【故き(?)を温ねて新しきを知る】 『ゼーガペイン』の魅せた未来
(本記事には、改稿後のバージョンがあります。改稿後の記事は こちら です)
(この記事は、株式会社ワクワーク「第二期アニメライター育成講座」http://wakuwork.net/info/1224/ の課題として執筆されたものです)
2021/06/18 修正: 作中に登場するゲームの名称を『ゼーガペイン』と表記しておりましたが、『ペインオブゼーガ』が正しいものでした。お詫びして訂正いたします。
アニメを観やすい時代になった、と思う。
YouTube の公式チャンネルや、Amazon Prime Video、dアニメストアなどの配信サービスを利用すれば、今流行りのこのアニメ、昔観たかったあのアニメ……膨大なラインナップの中から、好きな時に観たい作品を観ることができる。
習い事と被っていて観られなかったアニメ、うっかり録画を忘れ1話分だけ観られなかったアニメ……そんな切ない記憶を振り返ると隔世の感があるのだが、まあ、昔語りはこのぐらいにしておこう。
さて、YouTube の「サンライズチャンネル」では、サンライズ作品約220作品を順次プレミアム公開する取り組みが行われている。
https://www.youtube.com/channel/UCmDLyFjSutfb1MK7F6cMVSA/featured
今回ご紹介したいのは、その配信作品第2弾(2021年5月26日〜)に含まれる一作。『ゼーガペイン』(2006年)だ。
『ゼーガペイン』とは
タイトルを見て反射的に「エンタングル!」と叫んでしまったセレブラントは、本稿をご覧になっている場合ではなく、早速上記 URL から舞浜サーバーに向かっていただくのが良いかと思う。
本稿は、『ゼーガペイン』放映当時にアニメファンではなかったかた、『ゼーガペイン』をご存知なかったかた、何らかの事情でご覧になっていなかったかたに、この機会に『ゼーガペイン』をお勧めし、あわよくばセレブラントになっていただこうというものである。
なお、筆者自身は1番目と3番目に該当していた。遅くにアニメファンとなった筆者は「なぜまだ『ゼーガ』を観ていないのか」と友人に叱られること度々、長らく『ゼーガペイン』を視聴できる環境になく、某配信サービスでようやく視聴できると分かったときには歓喜したものだ。
筆者と同様の理由かはさておき、本編を未視聴であっても、「ワタシハ声優チョットワカル」というアニメファンにとってはすぐに想起されるタイトルであるかもしれない。『ゼーガペイン』は花澤香菜さんの声優キャリアの初期の作品であり、ヒロインであるカミナギ・リョーコ役が、声優としての初のレギュラー出演となった。また、主人公を導く謎の転校生ミサキ・シズノを演じるのは川澄綾子さんで、あの「獅子王」役で出演する映画『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-』が公開中だ。主人公であるソゴル・キョウ役を演じた浅沼晋太郎さんについては、男性声優によるキャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」での第十三回声優アワード歌唱賞受賞が記憶に新しいファンも多いのではないか。
さて、作品の公式ウェブサイトの「イントロダクション」を参考にしつつ、『ゼーガペイン』の概要をご紹介したい。
主人公は水泳部に所属する高校生、ソゴル・キョウ。彼一人しかいない水泳部への入部希望者を探そうと奮闘するうち、謎の転校生ミサキ・シズノと出会う。シズノに導かれるまま、謎の異世界で巨大ロボットに搭乗し、敵と戦うことになるキョウ。当たり前の学校生活を続けながら、不可思議な異世界での戦闘に関わり続けるうち、キョウは『ペインオブゼーガ』というタイトルのゲームソフトを手に入れることとなる。
キョウが体験してきた、謎の異世界、そして巨大ロボットでの戦闘は、あまりにもリアルなヴァーチャルゲームだったのだろうか?
謎の異世界の正体、戦闘が行われている理由、「舞浜サーバー」、そしてキョウ自身の秘密。
2クール全26話の物語が進む中で、作品のキャッチコピー「消されるな、この想い 忘れるな、我が痛み」 —— 是我が痛み(これわがいたみ) —— に込められた意味が明らかになっていく。
キョウとリョーコ、シズノの関係性がどうなっていくのかに着目するも良し。深まる謎に頭を捻り、まさかの種明かしに驚くも良し。そして、SF として練り込まれた世界観設定に唸るも良し。もちろん、巨大ロボットによる戦闘、そのメカアクションも見所だ。
ホロニックローダー、そして「エンタングル」
既に述べたように、本作では主人公たちがロボットに搭乗して戦う。
『機動戦士ガンダム』におけるモビルスーツ、『シドニアの騎士』における衛人(もりと)、『アルドノア・ゼロ』におけるカタフラクト……。『新世紀エヴァンゲリオン』や『マクロス』シリーズについて語るのは敢えて避けるが、ともあれ、『ゼーガペイン』における「ロボット」についてもご紹介したいところだ。
ホロニックローダー、というのが、『ゼーガペイン』における人型兵器の総称だ。そして、ホロニックローダーである「ゼーガペイン」の一機、「ゼーガペイン アルティール」が、主人公キョウの搭乗機となる。
ゼーガペインは「ガンナー」と「ウィザード」の2人1組で搭乗・操縦し、ガンナーが全部座席で操縦・発砲など、ウィザードが後部座席で火器・航法管制を担当する。この「2人1組」という搭乗システムが様々なドラマを生むのだが、それについては実際に本編にてご確認いただくことにし、ここでは特徴的なメカニックデザインや用語について述べたい。まず、公式ウェブサイトでデザインをご確認いただけば、説明に「光り輝く半透明な装甲」とあるように、「光」を感じさせるデザインとなっていることを見て取っていただけるはずだ。
そして、ガンナーとウィザードがゼーガペインに搭乗し、出撃する際の台詞が、本作のキーワードとして頻出の「エンタングル」である。元は量子力学の用語「エンタングルメント」の動詞形であり、近年話題となっている「量子コンピューティング」における重要な要素の一つだ。「量子テレポーテーション」や「量子もつれ」といった用語と関連して耳にしたことのあるかたもいらっしゃるかもしれない。
物語が進むにつれ、なぜ出撃時の台詞が「エンタングル」なのかも明らかになる。その言葉を口にする、登場人物たちそれぞれの思いも。
ゼーガペインは、「近年の xR や量子コンピューティングの話題を先取りしている」作品とも言える。VR, AR といった用語は今や日常的に聞くようになり、『ポケモン GO』などのゲームをプレイしたことのあるかたも多いだろう。量子コンピューティングについても、その利用や普及が現実的に議論される段階にある。だが、ゼーガペインは2006年、15年前の作品だ。公式ウェブサイトの用語解説を見ると、その先見性や、難解な要素をエンターテインメントとしてまとめ上げた構想に唸らされる。
繰り返される夏、そして『ゼーガペイン』
さて、本稿の冒頭付近で「昔語りはこのぐらいにしておこう」と書いた。2006年の作品について語ろうと言うのにもかかわらず、である。
『ゼーガペイン』について語ることは、昔語りではない。
繰り返すが、『ゼーガペイン』は2006年の作品だ。だが、公式ウェブサイトの「NEWS」欄をご覧になっていただきたい。本稿執筆時点での最終更新は2021年5月19日。これはサンライズチャンネルでの新ラインナップに『ゼーガペイン』が含まれていることを紹介するものだが、遡れば 2020年9月1日、2019年7月31日……と、更新が続けられてきているのだ。
2016年には10周年イベントが開催され、劇場版『ゼーガペインADP』が公開された。2019年にはスピンオフ小説が出版され、今年2021年にも小説の出版が予定されている。
15年を経て古びない世界観は、最新の技術的な知見を取り入れてアップデートされ、物語は広がり続けている。
『ゼーガペイン』は続いている、あるいは、繰り返されているのだ。
この記事に最後までお付き合いくださった皆様と、舞浜サーバーでお目に掛かれるのを楽しみにしています。
エンタングル!!!
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ゼーガペインの公式サイト:
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