無敵の頃

『りぼん』派と『なかよし』派、私は圧倒的に『りぼん』であった。そしてもっとも楽しみにしていた漫画のひとつが間違いなくちびまる子ちゃんだった。それはまだまる子のアニメが始まるより何年も前、私がまる子とほとんど同い年の頃、これまで誰も読んだことのないテイストのこの漫画は、私や仲良しの友達を虜にした。月初めの「りぼん」の発売日を本当に心待ちにしていたし、買ってすぐ読み終わっては、また1ヶ月待つなんて長すぎる、とあっという間に焦がれるような気持ちになったものだった。面白いフレーズを何度も反芻してはみんなでケラケラと笑い、まる子のイラストを答案用紙の裏に描き、行ったことのない清水や静岡に思いを馳せ、古い昭和の時代の残り香に妙な居心地の良さを感じた。


今でも思い出す、アニメが始まったときのことを。小学生の私たちはまる子がアニメになったことが本当に誇らしかった。自分たちが大好きだと思っているものを大人も認めて、それが『サザエさん』の前に毎週見られるなんて!やっぱりまる子は最高なんだ!という気持ちでいっぱいだった。まる子はどんな声なんだろうとわくわくして、最初にTARAKOさんの声を聞いたときはびっくりしたけど、すぐにまる子にぴったりだと思うようになった。オリジナルストーリーでないアニメからは、まる子の持ち味であるシニカルなところや味のあるディテールが削られ、またお話もなんとなく単純化されていったことはちょっぴり残念だったけど、それから20年以上、アニメのまる子は日曜の夜に待っていてくれる家族みたいな感じだった。


小学生だった私たちには憂鬱なことなど何もなく、ただまる子を読んで笑っていればよかった。自転車に乗りながら、おどるポンポコリンを歌っていた無敵の日々。それをくれたさくらももこさんに御礼を言える機会はもちろんなかったのだけど、心からご冥福をお祈りしています。そしてありがとうございました。

読んでくださってありがとうございます。頂いたサポートは、私が新しい何かに挑戦するときに使わせて頂きたいと思います。そのお話は、きっとまたnoteで!