No.006 【覚醒/Awakening】と【自己同一感覚/That's me! Feeling】
【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】がそれぞれ「自分はセリアンである」「アザーキンである」と確信する瞬間の事をコミュニティでは【覚醒/Awakening】と呼んでいます。
【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】の多くは「自分は人間ではなく何か違う生き物だ」という感覚を以前から漠然と持ってる場合が多いのですが、はっきりそうであると自覚する体験を経た当事者が多いです。
大半の当事者が自分の種族と強いシンパシーを感じる、自分の【セリオタイプ/Theriotype】の動物を見た瞬間に「これこそ自分だ!!」という強い感覚を覚える事が多いです。
この「これこそ自分である」という感覚は【自己同一感覚/That's me! Feeling】と呼ばれています。
【自己同一感覚/That's me! Feeling】がきっかけとなって【覚醒/Awakening】に至る【セリアン/Therian】が多く、【覚醒/Awakening】と同時に自分の【セリオタイプ/Theriotype】の発見も起こる場合があります。
とはいえ、全ての【セリアン/Therian】が【覚醒/Awakening】した瞬間に最初から「正確な」自分の【セリオタイプ/Theriotype】を自覚できるわけではありません。
かくいう私自身も最初は自分自身の事を漠然と「自分は人間ではなく犬だ」と考えており、詳細な犬種までは特定出来ていませんでした。自分の【セリオタイプ/Theriotype】に確信が持てるようになったのは、数年前に海外の【セリアン/Therian】のコミュニティに参加して、狼の【セリアン/Therian】と犬の【セリアン/Therian】、そして狼犬の【セリアン/Therian】と対話を重ねた結果、「自分は純血の狼でも純血の犬でもない、混ざりものだ」という結論に至りました。私の場合、自分の【セリオタイプ/Theriotype】を特定するために実に20年以上の時を費やした事になります。それほど自分の「本当の」【セリオタイプ/Theriotype】を見つけ出す事が難航する場合もあります。
そもそも自分の【セリオタイプ/Theriotype】を特定するためには、自分がその動物種について深い知識を得なければ、本当に自分がその種族かどうかを判断できません。
ですので自己探求を進めていくうちに【セリオタイプ/Theriotype】の認識が変わる方もいらっしゃいます。これは「成長すると違う動物に変化する」のではなく、「自己理解が進んで本来の自分の【セリオタイプ/Theriotype】に近付いていく」のだと解釈してください。
【キン/Kin】と【キース/Kith】
【セリアン/Therian】にとっての「自分の種族」が【セリオタイプ/Theriotype】。【アザーキン/Otherkin】にとっての「自分の種族」が【キンタイプ/Kintype】である事は以前にも説明しました。これら「自分の種族」の事をまとめて【キン/Kin】と呼ばれています。
しかし、「自分の種族ではないけれど、その種族の動物に対して特別な共感をしてしまう」という経験を多くの【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】が持っています。この「自分の種族ではないが、特別強く共感する種族」の事を【キース/Kith】と言います。
(※発音そのものは「キス」に近いのですが、「Kiss」との混同を避けるために私のnoteでは敢えて「キース」と表記しています。)
【キース/Kith】は【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】の自己探求の旅の最中に生まれる場合が多いです。最初は「これこそが自分の種族だ」と考えていた種族が、自己理解が進んで「やっぱり違った」という結論に至る場合も少なくありません。
前述のとおり、最初から「正しい」自分の種族を完璧に言い当てられる【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】の方が珍しく、多くの紆余曲折の末にようやく自分の「本当の」種族に辿りつく場合が多いです。
その場合、「途中までは自分の種族だと考えていたもの」が「自分の種族ではないけれど、強い親近感を覚える」という形で本人の中に残留する場合もあります。【キース/Kith】はそうした過程で生まれる場合もあります。【キン/Kin】ほどではなくとも、【キース/Kith】も【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】の中でとても大切な感覚として残り続ける例もあるのです。
自分の【キン/Kin】に辿りつくまで
自分の【セリオタイプ/Theriotype】の動物に関する正しい情報と触れ合えるか否かは、運の要素が強いと言わざるを得ません。
常日頃から野生動物の特集をする番組などを見ているか、図書館で動物図鑑を読む機会があるか、日常的に犬猫など動物と触れ合う機会があるかなど、様々な要因が本人の動物に対する知識、経験、興味関心を左右します。
また、ジャングルの奥深くや険しい雪山など、人間が滅多に到達できない場所で暮らしている動物は、必然的に動物学や動物行動学の観察データが少なくなりがちです。日本に生息していない動物であれば、日本語の文献も不十分になっていってしまいます。狼やライオンやトラのような「有名どころ」の動物ならば動物園で見かける事もあるかもしれませんが、カモノハシ、ワオキツネザル、コウロコフウチョウなど特定の地域にしか生息していない生き物になると、日本の動物園では滅多に見かけません。
また、シロナガスクジラのような巨大な生き物になるとそもそも人工の環境で飼育するのが不可能に近いです。そういった動物たちにはホエイルウォッチングなどのツアーに参加してこちらから近付かなければ出会う機会が訪れません。誰もが手軽に参加できるものでもないでしょうし、敷居が高いと言えます。
そもそも【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】として【覚醒/Awakening】することが本人の幸福に直結するかは定かではありません。【セリアンスロピー/Therianthropy】や【アザーキニティ/Otherkinity】そのものに対して興味関心がないのであれば、たとえ「本物の」【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】であっても【覚醒/Awakening】せずに普通の人間として暮らしていった方がラクかもしれません。
何度もお伝えしているとおり、【セリアン/Therian】も【アザーキン/Otherkin】も生まれ持っての特性です。「なる」ことも「辞める」こともできません。
しかし、「自分が【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】である事に気付くかどうか」は別問題ですし、「自分の持つ【セリアンスロピー/Therianthropy】や【アザーキニティ/Otherkinity】を大切にして生きるか、それとも自分の【セリアンスロピー/Therianthropy】や【アザーキニティ/Otherkinity】をなかった事にして「普通の人間」として生きるか」も別問題です。
「どう生まれるか」は事実上選択の自由がありませんが、「どう生きるか」はまだ自分で選ぶことが出来ます。
とはいえ、一度【覚醒/Awakening】を経験してしまった【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】が【覚醒/Awakening】前の状態に戻る事は限りなく不可能に近いです。
元々何となくでも「自分は普通の人間とは違う」、「自分は人間ではなく他の生き物だと感じる」という感覚を持って生きている【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】が大半になります。そういった感覚を無理矢理封印して生きていくのは、多くの【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】にとって大きな苦痛となってしまう場合が多いです。
そうした方々の悩みを少しでも解決する手助けを当noteが出来ればと考えている次第です。