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アニメ「最弱テイマーはゴミ拾いの旅をはじめました1〜6話」を見て【原作改変】※2/25追記。追記箇所原作ネタバレ注意

初めに、私はこの「最弱テイマーはゴミ拾いの旅をはじめました」のweb版(小説家になろう公開中)を読んでいます。そして、web版のファンである。
コミカライズ・ノベライズは未読(ノベライズは落ち着いたら買おうと考え中。コミカライズは個人的にちょっと見づらく、1話だけ試し読みして終わってます)

その上で、今季アニメ「最弱テイマーはゴミ拾いの旅をはじめました」が一区切りついたので感想と意見を纏めようと思いました。
なぜならこの作品は、所謂「原作改変アニメ」で、それもちょっとした改変どころか大胆に話の順番をも変えているというものでした。
その為、パッと見る限りコミカライズのファンを中心に大炎上しており、アマプラでは星1が目立ちます。(1月の改変騒動に伴う事件もありましたし、皆、ピリピリしているなと言う感じです。)
その反面、アニメレビューや反応集やってるYouTuberには評価が高い人も居て、不思議な事になっています。
そんな状況下でなんか色々とモヤッとするので、整理を兼ねての感想文です。

【本題】私の感想及び意見
正直に申し上げて、私はこのアニメは面白いか面白くないかだけで言えば面白い部類に入るんじゃないかと思います。
ただし、面白さの基準に原作準拠が入ってる人には確かに楽しめないだろうなというのも分かります。
(アニオリ回が好きかどうかに感覚が近いかもしれません)

この作品、序盤から「アニオリ祭り!」なのではなくて、構成を最初からめちゃくちゃ弄ってるのです。
原作で1話になってるところを3話に移動したり、原作でかなり最近に出た話を今にやったり…結局これがものすごく賛否両論なんですよね。
多分コミカライズでもまだやってない部分があったりするっぽいので、コミカライズ勢からしたら余計にアニオリっぽさがすごいのかなと思います。
確かに、アニオリ部分もあるんですが、それ以上に構成を弄りまくってる方が気になるって人は多そう。

◆問題点①「アニメなどの映像化は原作に忠実で有るべき」という意見。
 こちらはごもっともで、私も基本的にはそっち側の意見です。
できるだけ原作に寄せてほしいと思います。
ただ一方で、学問でメディア論を少し齧った事があるので、アニメ(映像)と原作(小説)で、忠実な表現なんてのはそもそも不可能という制作側の苦労も知っております。

例えば、この「最弱テイマーはゴミ拾いの旅をはじめました」の話の肝である主人公アイビーの『前世の記憶』なんですが、原作(小説)は地の文寄りのセリフなんですよね。
主人公アイビーは地の文と会話してる感じが所々あります。
小説は勝手に地の文を人の声として補完できますけど、映像化するとその地の文のあたりをすっ飛ばすと、どうしても独り言っぽい表現になるのは仕方のないことなのかなと。
(レビューで、主人公の独り言・一人芝居感がなんか嫌・ダルいという意見を見かけましたので)

◆問題点②主人公アイビーの独り言について
 いわゆる『脳内の私』みたいなのとの会話形式には出来なかったのかのかと思わなくはですが、どっちにしても側から見たら挙動不審なので、変えたところで評価はあまり変わらなかったのかなと…
視聴者側からしたら脳内の私との会話の方が分かりやすいといえば分かりやすいんですが、アイビーの場合、原作からして前世の私はそこまでアイビーの記憶・感情・人格に干渉できない設定なので(前世日本と似たようなものを見かけてツッコミ入れるとか、前世日本に馴染みのない狩猟(動物の皮剥ぎなど)で驚くとか、小さなもの)、脳内の私と会話にするとちょっと前世が干渉し過ぎる感じはあります。

 話は逸れましたが、そういう文章構成なのでそもそも原作が他媒体に変換するのがかなり難しい作品だと思います。(恐らくこの苦難はコミカライズでも起こっています。コミカライズの方も、説明がかなり飛ばされていますので、なぜ捨て場がこんなに有るのか、などの設定がご都合主義という意見が既に存在していました)
視聴者側に分かりやすくする為の改変は、この作品においては致し方ないと思うのです。
アイビーの独り言・一人芝居は、私は割とこの辺上手く映像に昇華してるんじゃないかなと思ってます。

◆問題点③構成の改変(話の順番入れ替え)について
 問題の構成ですが、新規勢への配慮が分かる利点とそれによって起こった誤解の微妙な点、両面あると思いました。
アニメでは原作1話~にあたる部分(星無しと呼ばれてから迫害を受けた3年間)を飛ばし、追放から始め、特段説明のないまま2話まで追われ続ける生活をし、3話にようやくそもそも追われている経緯についての説明回が入ります。
この手法、上手いとも言えるし、それによって引き起こる弊害もあったなと思います。

物語プロローグ:
主人公アイビーは、スキルがテイマーで『星無し』でした。
この世界では、星無しとはとても”珍しい存在”です。皆、基本的に星1以上はある人が大半を占めています。
そんな世界に生れ出た星無しの彼女は村から『神に見放された子ども』『災いを招く子ども』として迫害され、遂には命を狙われます。
さて、彼女は村から逃げられるのか。

というのが最初のあらすじです。
アイビーはまだ8歳の女の子ですが、あまりにも過酷な身の上です。
初回からそんな地獄から始まるのか、と言われたら新規勢は結構キツいと思います。
また、この話はあまり『ざまぁ(報復)』要素がありません。
序盤から胸糞・理不尽な迫害⇒追放⇒更には追手という2重苦3重苦ありますが、それがスカッとする事は多分1クール中には起こらないと思います。
つまり、原作通りにアニメを進めた場合、序盤からど鬼畜ストーリーが続き、そのままその憂さが晴れることのないアニメとなる可能性が高いです。
そうなると、アニメから入る新規勢は1話か2話で切ってしまう人もいるだろうなと思います。
なので、アイビーが絶対生き残ってやるという意思を最初に見せる(未来への希望を見せる)という面で、この構成テコ入れは有りだと思います。

反面、逆に新規勢に誤解を与えている微妙な欠点もあります。
重要な背景説明から始まらなかったために、アイビーがなぜ追われているのか、8歳の小さな子どもがどうしてこんなつらい思いをしなければならないのか、その回答が来るのが3話になってしまったため、「置いてけぼりにされた」と見る視聴者も少なくないのかなというのが、この構成改変の欠点だと思いました。

◆問題点④3話アニオリ(家族の過去)について
 アニメ3話で主人公アイビーの背景が発覚します。家族の話がありましたが、あれはアニオリでした。
スキルが判明する前はあんなに良い家族だったのに…どうしてこうなってしまったのか…
より悲壮感が出るつくりになっていました。
私は順番の入れ替えよりもこの描写がちょっと中途半端で微妙だったかなと思っておりまして、「星無し」の説明や迫害の理由付けが一瞬で終わってしまったので、故郷ラトミ村の異常性があまり伝わってこないです。
 そもそも、あの村はおかしい村なのです。一つの宗教が強くて、村人は信仰が篤くて、宗教が村を支配していると言っていい村です。閉塞的で、排他的。
そして、この宗教の根底には『星の数は神様の加護の大きさそのもの』というものなのです。
(因みに、宗教に対する村の信仰心の大小は村によって違いますが、この世界の宗教は基本的にはこの宗教1つのみです。ラトミ村のような小さな村ほど、この宗教に依存しています)
なので、星の数で人の優位を決めたりする人が出てくるんです(アイビーの兄がその類だった)。
この大前提があるので、アイビーへの村人の思考回路は『星無し=神様の加護がない=神様に見放された子』というわけです。
 私は、アイビーはこんなに家族に思われてたんだよ~的なアニオリを入れる前に、この大前提がもっとわかるような描写を入れるべきだったと思います。
それか、3年の迫害期間を端折るべきではなかったのかなと。
正直、第一話からアイビーがなぜ王都の隣の町へ行くのか、『おばあさんに言われたから』と言われても、おばあさんとの交流が短すぎておばあさんが彼女にとってどういう人なのかいまいち分からないままだなと。(私は原作を読んでいるので分かりますが、原作未読の友人はよく分からないと言ってました)
原作では、アイビーは星無しとわかってすぐ追放されたのではなく、3年は村の近くで過ごしています。その間、占い師のおばあさんが生きるすべを教えてくれて、村人に見つからないように匿ってくれていて、彼女にとって占い師のおばあさんは唯一、信じられる大人だったのです。
それが現状、アニメではあまり表現されることなく終わってしまったので、そこが残念だなと思います。

◆問題点⑤アイビーの声が合っていない?
 これは私がコミカライズ読んでないせいもあるのですが、私はそこまでアイビーの声が合ってないとは思っていません。
どっちかというと、少し「女の子っぽすぎるかなぁ」くらい。
小説を読む限りでは、最初アイビーはまだ男の子といっても疑われないくらいには栄養不足からの成長不良な身体だったというイメージだったのですが、最初っからすっごくショタというより女の子声だなぁと…
レビューではアイビーの声が大人っぽ過ぎるという意見を見ましたが、原作小説でも「年齢よりももっと年上の女性と対しているようだ」という反応をされるので、大人っぽいのは悪くはないと思うのです。

◆総評
ここまでつらつらと書いてきましたが、最初に書いた通り、私はこのアニメ「最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました」は面白い方だなと密かに応援しているアニメです。
確かに首をかしげる、モヤッとするところもありますが、それでも許せる範疇です。
しかし、それはいち視聴者としての意見・感想です。
原作者様がこの改変について、大丈夫なのだろうか?と思うことはあります。(原作者様は活動報告にて、事前に1話を確認しているとおっしゃってます。それに対して動くアイビー達を見て感動したと書かれているので、私は、原作者様はこの改変を許したのだなと、今は判断しております)

原作改変について、時節柄敏感になっている今日この頃ですが、アニメの原作改変についての良し悪しは「そこに愛があるかどうか」みたいな論調が主流になっています。それ基準で言うならば、このアニメは確かに「制作陣に愛されて作られている」と私は思いました。
(『愛がある改変』の是非、『結局面白ければ(売れれば)良い改変』の是非はまた全然別の議論になると思いますので、本件では語らないでおきます)

さて、第6話を終えて、ラトメ村で大人に親切にされるという体験をしたアイビーは次の村へ旅立ちました。
彼女が次の出会いで何を得るのか、様々な出会いを通して彼女がどう成長していくのか、これからもアニメを視聴していくつもりです。
できれば、本当は2クールは連続でやってほしい。
それくらいこの作品は長丁場向けです。
1クールだと明らかに尺が足りません。面白さが半減してしまいます。
この作品の素朴な親切が紡いでいくっていう雰囲気がすごく好きなので、ちょっとの親切も、本当は端折ってほしくないんですよね。

以上が、私のアニメ「最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました」の感想です。

(2/25追記)

 アニメでは恐らく端折られるだろう原作の世界背景について、いくつか大事なところを書いておこうと思います。

①あの世界の『捨て場』って何?
 あの世界の捨て場は、どちらかと言えば不用品置き場。現代のゴミ捨て場とは役割が少し違います。
大体がマジックバッグやポーション、テント。集落からは家具などが集まります。
生ゴミとかの生活ゴミはないのかという意見が出そうですが、あの世界にはスライムが居るので、生活ゴミはスライムが消化してくれます。
そこそこ大きな集落には大体1人2人のテイマーが居て、スライムを使役しています。
また、あの世界で捨て場を作るのは主に冒険者です。
冒険者が旅の途中に不用品を捨てて、その後に続いてやって来た人が、不用品を捨てられているところにどんどん捨てていって、出来上がります。
ですが、基本的には決して無尽蔵に捨て場を作るのではありません。魔法道具は大なり小なり魔力を宿している為、環境に影響を与え易いです。なので、近くの集落に許可を取り、捨て場を作り、捨て場を管理してもらう必要があります。
原作では今後、その基本から逸脱した管理されていない『違法捨て場』が出てきます。
違法な捨て場はその魔力から色々な生態系トラブルを引き起こしていきます。

②マジックバッグとか不用品を捨てなくても、リサイクルやリユースすれば良いじゃないの?
 マジックバッグやポーションなど、魔力を宿したものは、まず『解体スキル』(確か、物によって星3以上)が必要です。そこから『生成スキル』がいるので、リサイクル・リユースにはスキルの希少さがネックです。
対して、ポーションなどの魔法道具や素材は洞窟やダンジョンのドロップ品で出てきます。(運が良ければ、良質な物もGET出来る)
つまり、冒険者からしたらいちいちコストのかかるリサイクルをするよりも、洞窟に潜って良品の魔法道具を見つけて、使えなくなった物・劣化版と取り替える方が数段楽なのです。
管理されている捨て場に捨てれば、日が経つと魔法道具も魔力が抜けて、いずれはスライムに消化されるでしょうし…(因みに、ソラの様に瓶ごとポーションを消化できるスライムは珍しく、大体はスライムは1つしか興味ない(無機物なら無機物のみ、液体なら液体のみ)です)

生活文化的に明らかに大量生産・大量消費の文化ではないのに、あれだけ捨て場があり、且つリサイクルの発想がないのはこの二つの点から分かると思います。
誤解されやすいですが、決してご都合主義じゃないのです。(コミカライズ序盤では語られてない設定らしく、そこまでしか読んでない人がこの辺をこき下ろしている人が時々おられる様です)

③アダンダラ使役してるけど、『最弱』ってなんだったの?
 誤解されやすいですが、アイビーは、現在、アダンダラのシエルはテイムしてません。
アニメ勢から誤解が生じている様ですが、アイビーはシエルに名前を付けただけで、テイムはしていません。あくまでも“お友達”になっただけです。
テイムされた魔物は、テイム印が額に付きます。ソラにはありますが、シエルにはありません。
テイムの基本は、名付けの前に自分の魔力が宿った体液を魔物に摂取させ、魔物がそれを受け入れる必要がありますが、アダンダラは食物ピラミッド上位の存在です。アイビーの魔力では到底足りないのです。
(コレ、アニメ3話の星無し描写(水鏡が爆ぜる描写)が拙くて、アイビーは星無しじゃなくて∞なんじゃないか?的な意見を聞きますが、ちゃんと星無しです)

④そうは言ってもシエルはアイビーに懐いてるし、使役している様な物では?
 それはごもっとも。これはアイビーのテイマーとしての才能と言える部分です。
単に『スキル』と言っても、そのスキルをどの様に使うか、はその人の才覚、或いは人間性によって大きく関わってきます。
オグト隊長が言っていた様に、上等なスキルを持っていても、その人の性根が最悪であれば最悪な方向に才能を発揮してしまいます。
(例えば占い師の『先読み』スキルは、悪い人が使えば詐欺し放題です)
アイビーのテイマーも同じです。テイマーという社会に貢献するスキルを持っていても、テイムする魔物を駒同然に思う人だったら、悪魔の売人にもなるでしょうし、魔物の暴走を誘発したりもします。
アイビーのアイビーたらしめるあの人格と魔物に対する向き合い方が、星の数では測れない彼女の才能そのものであり、それがシエルが懐く理由の一つです。

⑤アイビーの前世の記憶は、今のところ殆ど役に立ってないけど、コレ、転生者設定いる?
 今後にご期待ください。『前世の記憶』があるからこそ、出来ることがあるのです。
今世のアイビーだけでは、ここまで支持が得られなかっただろうなという話は今後色々出てきます。


ここまで長々と作品語りにお付き合いくださいましてありがとうございました。
総評でも申し上げましたが、私はこの作品の原作が大好きです。
アイビーの旅の雰囲気や新しい出会いが好きです。
願わくば、このアニメを面白いと思った人は原作(web版)でもいいので見て欲しい。
星無しの彼女が一生懸命に生きる、その旅を見て欲しいなと思います。

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