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【セリオタイプ/Theriotype】の特定の仕方

 以前の項でもお伝えしたとおり、誰もが最初から「正しい」【セリオタイプ/Theriotype】や【キンタイプ/Kintype】を特定できるわけではありません。【セリアンスロピー/Therianthropy】や【アザーキニティ/Otherkinity】に触れてまだ間もない方が、自分の種族を特定出来ずに戸惑ってしまう事はむしろ当たり前だと存じます。
 本稿が「本当の自分」を探す一助になればと存じます。

そもそも【セリアン/Therian】なのか【アザーハーテッド/Otherhearted】なのか

 何度も申し上げているとおり、【セリアン/Therian】は「生まれつき動物である者」なので、後天的に「なる」事は出来ません。単に「自分が【セリアン/Therian】であると気付くか否か」を選べるだけです。

 今までの項では若者の文化に対して散々否定的な事を書いてしまったかもしれませんが、私が異を唱えているのはあくまでも

セリアンを騙って他人に迷惑をかける行為」と
セリアンスロピーとは元来関係のない物事をセリアンと結び付けて誤った情報を宣伝する行為

 この二つだけです。
「セリアンではないこと」は悪い事でもなんでもないです。むしろ「普通」です。
 ですので、【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】のコミュニティに入って「やっぱり自分は【セリアン/Therian】でも【アザーキン/Otherkin】でもなかった」と気付く事は全く悪い事ではありません。むしろ勘違いであったことに気付き、その分だけ本当の自分に一歩近付けた事は望ましいことです。

【セリアン/Therian】ではないけれど、「特定の動物種に対して特別な思い入れがある」方の事を【アザーハーテッド/Otherhearted】といいます。この辺りの事は【キン/Kin】と【キース/Kith】の項で説明しましたが、

【キン/Kin】が「自分の種族」
【キース/Kith】は「自分の種族ではないけれど、とても強い親近感を覚える種族」です。

【セリアンスロピー/Therianthropy】や【アザーキニティ/Otherkinity】に触れて間もない方は、この区別がつきにくいかと存じます。元来【キン/Kin】と【キース/Kith】の精査は年単位の時間をかけてじっくりと行っていくべきものです。焦らず少しずつ確実に自分自身と対話していく事が、最終的には本当の自分を見つけ出す近道になるかもしれません。

「生涯通してずっとその種族に対して【自己同一感覚/That's me! Feeling】を覚える」種族が【キン/Kin】です。
「一時的に【自己同一感覚/That's me! Feeling】を覚えたけれど、何年か経ったり環境が変わったりしたらそうでもなくなった」種族が【キース/Kith】です。
 実際に【自己同一感覚/That's me! Feeling】が薄れるか否かは、時間が経過しないと分からない事が大半です。
 ですので【自己同一感覚/That's me! Feeling】を覚える種族に対しては、とりあえず「自分の【セリオタイプ/Theriotype】かもしれない」、「自分は複数の【セリオタイプ/Theriotype】を持つ【ポリセリアン/Polytherian】かもしれない」と仮定してしまっても良いかもしれません。
 後程自分自身の本質について深く考える機会が訪れた時に、「この【セリオタイプ/Theriotype】は本当に自分の【キン/Kin】なのだろうか? それとも【キース/Kith】なのだろうか?」と考え直してみれば良いかと存じます。

 ただ、ごく軽微な【自己同一感覚/That's me! Feeling】を覚えただけで【セリオタイプ/Theriotype】を10も20も追加してしまう事はお勧めできません
 一般的な【ポリセリアン/Polytherian】の方が持っている【セリオタイプ/Theriotype】は2つか3つ、多くても5つか6つです。
「こんな気持ちになる時もあるけれど、普段は違う」という種族は【キン/Kin】ではなく【キース/Kith】である可能性が非常に高いです。少し親近感を覚えただけで「自分はこの種族だ! このキャラクターだ!」と安易に自己投影してしまうのはあまり良い事だとは思えません。

「色々な属性を取り払っていって、最後に残るたった一つ」が【キン/Kin】です。しかし「どちらも取り除いたら自分が自分ではなくなってしまう」ものがいくつかあるなら、その場合は【ポリセリアン/Polytherian】という事になるのでしょう。

 また、自分の置かれている環境が変わってストレスの多い状況から解放された場合、【キン/Kin】だと思っていたものが【キース/Kith】に変化する事もあります。「自分の【キン/Kin】ではない動物種に【シフティング/Shifting】する【カメオ シフト/Cameo Shift】」が発生していたわけです。

 代表例は、抑圧された環境で自由に対して憧れを抱いている場合、「自由の象徴」である「翼」や「力の象徴」である「角」が自分の【セリオタイプ/Theriotype】に追加される事があります。結果、本来はただの狼であった【セリオタイプ/Theriotype】が「ウィングドウルフ(翼の生えた狼)」や「デモニックウルフ(悪魔のような狼)」に変化する場合があります。また、そもそも「鳥」や「ドラゴン」や「悪魔」そのものを自分の【セリオタイプ/Theriotype】や【キンタイプ/Kintype】だと感じることもあります。

 これは実に多くの【セリアン/Therian】が経験する現象で、決して「間違い」ではありません。苦痛に満ちた環境から自由になる事に憧れたり、或いは状況を覆すに足る圧倒的な力に憧れたりする事は何ら不思議な事でも悪い事でもありません。その時々での感情を尊重して、「今の自分にはどうしても必要だ!」と考えるのであれば、その直感に従う事をお勧めします。
 時が経って後から改めて考え直してみて、「あの時は翼や力が必要だった、でも今はもう必要ない、普通の動物として生きていける」と言えるほど、自分を取り巻く環境が改善しているのであれば、それはとても良い事です。
「正解や幸福に近付いていくプロセス」の中で、【自己同一感覚/That's me! Feeling】が【キン/Kin】なのか【キース/Kith】なのか分析できた事を好意的に受け取った方が良いでしょう。

 また、仮に「本物の」【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】であったとしても、【覚醒/Awakening】して「自分が【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】である」と自覚する事が必ずしも本人にとって幸福に繋がるかどうかは分かりません
 一般的には【覚醒/Awakening】を経験すると【種族違和/Species Dysphoria】が強くなる、より一層自分の【セリオタイプ/Theriotype】を意識してしまって本来の自分の在り方と今自分が置かれた環境の差異を意識してしまって苦しみが増すとも言われています。ですので状況次第ではむしろ【覚醒/Awakening】しない方が良い方もいらっしゃるかもしれません。

 ですから、まずは

「人間として普通に生きていきたい」のか、
 それとも「動物として生きていきたい」のか、

 本人の意思を確認する事が大切です。
【セリアン/Therian】も【アザーキン/Otherkin】も先天性の特性ですが、【覚醒/Awakening】するか否か、自分の特性に対して自覚的になるか否かは、まだ選ぶことができます。

 また、

「人間以外の動物になりたい」という願望を持っているのか、
それとも「既に人間以外の動物である」という確信を持っているのか、

 これも【セリアン/Therian】か【アザーハーテッド/Otherhearted】かを見分けるためにとても重要なファクターです。

自分の気持ちの最終確認

「人間として普通に生きていきたい」か、それとも「動物として生きていきたい」か という質問で、「動物として生きていきたい」とお答えになった方。
 なおかつ
「人間以外の動物になりたい」という願望を持っているのか、それとも「既に人間以外の動物である」という確信を持っているのか という質問で「既に人間以外の動物である」という確信を持っているとお答えになった方。
 このどちらもに当てはまる方のみ、【セリアンスロピー/Therianthropy】や【アザーキニティ/Otherkinity】の扉を開くのが良いでしょう。

 逆に、「人間として普通に生きていきたい」方は、SNS上に既に様々なコミュニティがあります。そのどこかに参加すれば、自分の居場所が見つかるかもしれませんし、本当に打ち込める趣味や生き甲斐を見つけられるかもしれません。

 また、「人間以外の動物になりたいという願望を持っている」方も、SNS上には趣味でロールプレイしている方のサークルが沢山あると聞いた事があります。或いは【ケモナー/Furry】や【着ぐるみ/Fursuit】や VRChat のコミュニティに入るのもいいかもしれません。ものによっては始めるのにかなりの金額がかかる趣味もありますが、初期投資がさして必要にならないものもあります。気軽に始められて気軽に辞められるため、「試しに動物になってみたい」という願望を叶えるだけなら、ロールプレイやメタバースを始めてみるのもいいのかもしれません。

 本当に【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】として生きていくには、正直相当な覚悟が要ります。「普通の人とは違う存在」として生きていくのはとても大変な事なのです。
 だから、【セリアンスロピー/Therianthropy】や【アザーキニティ/Otherkinity】を趣味の延長線で気軽に始めて気軽に辞められるものだとは思わない方がいいですし、「動物になってみたい」、「違う自分になってみたい」という変身願望や趣味の一環でしかないなら、ロールプレイヤーのサークルや【ケモナー/Furry】や【着ぐるみ/Fursuit】という既に成熟したコミュニティに参加する方が良いかと存じます。

「自分は獣である」という確信を持っていて、なおかつ「獣として生きていく」という決意がある方のみが、【セリアンスロピー/Therianthropy】や【アザーキニティ/Otherkinity】に深くかかわるべきだと私個人は思います。

【セリオタイプ/Theriotype】の特定

 実際に【セリオタイプ/Theriotype】を特定するには 動物学(Zoology) や 動物行動学(Ethology) の知識が必要不可欠であると断言してもいいでしょう。
 少なくとも【セリアンスロピー/Therianthropy】に触れてまだ間もない方が、独力で自分の「本当の」【セリオタイプ/Theriotype】を探し出すのは困難を極めます。 動物学(Zoology) や 動物行動学(Ethology) に詳しい方が【セリオタイプ/Theriotype】を特定する手伝いをする事が望ましいです。

 仮に自分が狼だと思った場合、本当に狼かどうかを判断するには本物の狼の生態を詳しく知らなければYesともNoとも言えません。狼について何もしらなくても狼のキャラクターのフリをする事は出来てしまいますが、それは【セリアンスロピー/Therianthropy】ではなくロールプレイです。

 実際に【セリオタイプ/Theriotype】を特定するには、「絞り込み/Narrow down」という方法が用いられる場合が多いです。【セリアン/Therian】の多くが何らかの形でコミュニティに参加する前から既に【自己同一感覚/That's me! Feeling】を覚えている場合が多いため、自分自身の【キン/Kin】に関して何らかの特徴を朧気ながらでも把握している場合が多いです。【セリオタイプ/Theriotype】はその断片的なヒントを手掛かりにして探していきます。

 以下のような項目を一つ一つ調べていくと、自分の【セリオタイプ/Theriotype】がどのようなものか目星がついてくるかもしれません。

・肉食動物か草食動物か
・体は大きいか小さいか
・マズル(口吻)は長いか短いか
・耳は大きいか小さいか、どのような形をしているか
・牙の有無
・角の有無
・尻尾の有無
・体毛の有無
・羽毛の有無
・翼の有無
・飛ぶか否か
・泳ぐか否か
・足は肉球か蹄か。蹄であれば指は何本か
・暑い方が好きか寒い方が好きか
・雪には慣れ親しんでいるか否か
・砂漠には慣れ親しんでいるか否か
・水辺は好きか。好きならば淡水か海水かどちらが好きか
・人間に慣れ親しんでいるか、それとも恐ろしいと感じるか
・群意識を持つか否か

 このような項目を一つ一つチェックしていくことで、かなり動物種の絞り込みが出来るかと思います。

 例を挙げてみましょう。

・肉食動物か草食動物か → 肉食動物
・体は大きいか小さいか → やや大きい
・マズル(口吻)は長いか短いか → 長い
・耳は大きいか小さいか、どのような形をしているか → 三角の耳、やや大きい、頭頂部にある
・牙の有無 → ある
・角の有無 → ない
・尻尾の有無 → ある
・体毛の有無 → ある
・羽毛の有無 → ない
・翼の有無 → ない
・飛ぶか否か → 飛ばない
・泳ぐか否か → 泳がない
・足は肉球か蹄か。蹄であれば指は何本か → 肉球がある
・暑い方が好きか寒い方が好きか → 寒い方が好き
・雪には慣れ親しんでいるか否か → 慣れ親しんでいる
・砂漠には慣れ親しんでいるか否か → 慣れていない
・水辺は好きか。好きならば淡水か海水かどちらが好きか → 好きでも嫌いでもないが、淡水の方が好ましい
・人間に慣れ親しんでいるか、それとも恐ろしいと感じるか → 恐ろしいと感じる
・群意識を持つか否か → 持つ

 この場合は狼かもしれません。Wikipediaや狼について詳しい生態が記されている情報源を調べて、生息域を調べると、詳細種まで判明するかもしれません。
 オオカミと一口に言ってもホッキョクオオカミ、ヨーロッパオオカミ、アラビアオオカミ、グレートプレーンズオオカミなど、実に様々な詳細種が存在します。詳細種まで特定できるとより自分の本質に迫れるかと思います。生息地域で詳細種が分かれている場合が大半なので、その詳細種の分布図を見て、生息域の地域の自然の写真を見て親近感が湧くかどうかを判断するのも一つの目安になるかと思います。

 とはいえ、実際に【セリオタイプ/Theriotype】を特定するのはかなり困難なため、もし可能なら 動物学(Zoology) や 動物行動学(Ethology) に詳しい経験者からアドバイスがもらえるのなら、より正確な【セリオタイプ/Theriotype】の特定に至る可能性が高まるかと存じます。

 本稿が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。