No.005 【セリアン/Therian】とイジメ
【セリアン/Therian】はその性質上、社会的に非常に不利な状況に立たされることが多いです。
私が在籍していた海外のコミュニティでは、実に90%以上の【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】が「幼少期にイジメられた経験がある」とアンケートに答えていました。
【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】は、自分の種族に根差した本能行動をごく無意識的に行ってしまう事が多く、特に幼少期はそういった行動に歯止めが効かない場合があります。
「人前でどのように振舞えばいいか」は普通の人間の子供と同様に【セリアン/Therian】も【アザーキン/Otherkin】も年齢と共に徐々に学んでいくものですが、その過程でどうしても普通の人間の方々と自分自身との違いに悩み苦しむ事が多いのだと思います。
元来、人間はコミュニティの中で弱い者や、変わった行動をとる者を攻撃する傾向があります。それは人間の社会性故の行いであると共に、「自分はそのコミュニティの中で生き残りたい」という一種の生存本能であると考える研究者も多いです。
一般的な人々から見て【セリアン/Therian】は弱者か、少なくとも異端者に映るでしょう。そのため、【セリアン/Therian】はイジメの標的になってしまう事が多いのだと思われます。
ただでさえ【種族違和/Species Dysphoria】という大きな悩みを抱えがちな上、本人のアイデンティティの特異性を揶揄されるようなイジメや差別を受けた場合、重度の鬱やPTSDにまで発展する恐れがあります。
本場アメリカでは【セリアンスロピー/Therianthropy】や【臨床的人狼症/Clinical Lycanthropy】の研究が進んでおり、解離性人格障害、統合性失調症、双極性障害、或いは脳が外傷や内出血や薬物等により物理的な損傷を受けた場合や錯乱状態にある場合に「重度の」【臨床的人狼症/Clinical Lycanthropy】に至るとされているようです。
鬱やPTSDによる人間社会への不適合や忌避反応は【臨床的人狼症/Clinical Lycanthropy】には該当しないと切り分けて考えられており、鬱やPTSDの治療を行えば精神的に傷付いた【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】であっても十分に社会復帰が可能とされています。しかし残念ながら日本では【臨床的人狼症/Clinical Lycanthropy】の研究がまだまだ進んでいないのか、「自分は人間ではなく狼だ」という「患者」の主張を重要視するあまり、「重度の」【臨床的人狼症/Clinical Lycanthropy】だと「誤診」してしまいがちな傾向にあるものと思われます。
もちろん、自分の【セリオタイプ/Theriotype】は【セリアン/Therian】にとって非常に重要なものであるため、まず真っ先に主張しがちです。
自分が人間以外の動物であるが故に自分が被った身体的・精神的苦痛を、誰かに吐露したい場合が多いからでしょう。
薬物治療により本人の【セリアンスロピー/Therianthropy】を強引に抑えつけるという対処法もなくはないのですが、鬱やPTSDの問題の根本原因が解明されればカウンセリングによる治療やセリアン仲間との対話による「居場所の心理効果」や安心感の提供によって症状が劇的に改善される例もあります。
私のnoteでは【臨床的人狼症/Clinical Lycanthropy】は「治すべき病気」、【セリアンスロピー/Therianthropy】は「治す必要のない本人の特徴」という立場を一貫して維持します。本人の中で何が「治すべき病気」で、何が「治す必要のない特徴」なのかを切り分けていき、「治すべき病気」を一つひとつ丁寧に治療していく事が大切だと感じています。