エンタメの裏側

善とか悪とか、
倫理とかモラルとか。
たぶんきっとそんな話じゃない。
エンタメの裏側はもっとシビアだ。


ただのイベントスタッフの肌感覚でしかないけれど、おたくが思ってるよりもずーっとずーっと、スタッフやタレントはマナー違反にシビアだ。もしかするとマナー違反に対するヘイトはネットの海で学級会を開いてるおたくたちよりも強いのかもしれない。だってリアルタイムでダイレクトに迷惑を被るのはスタッフやタレント。いつだってどこだってこっち側の人間たちなのだから。
好きの反対は無関心とよく言うけれど、まさにそれに近い。こっち側の感情は虚無でしかなくて、憎しみとか怒りとかそんな感情すらも生まれないことだってある。とりあえずわたしが出入りしている現場の雰囲気はそんなかんじだ。

わたしたちスタッフは赤の他人だからまだいいんだけど、気の毒なのはタレントさんの方だ。おたくの不始末はタレントの不始末。タレントの手に余るおたくなんて客でもなんでもないしどこからもお呼びじゃないのは明らかなんだけど、でもこうやって「タレントのイベント」に来てる以上は「タレントのファン」って括るしかない。するとピリついた現場で凍り切ったスタッフの視線を浴びながら渋い顔をしたタレントが不承不承謝る、なんていうトンデモイベントが爆誕することになる。まあそんなおたくを飼い慣らせないタレントが悪いといえばそれもそうだけれど、もちろんタレントが全面的に悪いと言い切れる訳もなく。本当に気の毒だ。



タレントの顔に泥を塗る、なんてよく言うけれどこれはそんなかわいいものじゃない。
タレントを矢面に立たせて火の粉を浴びせるのに限りなく近い。そんな気がしている。

いつもそうやって矢面に立たされるのはタレントただ1人で、決しておたくではない。
そして、スタッフでも事務所の人間でもない。

エンタメの裏側はタレントを守れない。