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聞く人を引き付ける今上陛下の素敵なスピーチ力

JK夫妻の現役時代の会見の残念さについて検証しましたが、これと真逆なのが今上陛下の会見。

陛下の会見は皇太子時代から(厳密には浩宮時代から?)毎回パーフェクトな内容ですが、今回は宮内庁HPにアップされている一番古い1993年2月23日の誕生日会見会見から、陛下のスピーチがどれだけ人を引き付ける魅力があるか検証してみましょう。

①自虐エピソードもユーモアを交えて

この会見では冒頭に記者から「昨年の誕生日会見では、チャールズ皇太子殿下と晩婚の金メダルを争うかもしれないと言われましたけれども<中略>独身生活もあとわずかですが、今どのような感慨をお持ちですか」という質問が出ましたが、これに対する陛下のお答えは

この度の皇室会議を経て,婚約が内定したということで,今,私としてはうれしい気持で一杯であります。確かに,今おっしゃったように独身時代の長さという点に関していえば,チャールズ皇太子殿下を上回って,言って見れば金メダルに輝くということになったわけですけれども,今,思い返してみても私自身として非常に充実して,そして楽しく,そして有意義な独身生活を送ることができたというふうに思っております。その独身生活もそろそろ終わりに近づくと思うと,ある趣の感慨を覚えますけれども,この婚約内定の喜びははるかにそれを凌駕するものであります。

独身時代にやっておきたいことは,恐らくほぼやったというふうに思います。今年新たにチャレンジしたいことといえば,新たなるこの結婚生活のスタートを,どう充実したものにするかということではないかと思います。

今でこそアラフォーで初婚を迎える人も増えましたが、当時はお妃選びが難航していた上にその前に弟のA宮さんが24歳で結婚。婚約会見でも弟から「30歳で結婚すれば上出来」と嘲笑された経緯もありました。

しかしそんな弟の失礼な仕打ちにも「晩婚の金メダル」とさらっとユーモアで返す懐の大きさを見せてくれました。

まぁ陛下の場合は小和田雅子さんという知性、美貌、お人柄と全てにおいてパーフェクトな女性のハートを射止めたという点では金メダルどころか国宝級の偉業を成し遂げましたけどね。

②シンプルで分かりやすい

陛下の会見は非常にシンプルな言葉で分かりやすいです。その言葉も前向きな気持ちが伝わる内容で聞き手も「そうそう!」って共感できるんですよ。

特に生まれた瞬間から「将来のの天皇」という宿命と決して「暖かいホーム」とは言えない家庭環境もあってずっと制約の多い生活だったはずですが、そんな苦悩を微塵も見せず「やることは全てやり遂げた」という清々しい達成感と、「新しい結婚生活に思いを馳せる」という高揚感がビンビン伝わってきますね。(もっともこの後えげつない状況に晒される事になるのですが・・・)

③全方位への感謝

同じ会見の関連質問では「この前の皇室会議以降,国民が一つとなって,子供からお年寄りまで自分のことのように,今,殿下のご婚約を祝って,(中略)殿下は,今,どう思われますか。それから僭越な言い方であるんですけども,国民に対する気持ちを頂けますか。それから雅子さんの気持ちも。もし,聞いていらっしゃれば。」という質問に対するお答えは

そのように多くの方々が,この度の婚約の内定を喜んでいただいたということを私自身として大変うれしく思っております。私共二人,これから本当に,一生懸命,公務に共に務めて参りたいというような所存でおります。今,本当に皆さんに対する感謝の気持ちで一杯であります。恐らく,これは雅子さんについても同じような気持ちでいると思います。ただ詳しいことは,ちょっとポケットベルが今日ありませんので。

陛下のプロポーズを受け入れた雅子皇后だけでなく、婚約内定を祝福する国民の皆さんへの感謝が伝わりますよね。

しかも他の会見からも伺える陛下の凄い所は、散々一家を虐げてきた両親にも感謝の念を示す点でしょうか。

一般家庭ならあそこまで身内がえげつなく嫉妬深い人格だと縁切りする事も可能でしょうが、一切恨み言も述べず尊敬の念を示す辺りが我々庶民とは違う精神ステージに到達していると思います。(これは雅子皇后や敬宮さまにも言えますが)

さらに陛下のスピーチが共感される点は

④聞き手の顔を思い浮かべて

これは敬宮さまの成年会見のエピソードから引用ですが、陛下のスピーチの魅力は常に聞き手と一体感を感じさせる点にあると思います。

記者
「差し支えがなければ,どのようなことで緊張が和らぐのか,そのことをお聞かせいただけますか。」

殿下
「父から聞きましたのは,聞いてくださっている皆さんの顔,お一人お一人の顔を見ながら,目を合わせつつ,自分の伝えようという気持ちを持って話していくというのがコツだというふうに,他にもございますけれども,そのようなことをいろいろ教えていただきました。以上でございます。」

皇族の会見は基本的に事前に内容がある程度決まっているとはいえ、大勢の記者の前で話すのは緊張するもの。まして平成は回答の一部を切り取られ悪意あるバッシングに繋がった事は一度や二度ではありませんでしたが、陛下は聞き手一人一人に紳士に向き合い語りかける事を心掛けていたように思います。そしてそのスピーチスタイルは愛娘の敬宮さまに引き継がれましたよね。

聞き手を惹き付ける陛下のスピーチ力。ビジネス等の日常の様々なシーンで参考になるかもしれませんね。






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