陸の疫病に対する政策が全てなくなり「解放」されて以来、週の半分以上を外地で過ごすことも増えた。最近は东航(中国東方航空)のマイレージの貯まり具合を確認するのが一つの楽しみでもある。

そんなある日、私は広州から上海への帰途につくため、搭乗口で飛行機を待っていた。乗る前に上司に電話で当日の仕事の報告をし、レポートを書き、あとはぼーっとして過ごそう。そう思いながら、呼ばれるがままに飛行機に搭乗。隣の乗客に座席の端末の使い方を聞かれたりして、いよいよ飛び立とうとするときに感じた違和感。

携帯電話が…ない!!!

厳密には「会社用のスマートフォン」が手元になかったのだが、これは何を意味するかと言えば、私は無一文で上海の空港に降り立つということだ。

ライフラインたち

皆様のご存知の通り、中国は社会生活において智能手机(スマートフォン)がライフラインを全て握っている。実際、私の会社の携帯電話は中国で不可欠なアプリ「Wechat(微信)」「Alipay(支付宝)」がインストールされているのはもちろん、それらは「実名認証」がされており、銀行口座と紐付ければ口座の許す限りの金を支払うことができる財布にもなる。全キャッシュレス生活を1年以上続けて私は現金も、財布も、一切のクレカも持たない生活にすっかり慣れきってしまっていた。日本に一時帰国した時に財布の存在をすごく気にしないといけなかったのも記憶に新しい。

その携帯が今手元にない。飛行機の中で寝ようと思ってた気分は一瞬にして重い気持ちに支配され、とりあえずCAに携帯電話を搭乗口付近に放置してしまったことを伝えた。
悲壮感漂わせた英語を話す日本人に対し、CAは冷静に広州白雲国際空港に電話するように、空港のLost&foundの問い合わせ窓口の電話番号を出してきた。

私「あの…その電話ができないんですが」
CA「いや、手元にあるじゃない、電話が」
私「これはデータ通信専用で、電話ができないんです」
CA「(よくわからない顔)…そしたら上海に着いたら东航の窓口で電話貸してもらって、広州に電話すればいいじゃない」

香港データsimを挿したiPhoneを見せながら説明してるからCAの困惑はよくわかる。すみませんでした。

空港で無一文の33歳男性の図

上海の空港に降り立ち、手始めにiPhoneを探す機能で現在地だけ確認しようと思ったら、Apple IDのパスワードを完全に忘れててテンパりまくった挙句アカウントログインをロックされた。それは仕方ないとして、まずは無一文状態でどうやって家に帰るか、そして、どうやって携帯をとりもどすか。テンパりつつもPCを立ち上げ、インストールしてあった「WeCom(企業版Wechat)」で広州、上海のスタッフに助けを求めた。

お金がない問題については、例えば今手元にある携帯にアリペイを入れてトラベラーズパスを登録して…ということも考えたのだが、それもSMSの認識がいるという時点でNGである(日本のキャリアがLINEMOで一応国際ローミングは可能であるが、simカードは持参しておらず)クレカも銀行カードもない。

…あ、これ1人じゃ無理だわ(悟り)

情けないことに、本当に帰る手段はなかった。その日は土曜日で、既に21時を過ぎていたのだが、なぜかデスマーチ期間の他の駐在員がまだ事務所にいるとのことで、すみませんが来てください!!家に帰れないんです!と泣きついたらしぶしぶ空港まで来て地下鉄のICカードを恵んでくれた。今度飯おごります。

白雲空港のミニプログラム

携帯を取り戻すことについては、彼らの動きは早く、私がMUの窓口で電話を借りる前に広州の空港のお問合せ番号(020-96158)に連絡し、空港の公式Wechatの小程序(ミニプログラム)のリンクの送付と、遺失物担当のアカウントと個別でWechatのやりとりをしていた。尚、遺失物対応については基本的に電話対応はしておらず、全てはWechat経由で済まされている。あれ?これもう一個携帯なかったらいよいよ詰んでね?ってなるが、それこそ中国である。そもそも携帯をなくすなという話である。

これぼくの!!!
遺失物取得フロー

幸いなことに、翌朝には遺失物一覧に登録されており、広州のスタッフに代わりに取りに行ってもらうことになった。委任状(委託書)の原本が代理人にないとダメかと思われたが、広州のスタッフのゴリ押しにより、自筆原本の写真とパスポートの写真で受け取りの対応をしてもらえた。最後はビデオ通話を繋ぎ、目の前で携帯の暗証番号ロックを解除することで本人であることを認めてもらった。

その後、広州から顺丰(宅急便)で上海まで送ってもらい、私の携帯置き去り事件は2日間で幕を閉じた。ちなみに携帯電話は原則エア便対応不可である。

携帯を取り戻してすぐに移動

今回の騒動はとにかく情けなく、アホらしい。という気持ちがほとんどだが、それよりも携帯電話一つだけで全ての社会生活が成り立ってしまう世界に飼い慣らされ過ぎて、携帯をなくすということ自体想像ができていなかった。反省点としては

・家に帰れる程度の現金は持っとけよ
・せめて銀行カード(デビットカード)は手元に持っとけよ

現金は嫌がられるとはいえ、使えることには間違いないので、銀行カードさえ持ってなかったのはただただアホである。あとは

・スマホ複数持ちなりの対策をしとけ
・日本のsimカードも念の為持っとけ

今回iPhoneを探す機能で、最初から日本のアカウントと中国のアカウントを友達登録しとけば、少なくとも所在地についての確認でテンパることはなかったと思われる。また、日本の国際ローミング対応のsimカードも、緊急時には使用料とか言ってられないので手元に持っといたほうが良かったと思っている。

…とりあえずApple Watch買って会社携帯をペアリングするか!!

(おわり)

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